2015年10月30日(金)20:00
「攻殻機動隊」25周年リレーインタビュー 黄瀬和哉 前編 レイアウト・システムの功罪 (2)
押井監督のインタビューで話題にあがったグアムへのロケハン旅行に、黄瀬も同行している。
「銃を撃つのは初めてでした。いちばんショックだったのはショットガンでしたね。銃自体が軽いので、火薬が爆発したショックが全部肩にくる。宿で風呂に入ったときに、両肩にアザができていて痛かったのを覚えています。これまであまりなかった、銃をちゃんと表現した作品を作りたかったと、押井さんはずっと話していました。銃を撃った体験は、ある程度作画に反映されていると思います」
「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」で、黄瀬は作画監督とレイアウトを担当。オープニングの後から、終盤、多脚戦車が登場する廃墟のミュージアムの前ぐらいまでと、少女の素子が登場するエピローグが黄瀬の担当だった。
押井監督が「機動警察パトレイバー the Movie」から本格的に導入したレイアウト・システムは、「機動警察パトレイバー2」「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」と作品を経るごとにスタッフに浸透していった。原画作業の前に、各カットの設計図となる背景とキャラクターを専門のスタッフが描くこのシステムは、カメラのレンズを意識した構図とともに、後のアニメ作品に大きな影響を与えたが、黄瀬は「功罪がある」という。
「カメラのレンズを意識したレイアウト・システムは、あくまで押井さんの方法論であって、他の映画全てに通用するものではない。それなのに『こう作らなければいけないんだ』と捉えられるところがあって、『違うのにな』と思ったことがありました。押井さんの作品の画面は、単焦点のカメラで撮っているようなものなので、消失点が発生したり、背景がゆがんだりする。それはレンズの効果であって、本来の自分たちの目で見ているような画面を作りたかったら、レンズの効果はいらないんです。例えば、宮崎(駿)さんの作品の場合は、一点消失で絵を描かず、見た目で存在感を出しています。見た目で描いて存在感を出せるのだったら、ちまちまパースをとる必要はありません。絵ならではの嘘をついてしまえばいい。みんなジブリの作品が好きなのに、どうしてそっちにいくんだろうと思ってしまうことがありました」
海外でのヒットを受けて制作された押井監督による「攻殻」第2作の「イノセンス」は、制作期間が約3年におよぶ大作となった。黄瀬が一番苦労したのは、キムの館のシーンだった。
「同じ構図で、その都度、登場人物とシチュエーションが違う。だけど、やっていることは一緒というのを全て描かなければいけなかった。違うカットなのに同じことをずっと描いて、いつまでたっても終わらなくて、ものすごくフラストレーションがたまりましたね。アクションシーンとか楽しいところは西尾(鉄也)君と沖浦(啓之)がもっていたので、こちらの楽しみは犬ぐらいしかありませんでした」
犬が登場する場面では、9課のラボでバトーが腕を修理するところで、一から原画を手がけているそうだ。
「押井監督からは、『皮膚が伸びます』とか、犬のところだけ細かく指示がいっぱい入っていました。犬好きなのはいいんですけど、毎回でてくるのは必ずバセットハウンドなんですよね。バセットばかりで、いいかげんにしてくれないかなと思いながら描いていました」
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