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インタビュー 2021年7月21日(水)19:00

「竜とそばかすの姫」細田守監督のインターネット的なつくり方と作画の未来 (2)

(C)2021 スタジオ地図

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――今回、美術監督を池信孝さんが担当されています。池さんはデジタルに強い方という印象で、そういうことも関係しているのかなと思いました。

細田:それはほんとにそうですね。これまでも憧れの美術監督の方にやってもらっていますが、池さんは今敏監督の全作品を務められた方ですからね。いつかご一緒できたらと思っていたのですが、「未来のミライ」まではずっと手描きの美術というものにこだわってたんですよ。デジタルで美術を描いている人のことはあまり考えずに手描きの人を中心にやってきたんですけど、「未来のミライ」をつくり終えた時点で、もう限界だなあと。手描きで美術を描く人がどんどん減っていって、これ以上このやり方で質をたもつのは難しい。そのために新しい人を起用していこうと、実際に前2作では大森(崇)君や高松(洋平)君のような新しい人にやってもらって、今度はもっと若い人にお願いしてみようかなんて話していたんですよ。そんなことを言っているあいだにコロナ禍になって、こうなったらもう美術は思いきってデジタルにガラッと変えよう――という考え方の変化があって、デジタルの美術のなかでぜひとも頼みたい美術監督が池さんだったんです。

――なるほど。池さんの美術は現実世界だけで、<U>の世界には関わられていないのでしょうか。

細田:美術も現実と仮想世界でコンセプトを分けていますから、池さんの美術は現実世界だけです。<U>の世界はエリックのデザインと、CGディレクターの下澤(洋平)さんが美術方面を担当しています。

――本作はニュース映像、ウェブ記事、デジタルガジェットの静止画や動画などが多く登場します。それらが面白くて、インターネットの今の雰囲気もだしていると思います。すずの告白疑惑の学校内の騒ぎが海外のタクティクスゲーム風に表現されているところなど、すごく面白かったです。

細田:(笑)。グループSNSでおこっているクラスのもめごとみたいなものを視覚化するとああいうふうになるのかなと。これもまたインターネットの世界と現実がほとんど等価になっているという描写のひとつかもしれません。そういう部分はけっこう気をつけながらつくっていましたし、インターネットに欠かせないエロ要素もほんのちょっとですが入れています。あってしかるべきですし、ないとやっぱり不十分な気がしたんですよね。

(C)2021 スタジオ地図

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――たしかにそんな描写もありました。

細田:エロ要素やダークウェブ的な部分も必要最低限度とはいえちゃんと描くことが重要だと思ったんです。子どもが見るものだとしても、ギリギリの範囲であのぐらいなら許してもらえるかなと。

――スマホやウェブサービスなどの画面のすべてに絵やアイコンが入っていて、このつくりこみだけでも大変な労力がかかっていると思います。

細田:「デジモン」の頃からそうですけど、インターネットの世界を視覚化するのには、そのぐらいの労力がかかることなんですよね。普通はブラウザのビジュアルなどを介してしかインターネットを感じていないと思いますが、僕は20年前からインターネットのなかはどんな風景かということを考えながら映像化してきたので、ただ言葉で説明するのではなく、やっぱり何事もビジュアル化していきたいと思うんです。ビジュアルで表現するのはデザイナーの作業もふくめ大変なものになりますが、そこを地道にやっていくのがインターネット世界を描く作品の面白いところでもあります。

(C)2021 スタジオ地図

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――「竜とそばかすの姫」はキャストの影響もあると思いますが、これまでの細田作品の全部乗せプラスアルファのような印象をうけました。作中のシチュエーションなど、過去作品を思わせる要素もあったように思います。

細田:川のところで恋愛話をしているところとかですかね(笑)。まあ15年前のことですし、単に川沿いというシーンのシチュエーションが同じなだけなんですけれど。あと「時をかける少女」に登場する川は荒川ですけど、荒川と地方都市の川ってちょっと違うんですよね。
 今回、現実世界の舞台を高知にしたのは仁淀川がきれいだったからなんですけど、街中にも鏡川という川が流れていていい街だなあと思ったんです。夕方とか学生たちが話しながら鏡川ぞいを歩いて帰っていく光景をみると、川が流れている地方都市ってほんとに風情があっていいなと。僕の母校がある金沢(石川県金沢市)もそうでしたし、京都、福岡、広島、「がんばっていきまっしょい」の舞台になった松山(愛媛県松山市)など大きな地方都市にはだいたい大きな川が流れていて、その川沿いでみんなデートしたり散歩したりしていて、そういうのってほんといいなと思います。

