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インタビュー 2018年1月5日(金)19:00

新春アニメプロデューサー放談(5)東宝 吉澤隆氏 「既存のフォーマットを一回疑ってみる」

「GODZILLA 決戦機動増殖都市」ティザーポスター

GODZILLA 決戦機動増殖都市」ティザーポスター

(C) 2018 TOHO CO., LTD.

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アニメメーカーのプロデューサーが、2017年を振り返る特別企画。第5回(※)は、アニメ版「ゴジラ」に企画段階からたずさわる東宝の吉澤隆プロデューサーにインタビュー。5月に公開を控える「GODZILLA 決戦機動増殖都市」や、17年に放送されたテレビアニメ「宝石の国」の話題など、3DCGアニメにまつわる、さまざまな話が飛びだした。

※放談の掲載は、原則取材を行った順

取材・構成/五所光太郎(アニメハック編集部)

――吉澤さんにとって、2017年はどんな1年だったでしょうか。

吉澤:17年は、仕込みから数えると約3年半の企画になる「GODZILLA 怪獣惑星」が11月に公開されました。題材は「ゴジラ」ですが、物語としてはオリジナルのようなもので、やっと世に出せたという意味で感慨ぶかい年でした。16年公開の「シン・ゴジラ」が大ヒットしたあとのアニメ版ということで、現場をふくめ、いろいろプレッシャーなどあったと思いますが、今だからこそできるアニメの「ゴジラ」を作ろうという、当初の企画意図のままのフィルムが作れたのではないかと感じています。

――公開後の反響で、印象的なものはありましたか。

吉澤:長い歴史のある「ゴジラ」に対してのお客さんの思いは、それぞれにあると思いますが、アニメ版を見た皆さんが口をそろえて言われたのは、物語終盤の展開でした。「ゴジラ」ならではの恐怖や絶望を感じて映画館をあとにしていただいている気がして、自分としてはうれしかったです。

――制作中の3年半、どんなところにとくに苦労されたでしょうか。

吉澤:オリジナルかつ、ジャンルが本格的なSFということで、設定を作りこむ作業と、さらにそれを映像化するという二重のハードルがありました。とにかくスケールの大きなお話になったので、比例して設定の数も膨大となり、それらをまとめて1本の映像にしていくという作業が、大きなところで苦労しました。

――ご自身が関わっていない東宝の17年タイトルで、特に印象深いものはありますか。

吉澤: 弊社の作品でいうと、また3CCGの話になりますが、昨年10月から12月にかけて放送された「宝石の国」をあげたいです。武井(克弘)というプロデューサーが企画段階から関わり、頑張ってここまでのかたちにした、オレンジさんの初元請け作品です。原作にある「宝石」という設定をうまく3DCGの表現に落とし込み、お客さんが一目で分かるような、他の作品にはないユニークなものを作れているのではと感じました。オレンジさんは、3DCGで制作するロボットやアクションシーンを担当することで知られてきたスタジオです。本作ではキャラクターの芝居をふくめて、オレンジさん独特の表現や演出が随所にあって、次の3DCGアニメの可能性を提示できているのではないかと思っています。

「宝石の国」キービジュアル

宝石の国」キービジュアル

(C) 2017 市川春子・講談社/「宝石の国」製作委員会

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――「宝石の国」もそうですが、東宝さんのアニメは攻めた企画が多い印象です。それは、各プロデューサーの方の熱意のたまものなのでしょうか。

吉澤:攻めていると思っていただけているのなら、うれしいですね。もちろん企画の精査は十分にしていますが、クリエイターに懸けている部分はあると思います。それが監督か脚本家なのかはケースバイケースですが、クリエイター同士の化学反応を期待して企画を立てるプロデューサーが多いのかもしれません。

