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インタビュー 2018年2月26日(月)19:00

「さよならの朝に約束の花をかざろう」岡田麿里監督、堀川憲司プロデューサーの創作論 作品は人と人の関係性から生まれてくる (2)

(C) PROJECT MAQUIA

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――本作のキャラクター原案は、ゲーム関連の仕事で知られている吉田(明彦)さんが担当されています。どなたの発案なのでしょう。

岡田:私です。もともと「(伝説の)オウガバトル」シリーズなどのゲームで吉田さんのファンだったというのもあるのですが、今回は劇場アニメにふさわしい、時代に引っ張られない絵にしたいというのがあったんです。吉田さんの絵は、それこそ私がゲームでふれて憧れていた時代から色あせないですし、絵自体がすごくシンプルなんですよね。シンプルな絵って、難しくもあると思うんですけど、余白をかんじさせることで、見ている人の気持ちも(キャラクターに)乗りやすいと思ったんです。
 もうひとつ、総作画監督とキャラクターデザインを石井(百合子)さんにやっていただけることになったのも大きいです。吉田さんも石井さんもすごく繊細な絵を描かれる方で、その“繊細”の方向性が、男性と女性の両方あって、そのマッチングを見てみたかったのもありました。

――本作には、平松禎史さんが「コア・ディレクター」という役職で参加されています。この名称は、どなたがつけられたのでしょう。

岡田:平松さんご自身です。

――平松さんが、作品に参加された経緯を聞かせてください。

堀川:最初に依頼したのは、あるパートの絵コンテでした。平松さんが描かれる絵コンテは、その良さをだすための演出がかなりのレベルになるので、ご自身にやってもらうのがいいだろうと思い、絵コンテの次に演出、さらに作監もパートでお願いすることになったんです。そうして実際に打ち合わせがはじまると、作品世界を自分も共有したいと、デザインの打ち合わせなど、いろいろな打ち合わせにも積極的に参加して、最後のラッシュチェックをふくめ、全体に対して多くの意見を言ってくれるようになったんです。こうした、すべてをひっくるめたセクションって今までにない役職だなと思い、本人にどういう肩書きにしましょうかという相談をしてアイデアを出してもらいました。「アシスタント・ディレクター」という案もでたのですが、それだと演助(演出助手)みたいなので、「コア・ディレクター」が、感覚としてはいちばん近いかなと。

――平松さんが担当されたパートは、どのあたりなのでしょうか。

堀川:中盤に出てくる鉄鋼業の街・ドレイルが舞台の場面と、そのあとの戦争シーンの一部です。トータルで283カットぐらいあったと思います。

――スタッフ関連のことで、もうひとつ聞かせてください。劇場アニメで活躍されているアニメーターの井上俊之さんが、メインアニメーターの役職で参加されています。これは堀川さんが依頼されたのでしょうか。

堀川:僕自身、現場にでるラインプロデューサーとしては、この作品を最後にしようと考えていましたので、最後にご一緒したいなと思ったんです。井上さんとは20年ぐらいのお付き合いになりますし、もう現場で一緒に仕事をする機会がないかもしれませんから。今回は、ずいぶん沢山やっていただいて、久しぶりにタイムシートなどを全部見ながら、「ああ、これで最後か」としみじみ思いながらやっていました。

――岡田さんは、井上さんのお仕事をご覧になって、どう思われましたか。

岡田:いやもう、ほんとにすごいなと思いました。キャラデの石井さんが忙しかった最初の頃、先にレイアウトを進めていてくださったんですよ。それを見ただけで「わあ!」と思いました。コア・ディレクターの平松さんもですが、井上さんが今回参加してくださったのは、堀川さんとの“愛”といいますか、長い間つちかってきた関係性あってのことなんですよね。また、井上さんが現場にいてくださると、私もですが、スタッフみんなの気持ちが引き締まるというか……。井上さんの仕事の取り組み方は本当にすごくて、同じ場所で仕事をするだけで、いい影響をうけることができました。井上さんは月曜と木曜にいらしてたんですけど、その日はみんな現場にきていましたね。

(C) PROJECT MAQUIA

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井上さんは、ご自身のTwitterでも書かれていましたが、「全体の引き上げをしたい」と制作中によくおっしゃっていました。作画のスケジュールは順調でない時期もあって、それはみんながより良いものをと思ってくれているからこそなんですけど、このままだと無事に作品が完成するのかなっていうときに励ましてくださいました。そして何より、井上さんがたくさんの原画を描いてくださったのは本当に有り難かったです。
 今回の現場では、井上さん、副監督の篠原(俊哉)さん、平松さんとベテランの方々に大変お世話になって、いろいろな世代が関わっている現場っていいなと思いました。現場によっては、メインスタッフの年代が固まったりすることもありますが、今回は上から下にばらけていて、仕事をするうえでの姿勢や、大切していくものなどを、先輩たちから学ばせていただいた現場だったなと思います。そして、学ばせていただいたことを、その場ですぐに使っていかなければいけない現場でもありました(笑)。本当に得がたい経験ができたと思っています。

――堀川さんは、完成した作品を見て、どんなふうに思われましたか。まだ客観的に見れない部分もあると思いますが。

堀川:作品自体はエンターテイメントで、3年近く関わっている作品ですが、岡田さんの色が今まで以上にでているので、僕としては「まだ理解していない」というのが正直なところです。いろいろな角度から何度も見て、もっと面白い見方があるんじゃないだろうかと、ずっと手の中で転がしていたい作品になっています。
 今までの作品もそうでしたが、客観的に見ることができるのは10年後だと思っているんですよ。それまでは、たぶん冷静に判断できていないはずなんですよね。時をおいて見たら、「ああ、こういう作品だったんだな」というのが分かるんじゃないかと思っています。

――岡田さんは、作品が完成した今、どんなお気持ちですか。

岡田:まだ、ゆっくり振り返る気持ちにはなれないのですが、作らせていただいたこと自体が奇跡的だと思っています。企画がとおるまでに時間がかかったこともありますし、映画を実現させてくれた堀川さんをふくめた関係者の方々、そしてスタッフみんなのおかげで完成した作品の力をすごく感じていて。アニメって本当にスタッフ全員でつくるもので、みんなのバイオリズムや熱意でできあがっているんだなと実感しました。今回、自分は監督という立場でやらせていただきましたが、作品を見ていただけたら、ひとりひとりのアニメスタッフの力が分かるはずです。スタッフがどれだけ熱意をもってアニメを作っていったのかを感じていただけたらと思います。

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さよならの朝に約束の花をかざろう

さよならの朝に約束の花をかざろう 12

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