――作中で明確に言葉にされてはいませんが、現実世界が限界集落化していることも描かれていました。

細田:美しい自然がある一方、現実世界には社会問題としての限界集落化があって、作中ですずが乗るバスには廃線になることが書かれています。実際、僕らもロケハンでバスに乗ると誰ひとり乗客がいないことがあって、どうやって成り立っているんだろうと思うわけです。インターネットの世界で<U>とつながって華やかな舞台にいながらも、同時に現実世界の崖っぷちにいるような女の子という対比をハッキリと打ちだせたらなと思っていました。

■手描きのアニメーションについて思うこと

――制作中にとくに苦労されたのは、どんなところだったのでしょうか。

細田:大変だったのは、やっぱりCGですかね。3DCGのキャラクターにどう感情表現をさせて、見ている人に気持ちが伝わるようにするかの試行錯誤はかなりの苦労がありました。けっこう厳しいことを延々と言っていたと思います。

――3DCGだと細田監督がコントロールしきれない部分がより大きくなるから大変だったということなのでしょうか。

細田:結果的にはコントロールしているので、そういうわけでもないんですけど、そこにいたるまで時間がかかるといいますか。こういう問題って昔からあるんですよね。僕は20年ぐらい前からCGをやってますけど、例えばCGアニメーターの仕事が上手くいかないからと、手描きのアニメーターが「こうだよ」と描いて見せたからって上手くいくものではないんです。CGの参考にラフ原(ラフ原画)を描くというやり方も昔からあるんですけど、そんなことで上手くいった試しがなくて。結局はCGアニメーター本人に上手く動きをつくってもらうしかないってことだと僕は思っています。そのためにCGアニメーターと目標を共有し、どういう感情を表現するかを追求していく作業は、手描きにおける作画の修正というより演劇のワークショップに限りなく近いものがありました。

(C)2021 スタジオ地図

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――トライ&エラーを繰り返して3DCGの動きがつくられているのですね。

細田:このやり方はCGだからできることで、手描きの作画で同じことをやると負荷がかかりすぎますから同じ方法論ではできないと思います。でもひょっとしたら、手描きのアニメーターの人もこうした演劇的なワークショップをうけたほうがいいのかもしれない――と思うぐらい、いろいろなアニメーションのつくり方があっていいと思うんです。僕自身は手描きの作画による伝統的なアニメのつくり方が好きですが、必ずしもそれがすべて正しいとは思っていないんですよね。だから今回のようなつくり方をしているんでしょうし、今は手描きのアニメーションそのものがピンチになっているんじゃないかという気すらしています。
 ベテランの素晴らしいアニメーターの人たちと話すと、スタッフとして一緒に作品をつくっていく気持ちがうすい若い人が多くなっているのが気になるという話がよくでるんですよ。個人の発表の場としてしか考えていないようにみえる仕事の仕方をする人がいて、それだと良い作品をみんなでつくっていくことはできないんじゃないかと。今回そう言われていることの一端を僕も垣間見ることができて、手描きの作画の限界みたいなことをちょっと感じました。この傾向が進んでいくと、作画が尊敬されるような仕事として残っていけるのか分からないなと思ったのが正直なところです。

――難しい問題ですね。

細田:ほんとに難しいことだなと思います。ベテランアニメーターの人のなかには、これからもっとそうなっていくだろうから、ある年代以上の人とでないと作品づくりは一緒にできないかもしれないと言う人すらいるぐらいですから。

――メイキング動画を見ると、細田監督は本作の絵コンテもこれまでどおり手描きで描かれているようですね。

細田:そうですね。紙に鉛筆で描いています。

――絵コンテをデジタルで描くのを試されたことはあったのでしょうか。

細田:試したことはあるんですけど、誰も得をしないなと思ってやめたんです。原画や動画をデジタルでやることのメリットは大きいんですけど、僕の場合、絵コンテをデジタルでやることのメリットが見いだせなくて。デジタルだとムービーにして見ることができるといっても編集の段階でムービーになるわけですから、そうなると編集って何? みたいな話になりますし、ムービーにしないと自分の絵コンテの良しあしが判断できないというのもおかしな話ですからね。それを頭のなかでやって、絵コンテとして設計できるのが演出の仕事だと思っていますから。

――とても興味深い問題提起で、絵コンテについての考え方が違うということですよね。デジタルで描いてムービーにしながら随時変えていくやり方と、それを頭のなかで繰り返して紙に出力するという違いなのかなと思いました。

細田:実写の現場で、イメージを共有してみんなでもんでいくためにとりあえず描くというのは有効だと思いますが、アニメの絵コンテのデジタル化は意味がないんじゃないかと僕は感じていますが……どうなんでしょうね。もちろんつくり方にもよるでしょうけど、道具がデジタルかそうじゃないかという違いだけで、結局は上手いかどうかなんですよ。とはいえコロナ禍のなかで、原画に関してはメリットも大きいので今後よりいっそうデジタル化が進んでいくだろうなと思います。

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