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インタビュー 2015年11月6日(金)20:00

「攻殻機動隊」25周年リレーインタビュー 黄瀬和哉 後編 現場の頑張りをみてもらいたい (2)

「攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears」場面カット

「攻殻機動隊ARISE border:3 Ghost Tears」場面カット

(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊ARISE」製作委員会

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「ARISE」の3つ目のエピソード「Ghost Tears」では、黄瀬が監督まで担当し、作画にも深く関わっている。「自分でやりたいものが出てくると、最後までやりたくなってくる」という黄瀬が、自分なりに描きたいと思ったのは素子の恋愛だった。

「素子自身が本気で恋愛していたのかどうかは疑わしいですけどね。相手のホセを好きなのかどうか、その辺の本当のところはわからない。単なる経験値のひとつというだけなのかな……というようなことを脚本打ち合わせでも話していました。最後も、素子とホセのどちらが撃ったか分からなくしているのも、その辺りは見ている人がそれぞれ考えてくれればいいだろうという作り方にしています。絵コンテが完成したあとは、社内の女性スタッフに見せて、これぐらいの男と女の距離感はどう見えるか、女性から見て許容範囲内か聞きまくっていました。男目線でやると、どうしてもイヤらしいところを描きがちになるので、そこは外しています」

「新劇場版」では、黄瀬自身がアバンとエピローグの原画を手がけている。野村和也監督の手がまわらなかった部分をサポートするのが目的だったが、エピローグについては別の意味合いもあったのだそうだ。

「委員会サイドから、『これまでの「攻殻」につなげたいから、素子(の容姿)をバージョンアップできませんか?』と言われたのがきっかけです。たぶん野村さんは嫌がるんじゃないかと思ったので、それも含めて僕がやりますということになったと記憶しています。野村さんには僕から説明にいきました。『黄瀬さんがやるのだったら、お好きにどうぞ』と言われて、『あ、返されたな』って感じでしたね。『お好きにどうぞ』というのは、脚本打ち合わせで僕がいつも野村さんに言っていたことだったので(笑)」

総監督になって想定外だったのは「こんなに人前に出るはめになるのか」ということだったという。

「話すことなんてあるのかなと思っていたんですが、出身が大阪なので、とりあえず何か言われたら返さなければという遺伝子のようなものがあるみたいですね。しゃべり出すとそれなりにはしゃべることができました。ただ、リップサービス的なことというか、心にもないことを言いたくないという気持ちは、どこかにあります。それだと面白くないじゃないですか。会場に来てくださっている人が、笑って楽しんでくれるような話になればなと思いながら壇上に立っていた気がします」

「攻殻機動隊 新劇場版」場面カット

攻殻機動隊 新劇場版」場面カット

(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・「攻殻機動隊 新劇場版」製作委員会

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黄瀬が人前で話すのは、「現場のスタッフの仕事を見てほしい」という思いもあるのだそうだ。

「ファンの人がいてくれないと、自分達が何を作っても意味がない。やっぱりファンに喜んでもらわないと。現場は死ぬほど頑張っているので、声優さんだけでなく、現場の頑張りも見てもらえればなという思いはあります。『新劇場版』では劇場だけでなく、小さな会場を使ってのトークイベントもやりましたが、そうしたファンとの距離の近いイベントもいいですね。頻繁にやる必要はないですが、今後もそういうことをやっていけたらなと思っています」

最後に、原作誕生から25年、「GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊」の公開から20年が経った今、「攻殻」を取りまく環境の変化について聞いた。

「25年前には想像できなかったスマホというものが出てきた……というのは大きいですね。今回も扱いには困りました。これまではみんなガラケーなのに、それより前の時代の『ARISE』や『新劇場版』でスマホを持たせていいのかなと……。そこは仕方ないとわりきって、今の世界観にあわせることにしました。インターネットやSNSがこんなに一般に受け入れられる時代になったのにも驚かされます。しかも、パソコンなしでスマホ1台で足りるわけですからね。我々は電脳化はしていないけれど、電脳を持ち歩いているようなものなんじゃないかとも思います」

制作を終えた今、「攻殻」シリーズの今後についても聞いた。

「『ARISE』と『新劇場版』で窓口は広がったと思いますが、素子が出てくる『攻殻』を今後も作れるのかなという不安はあります。スーパーウーマンである素子が出てくると、どんな事件も解決してしまいますし、『新劇場版』の先は劇場1作目や『S.A.C.』(『攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX』)に繋がってしまいますから。自分達でやるには、素子はもう主人公にはできない気がします。飲み話では『トグサの娘を引っ張り出したらどうだろう』なんてことをしゃべったりはしていますけどね(笑)。でも、それは今後お話を作っていくスタッフが、別の切り口を見つけてくれればいいことですから。僕が何か言うことではないと思います」

作品情報

攻殻機動隊 新劇場版

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