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2016年10月20日 20:00

【TIFF2016 特別寄稿】成長する夏の作家・細田守

文:氷川竜介

細田守

細田守

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●細田守、演出生活約20年の集大成

第29回東京国際映画祭(2016年10月25日~11月3日)では、「庵野秀明の世界」「ガンダムとその世界」に続く3年目のアニメーション特集として「細田守の世界」が開催される。細田守監督は「時代とともに成長する映画監督」であり、作品にはアニメーションの視点から「日本のいま」が常に写っている。そして人が人である限り変わらない「人と人の出逢い」を描きぬくことを通じ、世界中の観客すべてに届く普遍的なモチーフを採用した映画を送り続けてきた。

アニメーションは動く絵と背景の両面から、人と人、人と世界の関わりを深く描き、厳選された情報を濃縮して言語を越えた情動を鋭く伝えられる「心の芸術」である。アニメーション映画が国境を越えやすいのは、心と心を共鳴させる特性がつよいからで、そこを追求する姿勢一点とっても「国際映画祭」にふさわしい作家と言える。

上映作品もバリエーション豊かだ。細田守が東映アニメーション(以下、東映アニメと略)でアニメーターから演出家に転向した直後、1999年に東映アニメフェアの短編映画を監督して注目された時期が、まとめて上映される。映画監督として独立後は『時をかける少女』(06)で幅広い層の大きな支持を得て単館上映から異例のロングランとなったが、それ以後3年ごとに発表してきた『サマーウォーズ』(09)、『おおかみこどもの雨と雪』(12)、昨年公開の『バケモノの子』とビジネス的な成功を9年間にわたり連発してきた4作品も個別に上映。

東映アニメ時代の上映枠では、現代アーティスト村上隆とのコラボレーション短編というレア映像や『時をかける少女』のきっかけとなったTVアニメなど、映画祭のスクリーンでしか鑑賞できないレア映像もふくまれている。作品以外にもNHKのドキュメンタリー番組『プロフェッショナル 仕事の流儀 アニメーション映画監督 細田 守の仕事』の上映が予定され、何枠かは上映後に細田監督とゲストとのスペシャルトーク企画も用意されている。演出家としての歩みを多角的、包括的に振りかえる充実の総合特集なのだ。

映画興行とは、時代とともに推移する大衆の嗜好や世相で大きく変化する人気商売である。テーマや物語も世につれて変化する。細田守監督は時代に併走しつつ作家としても柔軟に成長する点が特徴で、「省略と誇張」が主眼のアニメーション表現では陳腐化しかねない部分にも深く斬り込んできた。特にこの10年間は家族のように「誰にでも共感できる普遍的なモチーフ」を採用し、そこに個人体験と理想の両面を投影することで、アニメーション映画の可能性を開拓してきた。

2011年に齋藤優一郎プロデューサーとともに「スタジオ地図」を設立した細田守監督。それは「アニメーションという白地図」に何か新しいものを描いてみたいという意欲のあらわれだという。おそらく2018年になると予想される次回作に期待が集まるのも当然であろう。今回の回顧上映では各作品を対照することで、そうした変化・成長のステップとともに、未来へ向かう道筋も見えてくるだろう。同時に「変わらない作家の軸」も、きっと見えてくる。そうした発見も、映画祭ならではの醍醐味である。

本コラムではそんな細田守監督作品の特徴を、プログラミング・アドバイザーとして上映企画に協力した筆者の立場から、ポイントを絞って語ってみたい。

●通過儀礼としての夏休み

細田守監督作品の特徴を絞りこんで挙げるとすれば、以下の3つになるだろう。(1)普遍的で開かれたテーマ設定 (2)独自の視点とシャープな映像感覚 (3)アニメーション表現へのこだわり。

特に初期のTVシリーズでは(2)が突出して注目を集め、マスコミから作家としての「発見」も、そこに重点がおかれていた。それは東映アニメ作品の多くがマンガ原作を採用し、キャラクターやストーリーパターンは確立済みということが関係している。それを「どう見せるか」という演出テクニックに特化した結果であろう。

ところが短編とはいえ映画館にかける作品となったとき、初期作品から(1)が目立ち始める。「作家の軸」のひとつである。後述の『劇場版デジモンアドベンチャー』の2作では、アニメーションでは難しかったはずの「ジャスト・ナウ」が描かれ、21世紀を生き始める子どもたちへの作者の視線が目をひいた。

そして独立後は、制作環境・諸条件ごと監督が提案、コントロールできるようになり、縦割り組織でもなくなった結果、作画・美術・3DCG・撮影が渾然となって「アニメーション表現に何ができるか」という挑戦の意欲を拡大してきた。

もちろんこれらの特徴は個別ではなく、絡み合ってひとつの特徴を織りなしている。どの作品をとっても燃料とエンジンと走行系のように一体となり、内容や時期や環境によってどこに重きを置くかが変わっている。それゆえ個々の作品を並べたときには、タイトルごと違って見えるバリエーションの豊かさに多さに驚かされるのである。

(C) 2009 SUMMERWARS FILM PARTNERS

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まさに細田守監督が常々「作品はひとつひとつ」と語っているとおりなのだ。では、逆に細田守作品を貫く「変わらない根幹」は、どこにあるのだろうか。ごく最近、当映画祭に関連してひさしぶりに細田守監督へロングインタビューをする機会を得て、根幹をより明確にするキーワードが浮かんできた。それは「ひと夏の成長」である。

つまり細田守とは「夏の作家」なのだ。実際、『時をかける少女』で独立後の4作品は、すべて3年おきの夏に公開されている。

(C) 2012「おおかみこどもの雨と雪」製作委員会

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それは子どもにとっては「夏休みの経験」ということになる。通学というルーチンからいっとき離れ、山や海、両親の実家など「異世界」へ旅立つシーズンが夏なのだ。どこもかも光に充ちあふれて色彩も陰影も濃くなり、昆虫を中心に生物も活気づいて見える。唐突に落雷豪雨に見舞われる、夕立の突発イベントもある。変化に充ちた季節だ。

世界中に生命エネルギーが注入される一方、なぜ休業するかと言えば暑さで気だるく効率が低下するのが理由だ。そして夏は「死に近い季節」でもある。太平洋戦争に絡む記念日があり、死生をまたぐ「お盆」もある。夏祭りに御神輿、盆踊りに花火大会と、非日常が次々と押し寄せ、棚上げしていた日常生活をリフレッシュさせる夏。

こうして「夏という異界」をくぐり抜けた夏休み明け、ひさしぶりに出逢った子どもは何だか変わって見えるのではないか……。

という様々なイメージを重ねて考えたとき、なるほど細田守監督は「夏と映画」のイメージや役割を「通過儀礼」と重ねて「変化」を描き続けているのだと、あらためて得心がいったのであった。

作品情報

時をかける少女

時をかける少女 Check-in1

あるきっかけから「今」から過去に遡ってやり直せる力、タイムリープ能力を持ってしまった紺野真琴は、ひとたびその使い方を覚えると、何の躊躇も無く日常の些細な不満や欲望に費やしてしまいます。大好きなも...

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