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特集・コラム 2021年11月6日(土)19:00

【かねやん的アニラジの作り方】第28回 僕たちのお祭りはどこへ

ベルガモが新たなお祭りコンテンツを目指す「長谷川育美・川井田夏海 なんにもしたくありません」

ベルガモが新たなお祭りコンテンツを目指す「長谷川育美・川井田夏海 なんにもしたくありません」

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新型コロナウイルスの感染がようやく落ちつきはじめました。町を歩いていると徐々に元の生活に戻りはじめているようにもみえます。我々ベルガモも8月あたりから万全な感染対策をとりながら有観客によるイベントを再開しました。しかし、まだ東京までイベントに来るという気持ちにはならないのか、どのイベントもコロナ前の半分以下の動員にとどまっています。この状況はどのイベント関係の方に伺っても同様で、このペースが続くと「かなりきつい」というのが正直な感想です。これまでコロナが収まれば「元通り」という未来を描いてきましたが、別の未来を描かなければならなくなっています。やはりコロナ禍の2年という月日はあまりに長い。
 先日開催された株式会社ブシロードの株主総会で、一般株主の質問にブシロードの木谷高明会長はコロナ禍の影響についてこう答えています。「コロナ禍ですべて収益性のところでもダメージを受けていますが、それ以上にダメージを受けていることがあるんです。それは何かというと、コンテンツ、IPの趣向が変わっちゃったことなんです。要するに、この2年間ぐらい、まあコロナ以降なんですが、『みんなで盛り上がろう』とか『なにか目指して頑張ろう』というコンテンツで、受けているものを僕は知らないです。ですから当社の、ブシロードグループのコンテンツって、いわゆる、『みんなで盛り上がろう』とか『なにか目指して頑張ろう』とかいう、お祭りコンテンツなんですね。それで、コロナ禍でお祭りコンテンツが一切受けなくなったという、このことが最もダメージです」(編注)
 そのうえで「でも、お祭りをやり続けるしかないんです」とも言っています。私も「お祭り」を作り続けていくしないと思っています。この2年で「推し」という言葉が定着しました。この番組が、この声優が好きだから、「推して」いく。完成品を売るのではなく目的を達成するまでのプロセスを楽しむプロセスエコノミー。イベントという定形でお祭りを創出していた我々が、今度は定形なきお祭りを創出しなければならない時代に突入です。
 「定形なき」とはその都度、結果がどうなるか見えづらい目的にトライしづけることで、これは本当に不安なことです。ただコロナという世界史に残る大事件が我々の生活に経済に、どう今後の歴史に影響を与えるのか、その行方を見るのは楽しみなことでもあります。
 9月末にKADOKAWAの子会社のキャラアニをKADOKAWAが吸収合併するという発表がありました。「キャラアニ」は1999年に「キャラクターアンドアニメドットコム」という社名で創業したキャラクターグッズ業界初のネット通販会社でした。当時、毎年夏の名物イベントになっていた「東京キャラクターショー」の主な出展社であった角川書店、メディアワークス、ニッポン放送、ブロッコリーなどが株主となって「ドットコム」ブームの勢いにのって(※のっかって、は差支えありそうなので表現変えさせていただきました)スタート、私もネット通販という当時新鮮な響きにわくわくしてよくお邪魔しましました。この度、その役割を終えたということでしょう。
 ただ、このニュースを聞いて「東京キャラクターショー」に出展したときのことを思いだしました。今では皆さん信じられないと思いますが、放送局であるラジオ大阪がグッズを販売することを目的として初めて出展料というお金を払って出展したのが、このイベントでした。放送局がモノを売るなんてそんなノウハウも全くなく、イベント前日に準備はしたものの、これは売れなかったらどうなるのか不安で寝れませんでした。
 今私が直面しているのはあの不安な夜と同じ感じです。あの時は翌日イベントで商品は大いに売れ、その後の、リスナーに商品を売って番組作りをするというかたちの基礎になりました。2021年もまもなく終わります。2020年の年末は特別な年の終わりという感じでしたが、2021年は新しくモノを生み出さなければならない、言い訳の利かない年の終わりを迎えることになります。

編注:ブシロードIRニュース(2021年10月07日)の「第15期定時株主総会 文字起こし」から引用

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兼田 健一郎 株式会社ベルガモ代表取締役社長

かねやん的アニラジの作り方~体験的アニラジプロデュース論~

[筆者紹介]
兼田 健一郎 株式会社ベルガモ代表取締役社長(カネダ ケンイチロウ)
昭和43年大阪府生まれ。法政大学社会学部を卒業、平成3年ラジオ大阪に入社。報道部記者として大阪府警や国会を担当し、事件事故、55年体制崩壊を取材した。東京支社に転勤後一貫してアニメゲームゾーン1314V-STATION の番組プロデュースに携わる。編成企画部長、編成制作部長、東京支社長などを歴任。平成30年退社。日本の新しい音声コンテンツを創造する株式会社ベルガモを創立。

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