――ちなみに吉澤さんは、東宝の前はどちらにいらっしゃったのでしょう。

吉澤:私はゴンゾに5年半ほどいて、「ドルアーガの塔」のテレビアニメではアシスタントプロデューサーをやっていました。制作現場ではなく、ずっと企画の仕事をしていて、その次は動画工房に移り、そこでも企画と営業を3年ほどやり、「銀河機攻隊マジェスティックプリンス」という作品から東宝にいるという感じです。

――「マジェスティックプリンス」のメカ部分を担当したのもオレンジさんでしたよね。

吉澤:当時から、こちらが心配してしまうぐらい頑張って、要求した以上のものをだしてくださるのがオレンジさんでした。そして今、「宝石の国」で結果を残されて素晴らしいなと思っています。

――ここ数年、3DCGアニメがこれだけラインナップされているのは、企画する側としても何か意図があると思われますか。

吉澤:3DCGアニメを見る目が変わった大きな転換点が、おそらく3、4年前にあったはずなんですよね。昔から言われていた「3DCGではアニメファンに売れない」との印象がガラッと変わって、セールスが好調なものも多くでてきました。ポリゴンさんだと「シドニアの騎士」や「亜人」、東映アニメーションさんとグラフィニカさんの「楽園追放 -Expelled from Paradise-」、サンジゲンさんの「蒼き鋼のアルペジオ -アルス・ノヴァ-」などでしょうか。そこから一気に増えるかなと思ったのですが、なかなか量産がきかないのか、そこまで数は増えていない、という状況かなと思っています。
 僕らみたいに、企画をたててスタジオさんとご一緒する立場からすると、3DCGアニメの動きについては常にアンテナを立てて、最新の技術なども勉強して追いついていかないといけないんですよね。3DCGは半年前にできなかったことが、今はできるようになっているなど、技術の進歩がすごいんです。そうやって3DCGとは向き合っていかなければいけないと、僕らだけでなく他の会社のプロデューサーの方も思っているはずです。ただ投資金額でいうと、どうしてもセルアニメよりはかかってしまうので、そこをよく考えたうえで、皆さん企画を選定されていると思います。

――なるほど。

吉澤:あと、今の子どもたちはキッズアニメで3DCGに慣れてきているので、僕らが若い頃の感覚とは違うというか、CGに対する偏差値が高いと思っています。3DCGに慣れ親しんできたお客さんが年をかさねてボリュームゾーンになったとき、「CGだから」なんて話は、もう出ないはずです。それを見越して、今からやっておくべきだというのはありますね。また、セルアニメにとって3DCGは敵なのかといったら、そうではなくて、お互いよいかたちで一緒にやっていくのが理想だと思っています。僕がいたゴンゾも、スタジオの中に3DCGの部署がありましたから。

――たしかに、ゴンゾは、「青の6号」や「戦闘妖精雪風」など、かなり早い時期から3DCGを取りいれていました。

吉澤:今はまだ、両方を本格的にやっているスタジオは限られていて、セルをやりつつ3DCGをやるとしても、3DCGは「ここまでしかやりません」みたいな補佐的な使いどころが多い印象です。企画としても、セルと3DCGが一緒にやれるようなものを、今後やってみたいなと考えています。

――ご自身や会社の作品とは別に、17年で印象的だった作品やトピックはありますか。

吉澤:17年のトピックとしては、パッケージを売っていくビジネスが、なかなか先の見えない状況が続いていることですかね。そうしたなかでビデオメーカー以外の会社さん発の企画などが多くなってきているように感じます。他社さんの作品で個人的に感心したのは、イシグロ(キョウヘイ)監督がやられた「クジラの子らは砂上に歌う」でした。まずオープニング主題歌が耳に残って、とてもいいなと思ったんです。オープニングの映像も、歌とマッチしつつ世界観を上手く説明して素晴らしかったですし、本編もひとつひとつのカットが非常に丁寧に作られていました。ああいう濃度でTVシリーズをやるのは大変だったと思いますが、作り手のこだわりが感じられて、自分としてはすごく印象に残りました。

作品情報

GODZILLA 決戦機動増殖都市

GODZILLA 決戦機動増殖都市 7

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