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インタビュー 2016年4月7日(木)20:00

ノイタミナ「甲鉄城のカバネリ」荒木哲郎監督インタビュー前編 「目指すのは王道を行く“普遍的”な作品」 (2)

――美樹本さんが描くイラストの独特のタッチが、アニメとして再現されていたことには驚かされました。

(C)カバネリ製作委員会

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荒木:今作では、美樹本さんのイラストのタッチをセルで再現するために、ここぞというカットのための「メイクアップ」という役職を立てています。特に女性キャラクターのお化粧を専属で担当するスタッフがいるんです。「作画がすごい」と感じてもらえるインパクトの何割かは、メイクさんの力が担っていると思います。

近年はデジタル作画のためのソフトが進化してきていて。我々が使っている「TVペイント」というツールでは、動きに後追いでブラシを入れられるんですが、その機能をキャラクターのメイクアップに応用しています。これまで、美樹本さんのイラストのタッチをセル作画のキャラで再現するのはとても難しかったんですが、ツールの進化がそのハードルを超えさせてくれました。とはいえ、どんなデジタル作業もそうですが、結局は最後は人力であり、とても手間のかかる作業なので、要所要所で効果的に使っていきたいですね。

――戦闘シーンも大迫力ですね。大量のカバネが押し寄せてくるような描写にかかる労力は相当なものでは?

(C)カバネリ製作委員会

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荒木:戦闘を3話に一回盛り込めばいい、というお話ならさほど苦しさはないかもしれませんが、ほぼ各話に戦闘シーンがありますから、苦しいですね。たくさん戦いたいわけではないのですが、許された1クールという限られた話数の中にストーリーをギュッと圧縮した結果、ドラマ的に重要なイベントの入ってない話数はない、という構成になり、必然戦闘も多めになり、絵作りのカロリーも膨大なものになりますから、スタッフには警戒されています(苦笑)。一方で、ジェットコースターのように密度のあるストーリーなので、やはり見ごたえにつながっていると思います。ゆったりしたTVシリーズを観るというより、短くまとまった、密度の高い映画を観る体験に近いと思います。

――背景美術も「鉄の冷たさ」を感じさせるタッチでこだわりが感じられます。

荒木:今作のスタッフは、自分も含め「見たこともないもの」を作るのに長けた面々ではないんです。「過去にあったものを組み合わせ、新たな組み合わせを発見する」のが、我々が一番活きるやり方であると考えています。背景についても、大まかなイメージとして昭和の炭鉱を持ってきて、そこにスチームパンク的な記号としてのトラスやパイプなどを組み合わせて独自性を出しました。和の要素を置き去りにしがちなので、シルエットを和風にし、ディテールをスチームパンクに、という順序になるように心がけています。

――「進撃の巨人」では、荒木監督が「作画時7つの掟」をスタッフ間で共有していましたが、今作でも掟があるのでしょうか?

(C)カバネリ製作委員会

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荒木:作画作業がある程度進んでくると、間違いが起こりやすい傾向と、その対策が見えてきます。「進撃の巨人」では、「瞳の線が細いと印象が弱くなるので二重線にする」「立体起動装置の刃ストック本数に気を付ける」「ミカサの顔のディテールを薄めにする」などですね。今回は主人公の生駒を「ハードボイルドにしない」ことがあげられます。身体を細く描く。表情を険しくしない、などです。解釈の仕方によっては、たくましく描くこともできてしまうキャラクターなので、いつも「愛嬌を忘れずに」と言っていますね。

ほかには、美樹本さんの絵は瞳が大きくつぶらで、白目の面積が狭めなのが特徴なのですが、手習いで描くと、うっかり目全体が小さくなりがちです。黒目から大きめに描くことを意識する。また、無名のちょんまげがフレームアウトしているとキャラ印象が大きく変わることもわかってきたので、極力フレーム内に入れ込むこと。などを、第2話の作画途中で、注意点をお触れとして通達したりしました。

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甲鉄城のカバネリ

甲鉄城のカバネリ 51

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