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インタビュー 2018年1月4日(木)19:00

新春アニメプロデューサー放談(4)アニプレックス柏田真一郎氏 「手元においておきたいと思っていただけるものを作り続ける」

「グランクレスト戦記」キービジュアル

グランクレスト戦記」キービジュアル

(C) 2017 水野良・深遊/株式会社KADOKAWA刊/エーラム魔法師協会

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アニメメーカーのプロデューサーが、2017年を振り返る特別企画。第4回(※)は、アニプレックスで多くの作品にたずさわり、1月放送の「グランクレスト戦記」を手がける柏田真一郎プロデューサーに話を聞いた。昨年、大ヒットを記録した「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」の制作エピソードや、原作もののアニメを作るときに大切にしていることなど、赤裸々な話題を交えながらのインタビューとなった。

※放談の掲載は、原則取材を行った順

取材・構成/五所光太郎(アニメハック編集部)

――柏田さんにとって、2017年はどんな1年だったでしょうか。

柏田:私事(わたくしごと)ですが昨年は本厄で仕事量も多く、どうなることかと思いましたが、個人的には上々の年だったかなと思います。17年に関わった劇場タイトルは、「劇場版 ソードアート・オンライン -オーディナル・スケール-」「劇場版 魔法科高校の劣等生 星を呼ぶ少女」の2本、テレビでは「エロマンガ先生」と「冴えカノ」の第2期(「冴えない彼女の育てかた♭」)、あと「ハイフリ」のOVA(OVA「ハイスクール・フリート」)でして、結果は残せたかなと……とはいえ、業界自体がパッケージ売り上げ含め厳しくなってますし、(海外向け)配信バブルもそろそろ頭打ちの時期にきています。17年が上手くいったからといって、今年も上手くいく保証はどこにもありませんので、引き続き、気を引き締めて頑張ろうと思っています。

――「ソードアート・オンライン」(以下、「SAO」と略)の劇場版は、興行的にもかなりのインパクトで、昨年の国内アニメ映画興行収入ランキングでは、6位でした(http://eiga.com/etc/best10/anime.html)。

柏田:「SAO」は、伊藤(智彦)監督をはじめとするスタッフに、本当に恵まれていて、原作サイドからも多大な協力をいただいています。劇場版がヒットしたのも、原作者の川原(礫)先生が、「今までと同じ話をしても仕方がないのでは」と言われたことをきっかけに、「AR(Augmented Reality)」の話をやることになったのが大きいです。企画の立ち上げは約2年前で、「ポケモンGO」も何もなかった頃ですから、「ARってなんぞや?」というところからシナリオをつめていきました。作画も、終盤のアクションをふくめA-1 Picturesさんに頑張って作っていただき、音楽は梶浦(由記)さんに担当していただくという、今から考えると売れるべくして売れたというか――というのは結果論ですけどね。作っているときは、ただただ一生懸命なだけで、それどころではなかったですし、これだけやって売れなかったら、自分の首が飛ぶなと思いながら作っていました。

――(笑)。

柏田:ほんとにもう、(会社の)上からは興行収入の目標は20億円だとかアホなことを言われて……ここ、「アホなこと」って、このまま書いておいてください(笑)。

――分かりました(笑)。実際は150館規模で公開され、25億2000万円という、目標を大きく超える興行収入となりました。

柏田:本当に、関わってくださった皆さんのおかげですね。もともとは15億円ぐらいが目標でしたが、知らないうちに20億円になっていて、まあ結果よければなんですけれど、なんとか首はつながった感じでした。

――アニプレックスに入られる前、柏田さんは、J.C.STAFFで制作プロデューサーをされていますよね。「大正野球娘」などを手がけられていて。

柏田:「大正野球娘」は、自分の下に優秀な人間がいて、その制作担当が頑張った企画です。自分がJ.C.STAFFで最後に担当したのは「レールガン」(「とある科学の超電磁砲」)の第1期でした。その後、円満退社して、アニプレックスに入りました。

――制作プロデューサーは、現場の最前線をまとめられるお仕事ですよね。それだけに、メーカーのプロデューサーになっても、現場の気持ちや苦労がよく分かるのではないかと思います。

柏田:業界的に、現場がどういうものかを知っているメーカーPがだんだんと増えてきている感じなんですよ。今言っていただいたような目線で語れて、現場の大変さが分かる人間が増えていったらいいなと思っています。

――17年を振り返って、アニメ関連の話題で印象的だったことがあったら聞かせてください。

柏田:ひとつは、放送を落とすのが当たり前になってきて、個人的には残念なことだなと感じています。作品によって、いろいろな事情があると思うので、一概に言えないところもありますが、社内のプロデューサーたちには、「落とすのは、監督のせいでもスタッフのせいでもなく、我々プロデューサーの責任」と話しています。作品をきちんと作って放送し、それをパッケージとして買っていただいたり、配信で見ていただいたりするのがプロデューサーの仕事ですから。
 もうひとつは、社内における企画面のことですね。アニプレックスが作るアニメって、男性向けのタイトルが多いイメージがあると思います。個人的に企画している案件がそういったジャンルが多いということもありますが……。そうしたところを変えていったほうがいいのでは、と考えていた1年でもありました。

――たしかに、「アニプレックスらしいアニメ」ってある気がします。

柏田:それはそれでありがたいことなので、そうした路線をやっていきつつも、「面白い」と思えるものがあれば、会社のイメージにとらわれず、どんどんやっていこうという空気に社内がなってきて、すごくいいことだなと思っているんですよ。これまでの作品の流れが頭打ちになって、現場のテンションがきつくなってくる前に新しいことをやっていこうと。また一方で、「まったく新しい試みで、売れるかどうか分からない。でも作ってみよう」という機運も生まれています。
 ちょうど1月から、自分は「グランクレスト戦記」というテレビアニメをやるんです。「ロードス島戦記」の水野(良)さんの小説が原作で、バンダイナムコのプロデューサーの方から薦められて読んだら、すごく面白くて。ただ、今のご時勢で王道の戦記ものをアニメ化するとなると、映像化のハードルはかなり高いんですよね。それでも原作を読んだときに、どのキャラクターも立っていて魅力的だと感じたんです。自分たちの仕事は、キャラクタービジネスの側面が大きいと考えているので、キャラクターに魅力があれば(ビジネス的に)勝てる可能性はあるなと。
 「グランクレスト戦記」は、大勢が戦う場面もでてきて、制作費もだいぶかかります。企画としてどう転ぶかは分かりませんが、やらないで後悔したくはなかったので、賛同していただける方々にご協力いただき、制作にこぎつけました。結果、かなりいい感じのフィルムになったと思います。10~20代の人たちには、新しいアニメとして見ていただけるんじゃないかと思っているんですよ。自分らの世代でしたら、「ロードス島戦記」は誰でも知っていますが、若い方たちは必ずしもそうではないはずですから。

――私は、高校時代に「ロードス島戦記」や「ソードワールドRPG」にはまったドンピシャ世代なので、「グランクレスト戦記」は読めていませんが、水野良さん原作のアニメなら、ぜひ見てみたいと思いました。

柏田:ありがとうございます。今の若いアニメファンの方たちに、「グランクレスト戦記」をどう見ていただけるのか本当に楽しみですし、そこからいいかたちで火がついてくれたら……と思ってはいますが、そこはもう運ですからね。ただ、そうしたチャレンジは、今後もしていきたいと思っています。

作品情報

グランクレスト戦記

グランクレスト戦記 34

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