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インタビュー 2020年4月3日(金)19:00

「BNA ビー・エヌ・エー」吉成曜監督は手塚治虫の絵が好き アニメーションも物語も“変化”が醍醐味 (2)

(C) 2020 TRIGGER・中島かずき/『BNA ビー・エヌ・エー』製作委員会

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――アニメーターでもある吉成監督は、「BNA」制作のなかで、自ら原画を描いたり、原画を直したりすることはあるのでしょうか。

吉成:なるたけ手放して、どれだけ人に任せられるかは自分のなかのテーマです。「リトルウィッチアカデミア」のときよりも手を入れていないはずですが、その代わり絵コンテにはだいぶ手を入れていると思います。ほんとは、(制作工程の)上流ではなくて出口に近いところにいたいんですよね。いちばん楽しいのは最終段階だったりするんですよ。できあがったものに手を加えるのが楽しみではあります。

――監督として、どの作業にいちばん時間を使っているのでしょうか。

吉成:やっぱりコンテですね。そこを頑張らないと、どうしようもありませんから。「リトルウィッチアカデミア」のときは「ここは自分で描くから」みたいなコンテを描くこともわりとあったんですけど、今は時間もないし、ちょっと無理かなと(苦笑)。コンテ段階から、仮に動かなくなっても成立するような画面を一生懸命考えるように心がけています。

――アニメーターのときは自分で思うように描いていたものを、監督になったときにどう人に委ねるか、いろいろなご苦労があると思います。

吉成:今石さんは、そこをCGに置き換えているわけですよね。自分では描かないけれど、それを実現するためのツールとしてCGを使うよう考えていると思います。僕も今後は、自分なりにそういうことができたらと考えているところです。
 作品のカラーとしても、自分の色はなるたけ薄くしていきたい気持ちがあります。自分のものだけをやっていくと最終的にはネタが切れちゃいますし、自分より良いものや違うものを描ける人にお願いしてやっていくほうがいい。そこでどんな人を連れてくるかという、スタッフワークのほうが重要だなと。監督の仕事ってそれだけというか、「自分で描きたい」みたいな欲から発想しちゃダメだよなと思っています。

――キャラクターの設計や絵コンテを、吉成監督がアニメーターとして仕事をしていたときに楽しかったものにしようというふうには考えていますか。

吉成:僕は楽しかろうと思って描いていますが、アニメーターとしての僕はちょっとずれているようで……(笑)。やっぱりアニメーターによって描きたいものが違いますし、そこはあまり上手くいっていないかもしれません。僕は「(アニメーターは)派手なアクションが描ければ幸せだろう」みたいに勝手に思っていますが、そうでもないのかなと。「BNA」は線が少ないし、動物などは多少崩しても大丈夫だし、これは描いていて楽しいに違いないという設計にしているつもりですが、動物を上手く描ききれないとか、適性のある人とそうでない人がいるようです。

――「BNA」の話題からそれますが、吉成監督は手塚治虫キャラクターのショートアニメ(※編注)を自主制作されたことがありますよね。手塚作品に興味をもったのは、いつ頃からなのでしょうか。

編注:2006~09年に発表された自主制作ムービー「手塚キャラ動かしてみました」。「吉成曜画集 ラクガキ編[手塚治虫キャラクター]」(スタイル刊/現在品切れ)の付録ブルーレイに収録されている。

吉成:子どもの頃から手塚作品は読んでいて、言うまでもなくストーリーも面白いんですけど、今は「絵が好き」というのが大きいです。絵の魅力に気づいたのは、けっこうあとになってからなんですけどね。この感じは今のアニメに失われつつあるように思うので、上手く使えるんじゃないかなと。
 もともと日本のアニメは手塚治虫からはじまったようなもので、かつてはその模倣があふれていた時代から進化していって今にいたっているわけですよね。その先祖返りみたいなものかもしれませんが、やっぱり初期の手塚治虫の絵には何かがあると思うんです。「アニメーションをやりたい」というか、手塚治虫なりに「これなら(アニメに)できるだろう」と考えたであろう要素が感じられるスタイルで、これは今でも使えるものではないかなと思っています。

――「BNA」は変身ものが発端だとうかがいましたが、手塚作品のモチーフのひとつもメタモルフォーゼ(変化、変身)ですよね。

吉成:たしかに手塚治虫は「変化する」ことが好きな人でしたよね。メタモルフォーゼ自体は、アニメーションには必ずある醍醐味のひとつではありますけれども。
 手塚治虫と直接関係はありませんが、“変化”は自分のテーマのひとつです。キャラクターや性格、社会情勢などもふくめて「なぜ、これがこのように変わったのか」に興味があって、そこをつなげて考えるのが好きといいますか。アニメーションの場合、絵はどこまでいってもやっぱり絵で立体ではありませんから、どこかで無理やりつなげて動いているように見せることになります。特に手描きアニメーションでは、そこが醍醐味ですよね。かたちを自然に変化させるテクニック自体が面白いというのはあります。
 キャラクターの変節も“変化”のひとつですよね。手塚治虫の「火の鳥」だと、最初に善として出てきたキャラクターがラストでは反転して悪になる、もしくはその反対に悪が善になる、みたいなことがよくありますよね。そういう変化も非常に面白いなと思っていて、中島かずきさんのシナリオも、そうした善悪の反転や価値観の転倒のようなものが必ず入っています。そういうところは手塚治虫的と言ってもいいんじゃないかと思います。

――吉成監督にとって、どの作品にも共通してある“TRIGGERらしさ”のようなものがあったら聞かせてください。

吉成:うーん。TRIGGERらしさというのはちょっと違うかもしれませんが、「最後は勢いでいったれ」みたいなところは共通しているかもしれません(笑)。今石さんの作品はいつもそうですし、雨宮(哲)の「SSSS.GRIDMAN」みたいにルックや演出方法が違うものでも、最後の盛り上げになると急に今石さんっぽくなっているなと感じたことがありました。

――「BNA」も、終盤は勢いでいく感じになりそうでしょうか。

吉成:最後は、もうどうとでもなれみたいな勢いでいきたいですね(笑)。ただ、勢いがつきすぎるとゴールに行く前に疲弊しきっちゃいますから、そのさじ加減が難しいんですけれど。そこはなんとか上手くコントロールしていきたいと思っています。

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