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インタビュー 2019年1月2日(水)19:00

押井守監督の“企画”論 縦割り構造が崩れた映像業界で、日本の映画はどう勝負すべきか (2)

「カメラを止めるな!」

「カメラを止めるな!」

(C)ENBUゼミナール

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「カメ止め」は、どう考えてもみんなで楽しく見る映画ですよね。僕はモニターで見たけど、あの映画は友だち同士で見て盛り上がる映画でしょう。だから、当たったんですよ。しかも、観客自ら見いだした映画だからね。宣伝で見にいったわけでも、役者で見にいったわけでもない。役者はすべて無名だからね。それを自分たちで見つけて、自分たちの力でヒットさせたという映画の典型だよね。口コミで広がるって言うさ。ただ、よく言われる「これからはSNSや口コミだ」という言説も、こういう映画の場合は自然発生的なもので、お客さんが勝手にやる世界だから、配給会社や宣伝会社が何をやろうが実は関係ない。お客さんが自分たちで探した好きなものを自分たちで広げようとする一種のボランティア精神だから、これは仕掛けようがないですよね。むしろ、仕掛けようという考え方自体が間違っているとすら言えると思う。

もし、仕掛けとしてやれることがあるとすれば、ああいう自由な企画で監督にどんどんものをつくらせるっていうことだよね。限りなく自主映画だったけれど、だからこそすべてのスタッフもキャストも頑張ったわけだからさ。そういう企画が何十本、何百本とあれば、そのなかから「カメ止め」みたいな映画がまた出てくるかもしれない。

でも、今のところそういうふうにはなっていないですよね。何年か前にあるプロデューサーが言っていたのは、日本の映画で当たる可能性があるのは、「売れている原作で、売れている役者をそろえて、名のとおった監督が撮る」の三拍子がそろうことだと。「この法則しかないんだ」と言っていて、これを満たさないとプロデューサーとして仕事をしたことにならないとまで言っていた。当時は「本当かな?」と半信半疑だったけど、今は明らかに間違いだと思っている。そんな企画で山のようにつくってきて、どれだけのものが当たったのかは、これまでの数字が示しているじゃないのってさ。売れている原作のものを10本つくれば、2、3本はそこそこいくかもしれないけど、トータルで考えたときにそれはどうなのって思うんだよね。

本来、監督が撮りたいもの、脚本家が書きたいものをどう映像化するかというところでプロデューサーは機能するべきだし、それをどういう場で成立させるかを考えるべきなんだけど、今はそのようにはなっていないよね。決められたレールが完全に敷かれているなかで、何を乗っけるかの仕事しかしていないように見える。レールを敷くところからはじめるのは無理だとしても、せめてどのレールに乗っけるかぐらいの仕事はしてよって話なんだけれど、残念ながらそうはなっていない。実際に僕はそれを体験したからね。「ガルム・ウォーズ」(16)という作品は、出口を決めないままにつくってしまった。どのレールに乗せていいかが最後まで分からなかったんですよ。あれだけの規模のお金を使ったにも関わらず、世の中への出し方が決定的に間違っていたっていうね。なぜ、そういうことになってしまうのかってことですよ。

要は何が言いたいかというと、横割りのジャンルのなかで何を求められるかを無視して映像をつくってもそもそも勝負にならないし、お客さんのニーズにも合わないということ。僕はお客さんのニーズを無視して勝手に映画をつくってきていると思われているけど、そうじゃないんですよ(笑)。どの媒体で何をやるべきかをずっと考え続けてきた男ですから。さっきも言ったとおり、オリジナルビデオだったら繰り返し見られることに耐えられる作品であるべきだし、何かしらの付加価値が必要になってくる。そういう意味では、ビジュアル優先でつくるべきだと思っているんですよね。また、映画では描ききれない長い物語の場合は、ドラマシリーズにしたほうが商業的にもアドバンテージがある。今は、大型のファンタジーなんてどんなにお金をかけても映画じゃ勝負にならないんじゃないかな。「ゲーム・オブ・スローンズ」という作品が、これまでの常識を全部ひっくり返しちゃったから。

「ゲーム・オブ・スローンズ」は、エピソードの1本1本が大作映画並のクオリティで、登場人物が40~50人でてくる。こうした物語は2~3時間の映画で描けるわけがなくて、ドラマシリーズでしか体験できないものをつくっている。しかも映像本来の姿で考えると、あれこそ配信に向いているんですよね。好きな時間に繰り返し見られるし、オンエアを録画する必要もない。だから、あのような壮大なファンタジーはこれから映画でつくるべきではないと思うし、配信で見たいときに一気に見られる形式がいちばんいいに決まっているんですよ。そういうふうに、それぞれの形式に特化した作品が求められているなか、日本の映画でそれをちゃんとやれているかといったら、全然やれていないと思うんだよね。そこからものを考えてつくらないと、やっぱりお客さんから支持されないと思う。

アニメでも実写映画でも、「本当にこれは映画館でやるべきものなのか」を誰も分からなくなってきている気がする。で、本来それを誰が決めるのかといったら、企画の段階で決めるべきことで、それはプロデューサーの仕事でしょう。僕は監督の立場から、今したような話をして「この企画はシリーズにしたほうがよくないですか」とか言うんだけど、今の日本ではそういう次元では企画がなかなか通らないから全部後手にまわるんだよね。映画で企画がスタートしたけれど途中でシリーズに変えようとか、シリーズのつもりだったけどこれは単発の映画のほうがいいかもねというふうにはいかなくて、最初から着地点が決まったところでつくっているから、僕に言わせると全然勝負になっていないように見える。

例えば、モニターで見るのに相応しいキャストと映画館で見るのに相応しいキャストって、僕は違うと思う。だからといって、アイドルをそろえれば映画が当たるかといったら、実際はそうでないと思うし、そもそもテレビで見たいアイドルと映画館で見たい役者さんとは違うわけだよね。あまりこういうことは言いたくないけれど、映画館でお金を払ってまで見たい役者さんが今日本に何人いるかっていう話にもつながってくると思う。

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  • 2018年に上梓した著書「シネマの神は細部に宿る」(東京ニュース通信社刊)。

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