2016年8月5日(金)19:00
ドラマを魅せるフル3DCGアニメへの挑戦 TVアニメ「正解するカド」村田和也総監督&野口光一プロデューサーインタビュー前編 (3)
――東映アニメーション初のフル3DCGテレビシリーズということで、改めて特別に準備したことはありますか?
野口:そもそもが、初めてということで、どこでつまずくのかすらわからなかったので、村田さんに試金石としてPVを制作してもらったんです。試行錯誤を重ねながら、たった5分のPVのために、およそ半年を費やすことになりました。さらに、その出来具合を検討して、リスタートするまでに約4カ月。その結果、制作にあたっての問題点と、そのために必要な対策が見えてきました。当初オンエア予定だった今年(2016年)4月には、まったく間に合いませんでしたね(笑)
今作の制作にあたっては、まずは極力「制約を設けない」ことにしました。たとえば、すでにメイキングが公開されている3Dフラクタルを使うことも、CGを作る側からしてみれば「それはやめてください」と言いたくなるくらい、手間のかかる作業です。実際に、1カットのレンダリングに通常なら10分程度で済むところ、3Dフラクタルを使ったら、なんと2日もかかってしまいましたから。そこで、Unityを利用して、リアルタイムで3Dフラクタルを動かせるようにするなど、テレビシリーズに適合するように工夫を重ねています。
また、今作のメインキャラクターとして、早くから公開されているヤハクイザシュニナのマント表現も難しかったです。マントの動きは手作業で付けているので、膨大な手間がかかるんですが、なんとザシュニナは二重マントなんですよね(苦笑)。
キャラ数が増えすぎてしまったことも、超えるべき壁でした。20体ほどのメインキャラクターを3DCGで制作し、そのほか50体以上のサブとモブ的なキャラクターについては、手描きの作画で対応することにしました。ですから、厳密にはフル3DCG作品ではないんです。これまでの作品ではほとんど見られなかった取り組みなので、3DCGと手描きのいいところを共存させられるよう、複雑なチャート図を作り、ここからここまでは3DCG、ここからは作画……というようにしてマッチングを図っています。僕は、3DCGと手描きのイイトコ取りが今後の3DCGアニメの主流になっていくんじゃないかと思っているので、今作がそのケーススタディになるかもと考え、じっくりと時間をかけてチャレンジしています。
そのため、制作のシステムにも変化がありました。3DCGアニメーターはもともとExcelで工程を管理していたのですが、手描きのアニメーターは今までもカット袋を手渡しという形です。ですが、双方の融合をはかる以上、そのままでは立ち行かないので、アメリカ製のプロダクション管理ツール「SHOTGUN」を導入し、プロジェクトの全容の把握を簡単にし、調整をしやすくなるようにしています。「楽園追放」は104分1本の映画だったので、最後は根性でなんとか乗り切れたと思いますが、1クール13話のテレビシリーズとなると、さすがに根性論だけでは越えられない壁がありますね(笑)
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