2026年3月20日(金)19:30
【明田川進の「音物語」】第90回 「AKIRA」の音響の全バージョンを聴きわけられるオーディオ部屋

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僕は「AKIRA」の音響のすべてのバージョンを聴きわけられるように自宅でオーディオシステムを組んでいます。このことは、前回お話しした「アニメ音響の魔法」の取材のなかでも余談的に触れました(※同書P270~275「『AKIRA』における音響の革新」)。
自宅地下のオーディオ専用の小さな部屋に、DVD3台、VHS1台の計4台の再生機を設置して、「AKIRA」のすべてのバージョンを同時に再生できるようにしています。同時に再生を開始して音声ラインを切り替えることで、映像はそのままにリアルタイムに好きなバージョンの音を聴くことができる仕組みです。聴き比べてみると音が全然違うことがよく分かります。

明田川さんご自宅のオーディオ部屋
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これまで何度かお話ししている通り、「AKIRA」の音響は音楽監督の山城(祥二)先生のこだわりで、ソフトをだし直すたびに計7回、新たにつくり直しています。山城先生は最初に音ができあがったときから、自分の思っている音楽にはなっていないという話をされていて、LDをだしたときにパイオニアの方とも相談して音楽を映画公開時のものから全部差し替えました。それでもまだ圧縮されている部分があって、それを本当に再生しようとなったら普通のスタジオではできないぐらいでした。そういうことを何度もやっているうちに、ディスクや再生機のクオリティが上がってきて、ようやく山城先生が納得できるものができた最後のバージョンが、2020年発売の4Kリマスター版でした。
何度もつくり直していると言っても、声の芝居は録り直していませんし、効果音は一部足したぐらいです。いちばん直している部分は音楽のバランスなんですよね。「AKIRA」では、山城先生がつくった音楽をひとつのシーンで3曲重ねて使っているところがあって、このバランスなどを毎回変えています。しかも機械ではなくてミキサーさんの感覚による手作業で調整してもらっていますから、やるごとに変わっています。技術の進化によって今まで聴きとれなかった部分も聴きとれるようになり、僕自身、毎回気になるところは思う存分こだわらせてもらっていました。山城先生も、どうぞおやりなさいという感じで任せてくださってありがたかったです。
すべての音のバージョンの制作に携わり、いちユーザーとしてソフトの聴き比べもしてきた身としては、やっぱり2020年に発売された最後のバージョンがもっとも納得感があります。オーディオは住環境のこともあって、サラウンド環境をつくるのはなかなか難しいかもしれませんが、機会があったらぜひ最新の「AKIRA」の音響を体験していただきたいです。
本コラムを書籍化し、明田川仁氏との音響監督親子対談、原口正宏氏による詳細な作品リストなどを追加収録した「音響監督の仕事」(星海社新書)発売中。
詳細は下記記事をご参照ください。
https://anime.eiga.com/news/124279/
明田川進の「音物語」
[筆者紹介]
明田川 進(アケタガワ ススム) マジックカプセル会長、日本音声製作者連盟理事。日本のアニメ黎明期から音の現場に携わり続け、音響監督を手がけた作品は「リボンの騎士」「AKIRA」「銀河英雄伝説」「カスミン」など多数。
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