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インタビュー 2017年7月21日(金)20:30

自分を育ててくれたスタン・リーに恩返しをしたい「THE REFLECTION」長濵博史監督が語るアメコミ愛 (2)

――長濵監督が、特に影響を受けた作品はありますか?

(C)スタン・リー,長濵博史/THE REFLECTION製作委員会

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長濵:僕が上京した当時、MARVELが展開していたグラフィックノベルで、ビル・シンケビッチが描いた「デアデビル:ラヴ・アンド・ウォー」を見た時には、鳥肌が立ちましたね。デアデビルが鮮やかなマゼンタで描かれていたり、キングピンの服に生地の写真がテクスチャのように貼られていたり。とにかく、頭の中を引っ掻き回されたような衝撃を受けました。ちょうどそのころ、「バットマン:ダークナイト・リターンズ」のフランク・ミラーがデビッド・マツケリーと組んで「デアデビル:ボーン・アゲイン」を展開中だったこともあり、どんどん「デアデビル」に傾倒していきましたね。「バットマン」が持つダークな雰囲気を、さらに突き詰めていったようなヒーローで、語れば止まらなくなってしまうくらい大好きです。

野口:長濵監督はスタン氏と最初に会った時、「僕はあなたに育ててもらいました。僕が今ここにいるのはあなたのおかげなんです」と話し、スタン氏も長濵監督が本当に彼の作品が大好きなことがわかったらしく「日本では、君が僕の作品を読んでいたのか!」と返したそうです。

――今作では音楽として、世界に名を馳(は)せる音楽プロデューサーであるトレバー・ホーンが参加しており、世界中の洋楽ファンが驚いたことかと思います。いったい、どのような経緯で登板が実現したのでしょうか?

野口:私がファンだったのです(笑)。小学6年生のころに「中島みゆきのオールナイトニッポン」で、バブルスのボーカルとして、トレバー氏が紹介されていたのが、私とトレバー・ホーンとの出会いでした。「いつか一緒に仕事をしてみたい」と思っていたんですが、今回長濵さんが憧れの人であるスタンと一緒に仕事をしている中で、「野口さんには、そういう人いないんですか?」と聞かれ、トレバー氏の名前を上げたところ、「僕だって、ずっと『好きだ』と言ってきたから、今こうしてスタンと一緒に仕事ができている。野口さんも、ダメもとでトレバー氏に『THE REFLECTION』の音楽をお願いしてみたらどうでしょう?」って言われたんです。

そこで、フライングドッグの野崎さんに相談してアメリカ国内のツテをたどっていただいたんですが、やはり頓挫してしまった。でも、トレバーのZTTレーベルの日本代理店・UMAA Inc.が渋谷にあることがわかり、そちらにお話を持っていったら、弘石雅和社長がトレバーにかけあってくれることになったんです。そのときに、トレバーに作品の企画書と「好きで好きでしょうがないんです!」という個人的な思いをしたためたお手紙を送らせていただいたんですが、そうしたらOKが出てしまいました(笑)。「夢は言葉にすればかなう」ということが本当にあるんだなと、我がことながら驚いています。

ちなみに、「THE REFLECTION」のクランチロールでの海外配信版では、トレバー本人に声優として出演してもらっています。スタンにも、カメオ出演というレベルを超えて参加してもらっているので、海外のファンには、そちらも楽しみにしていただきたいですね(笑)。

――キャラクターについてもおうかがいします。主役ヒーローのひとりエクスオンは、その正体が謎に包まれていて、「超有名ロック歌手」という正体が発表されているアイガイとは対象的な存在ですよね。主役であるにも関わらず、そのキャラクターが明確に語られない、というのはチャレンジャブルな試みだったのでは?

