2017年1月2日(月)20:30
「アルデラミン」に新情報!? 驚きのディレクターズ・カット版とは? 市村徹夫監督に聞く
(C)2015 宇野朴人/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/「天鏡のアルデラミン」製作委員会
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「ねじ巻き精霊戦記 天鏡のアルデラミン」(以下、アルデラミン)のインタビュー特集もついに最終回。大トリとなる今回は、市村徹夫監督が登場。GONZOにて様々な作品に携わり、「神様のいない日曜日」「凪のあすから」「NORN9 ノルン+ノネット」などで絵コンテ・演出を務め、重要な役割を担ってきた氏にとって、本作はTVシリーズ初監督作品でもある。そんな本作の制作を振り返り、どのような作り方を目指したのか、そして制作を終えた現在の心境を聞いた。さらに、今回はインタビュー中、監督の口からファンには嬉しい思いがけないサプライズ発表も……?
■キャラクター重視のストーリー構成
―― まずは、制作お疲れ様でした。「アルデラミン」を終えられて少し経ちましたが、手応えはいかがでしたか。
市村 今回はあまり自分の不得意なことや、嫌いなことはやってないです。好きなものだけを集めて作っています。その自分の得意なレンジがどこまで通用するのか。そういう意味では手応えがありました。もっとプラスアルファしたいところも色々ありましたが(笑)。
嬉しかったことで言うと……友人の上司が「アルデラミン」を見ていてくれたらしいんですよ。それで友人とその上司の方を交えて、飲みに行くことになったのですが、会った時に直接「面白かった」と言ってくれて、「ああ、良かったな」と思えたことですね。
第13話 場面カット
(C)2015 宇野朴人/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/「天鏡のアルデラミン」製作委員会
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―― ではあらためて振り返られて、どのような部分を重視して制作されたのか、教えてください。
市村 特に序盤については、イクタとヤトリを軸にした周りの関係性を形作っていくのが大事でした。原作1巻から3巻の役割は、5人の掛け合いとそこに絡んでくる周りのゲストキャラのお話なんですよ。加えてそこにシャミーユがどれくらい絡めるかという部分に注力しました。
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―― キャラクター重視ということだったんですね。
市村 アニメには尺があるので、膨大な原作をまとめないといけない。そうなった時、ストーリーを進めるための会話を残しがちです。でも、それだと説明になってしまうので、非常につまらない。だからストーリーを進める会話は最低限にして、キャラクターの個性的な台詞回しと、見ている人が感情移入できる台詞を重点的に残していこうとしました。ストーリーをロジカルに捉えてまとめてゆくと縦のラインは非常にスムーズに繋がるのですが、キャラクターの感情が阻害されがちになる。むしろシーンは感情的に捉えるように作って欲しいと逐一言っていました。そうでないと視聴者の方も感情移入できないかなと。
―― 例えば具体的にどういったシーンで、キャラクター重視にした工夫が見られたのでしょうか?
市村 7話、井戸の前でカンナとイクタがやり取りしますよね。元々のシナリオでは、ふたりの科学の話に尺を割いていましたが、そこを丸ごとカットしました。それは、7話の最後にカンナが「イッくん、ここには科学のかけらもありはしないよ」と言うので、その台詞を立てるために入れていました。ただその科学の話は、結局説明でしかない。本当に大事なのは、8話でカンナが死ぬ時に、いかに見ている人が感情移入してくれるかです。そうすると大事なのは、カンナが非常に聡明な子で、それに対してイクタが心を開いて笑い合うところです。そのあたりは迷いつつも取捨選択していきました。
■次が見たくなるような作り方を
―― その他にストーリーの進め方で気を遣った部分はありますか?
市村 まずテレビシリーズですから、毎週見たいと思わせるような作品作りにしたかった。一週間ワクワクして待ってくれるような、そんな作品ですね。だから何よりストーリーが第一でした。そういう意味で原作は非常に面白かったのですが、作り方次第でつまらなくなる可能性もあった。だったら自分なりに工夫して、面白さをちゃんと押し出そうと。それが先ほど言ったキャラクター重視の方法でした。
加えて、僕が最初にアニメーションプロデューサーの橋本(健太郎)君にこだわらせて欲しいと上げていたポイントは、美術設定です。
―― 美術ですか。それは少し意外ですね。
(C)2015 宇野朴人/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/「天鏡のアルデラミン」製作委員会
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市村 シナリオと美術さえ抑えておけば、シリーズの土台は作れる。その上で、スタッフに遊んでもらう分には、ぶれることはない。だから例えば、9話Bパートのヤトリとナナクが戦う前後で、シナーク族が高いところから攻めてきて、崖下で戦闘するようなところ。高低差や狭い道も活かしつつ、蛇行していることによって、その場にいるキャラクター全部を見せなくてもいいかたちにして、作画カロリーも温存する。そういう美設を提示し、こういう絵が欲しいという話をしたうえで、コンテはお願いしました。そうすれば、コンテチェックをする時も、キャラ性から外れたものだけ確認すればよいということになります。
■アクションはリアルで、しかも華のあるものに
―― アクションも目をみはるシーンがありましたが、そのあたりはいかがでしたか?
市村 メリハリはつけたかったのですが、アクションシーンの動きは、地に足の着いたリアルな、でも華は欲しいという無茶な注文をしていました(笑)。それは4話のBパートでヤトリが兵を斬っていくシーンをやる時に、絵コンテを担当した古川(知宏)君に随分話をしました。彼ならやってくれるだろうと思って振っていたこともありますが、ハッタリではない方法で、ヤトリの凄さを表現して欲しかった。逆に相方のイクタは、動きはあまりなく、むしろ読み合いが大事になるキャラなので、そういう意味では静の演出、動の演出をどちらも入れられる話数がダイナミックになりました。4話や9話がそうでしたね。
―― 個人戦ではなく、戦争描写についてはいかがでしたでしょうか。
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市村 これはもう原作通りなのですが、大群同士の戦いのカタルシスはないだろうとは思っていました。結局ある一人のキャラクターの視線を通した戦いなんです。ですから、どうしても局地的な戦いを描写していくことになる。戦争というより、そのキャラクターにとって、その戦いはどういう意味を持つかというところに注力しました。
悩んだところは、僕らにとって戦争のリアリティがなかったことです。戦争体験もないしですし、今の20代や原作者の宇野(朴人)さんも、もちろんない。それで戦争をどう語ればいいかは、正直僕には分からなかった。だから人の生き死にを通して、ギリギリのところで浮き彫りにされる心情を描くことにしたんです。そうすると通常のドラマ以上に、むき出しの感情が出てくる。そこをドラマの見せどころにしようとしました……まあ、中山(信宏)さんは、時々渋い顔していましたが……。
―― ああ(笑)。中山さんはもっとエンターテイメント的な楽しさに振りたかったと。
市村 ドラマとエンタテインメントはバランスが難しいですね。でも、原作もやっぱりドラマ的な部分を大事にしていたと思います。
作品情報
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精霊が実体として存在し人間のパートナーとして共に生きる世界。「カトヴァーナ帝国」の少年イクタ・ソロークは、昼寝と徒食と女漁りに精を出し、日々を怠けながら過ごしていた。イクタは、軍部の名門イグセム...
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