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インタビュー 2015年8月21日(金)20:00

「攻殻機動隊」25周年企画 「攻殻機動隊」が背負った時代性 前編 寄稿・氷川竜介

攻殻機動隊25周年記念ビジュアル

攻殻機動隊25周年記念ビジュアル

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■1980年代はサイバーパンクの黎明期

マンガ「攻殻機動隊」(士郎正宗作)の連載開始から25周年――四半世紀と聞いて、その時間の重みに驚くと同時に、このタイトルの影響の大きさ、あるいは予見の正確さ、背負った時代性などを噛みしめているところです。特に功績面では「サイバーパンクのビジュアル化」という点が、もっとも大きいと思います。筆者の専門分野であるSFやアニメの観点から、語っていくことにしましょう。

連載開始年の1989年は昭和最後の年がたったの一週間で終わった平成元年であり、マンガの神様・手塚治虫先生が亡くなった年です。さらに「攻殻」をやがてアニメ化する運命にある押井守監督とProduction I.G(当時はアイジータツノコ)が映画「機動警察パトレイバー the Movie」を夏に公開していて、それはオペレーティングシステムをターゲットとしたコンピュータウイルスをきわめて現実的に扱った、先進性の強い作品でした。

「この辺から時代がコンピュータ前提として大きく変わっていったんだな」と、ふりかえれば運命的なものを強く感じます。

その手前、1980年代はコンピュータと通信ネットワークが急成長し、今では当たり前となったインフラや新たなコミュニケーションの基礎が形成される時期でもありました。1983年に高度なわりに操作性の簡便なゲーム機として任天堂の「ファミリーコンピューター」が家庭へ入り始め、児童層の文化を刷新します。さらに社会人では趣味で高価なパーソナルコンピュータを買う人も増えていく。その80年代中期、いずれあらゆるコンピュータが通信ネットワークで接続されたときには単なる利便性の改革を超え、「人の意識」が激変するパラダイムシフトが予見されていました。

SF文学でその分岐点を明示したのは1984年に発表されたウィリアム・ギブスンのSF小説「ニューロマンサー」でした。ネビュラ賞、ヒューゴー賞をはじめ高い評価を受け、「サイバーパンク」というジャンル名が定義されるきっかけを作ったエポックメイキングな作品です。もともとSFには古くから「サイボーグもの」というジャンルがありました。それは「サイバネティック・オーガン」の略語で、人体器官の一部を機械に代替することで生じる新規の諸事象を考察するものです。日本では石ノ森章太郎のマンガ「サイボーグ009」や「仮面ライダー」などヒーローの能力強化に応用されたことで、広く知られています。

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX

攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX

(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会

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「サイバーパンク」とはこの延長上にあるものなのです。先述のように、人が機械でネットに常時接続されたとき、そこに拡がる世界で人の意識や認識がどう変わるかがテーマの中心にあります。ポイントは「ネットワーク」で、これで人類の知覚がどう変わるかは、むしろスマートフォンの常時ネット接続が当然となった現在の方が、より実感としてよく分かるでしょう。特にネット以前の旧来の体制や構造に対し、サイバー化が常態となってネットワーク化されたときに、必ず新たな概念が生まれる。それは必ずや過剰や反発(パンク)の作用をもたらすと考えられたため、こうした命名がなされたのです。

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