(C)スタン・リー,長濵博史/THE REFLECTION製作委員会

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長濵:あるインタビューで、スタンが「スパイダーマンが世界中で愛されている理由は?」と聞かれたときに、「マスクをかぶっているからだよ」と答えていました。それは「マスクをかぶっていれば、人種や老若男女の別なく誰でもヒーローになれる。だからこそ、世界中のあらゆる人々が、スパイダーマンに感情移入できる」ということなんです。だから、僕も「THE REFLECTION」を始めるにあたって、その考えを一歩推し進めて「オリジンがまったくわからないヒーロー」を作りたいと提案しました。

(C)スタン・リー,長濵博史/THE REFLECTION製作委員会

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考えてみてください。スパイダーマンの正体がピーター・パーカーであることを知らなければ、スパイダーマンを危険視するJ・ジョナ・ジェイムソンの主張は正当なんです。僕たちは物語を通じて、ピーターの優しい心や苦悩を知っているからこそ、彼をヒーローとして見られますが、そうでなければ「マスクをかぶって正体を隠すからには、なにか後ろめたいことがあるはず」と考えるのは、ごく普通のことですよね。我々読者は不幸にしてスパイダーマンの正体を知っていますが、それはピーターの本意ではありません。だから、読者にすらオリジンが見えない正体不明の男であるエクスオンは、世界中の誰でもあってもおかしくはない。もちろん、彼が何者で、一体何を考えているのか、ということは明確に決めてあって、それらはすべて、エクスオンを演じる三木眞一郎さんにはお伝えしてあります。

――謎は深まるばかりですね……! では、今作「THE REFLECTION」の目指すところを教えてください。

長濵:「THE REFLECTION」では、“MARVEL”“DC”といった2大ユニバース(世界)に続く、新たな“スタン・リーユニバース”を作り上げたいと思っています。あらゆる作品を生み出してきたスタンですが、それらの生みの親として、スタンはもっと評価されるべきだと思っているんです。だから、彼が自由にできる、大きな広がりを持ったユニバースを新しく生み出したかった。

野口:また、アメコミ作品はアメリカでアニメ化されると、子ども向けのカートゥーンになってしまうことが多いので、アニメーションとしての評価は必ずしも高くない。だから、今作でアニメ原作者としてのスタン氏の評価を再確認してもらいもらえる作品にしたい。「自分を育ててくれたスタンに恩返しをしたい」という長濵監督の“スタン・リー愛”に溢れた作品なんです。

長濵:今作は“スタン・リーユニバース”版「アベンジャーズ」に当たる作品で、ゆくゆくは「ザ・リフレクション:エクスオン」「ザ・リフレクション:アイガイ」といったような、個々のヒーローに焦点を当てた作品も作っていきたいと思っています。そして、アイガイのスーツがブルーだと思って本を買いに来たお客さんが、ショップの店員さんに「今のアイガイは金色になっちゃってるんですよ」って言われて「ええーっ!?」って仰天してしまうような、僕が「スパイダーマン」との再会で味わったような体験をしてもらいたい。そうした、大きな世界への入り口が「THE REFLECTION」なんです。タイトルの「THE REFLECTION」とは、作中の大事件を指していますが、僕がスタンから受けた“影響”や、世相を“反映”していること、視聴者のみなさんに何かしらの“影響”を与えたいという思いも込められているんですよ。

――最後に、放送を楽しみにしているみなさんにメッセージを。

(C)スタン・リー,長濵博史/THE REFLECTION製作委員会

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野口:今作は、スタジオディーンにとっては創立42年にして、初めてNHK総合で放送される記念碑的な作品でもあり、私自身大いに手応えを感じています。もしかすると、第1話や第2話を見ただけでは、何が起こっているのかよくわからないかもしれませんが、絶対におもしろくなっていきますので、ぜひとも最後まで続けて見ていただきたいですね。

長濵:では、僕からはちょっと変わった切り口から、今作の楽しみ方を。名だたるアメコミヒーローたちには、それぞれに対決を運命づけられた宿敵が設定されています。ウルヴァリンに対するセイバートゥース、スパイダーマンに対するグリーン・ゴブリン、といった具合にです。今作でもそれは同じで、登場するヒーローそれぞれにライバルがいるんです。「THE REFLECTION」は、広大な“スタン・リーユニバース”の一端に過ぎませんから、必ずしもすべての宿敵が登場するとは限りませんが、以降の因縁を匂わせる要素は随所に散りばめていますので、そうした存在が登場しているのかいないのかを、見極めていただくだけでもおもしろいと思います。ぜひ、隅々までしゃぶり尽くすように楽しんでください!

――本日は、ありがとうございました。

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作品情報

THE REFLECTION

THE REFLECTION 17

全世界を襲った謎の大災害。『リフレクション』と名づけられたこの現象は、夥しい数の命を奪ったが、生き残った者たちに、ある特別な『力』を与えた——。あれから3年。ニューヨークで行われた追悼セレモニー...

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