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特集・コラム 2026年9月19日(土)19:00

【前Qの「いいアニメを見に行こう」】第68回 続けるということ「魔法少女リリカルなのは EXCEEDS Gun Blaze Vengeance」

(C) NANOHA EXCEEDS PROJECT

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「魔法少女まどか☆マギカ」の13年ぶりの続編「劇場版 魔法少女まどか☆マギカ ワルプルギスの廻天」が劇場で公開中ですね。13年。中学1年生のときに「新編」を見た人が、今や立派な社会人になっているくらいの時間の流れですよ。そう考えるとなかなか強烈……ってな具合に「13年ぶり」をあまりにも強調すると、「外伝とはいえ『マギアレコード 魔法少女まどか☆マギカ外伝』の存在を忘れるんじゃないよ!」とシリーズの強火なファンからの怖いメッセージが届きそうですが、さておき、本当に公開されてよかった。テレビシリーズの放送中から現在に至るまでいろいろと、主に雑誌のインタビューまわりのお仕事で関わらせていただいていますけれども、それはそれとして私も一介の「まどか」ファンですから。魔法少女たちの新たな物語が堪能できて、喜ばしい限りでした。「少女☆歌劇レヴュースタァライト」の古川知宏監督の最新の大きなお仕事でもありますしね(絵コンテ/ビジュアル・コンセプトデザインを担当)。最近は風呂に入るたびに、湯船の端に頭を預けてワス先輩ごっこをしています。ああ、マルグリート!

……なんてな話題から入らせていただきましたが、今回のコラムで取り上げるのは「魔法少女リリカルなのは EXCEEDS Gun Blaze Vengeance」なのでした。「まどか」の新作が公開されているタイミングで、くしくも「魔法少女リリカルなのは」シリーズの最新作も放送中なのですよ。この両作の関係はいまさら説明するまでもないと思いますが。そして13年ほどではないですが、こちらも2018年公開の劇場版「魔法少女リリカルなのは Detonation」から数えて約8年ぶりとなる完全新作アニメ。待ちわびていた人も多いのではないでしょうか。これはもう、アニメ時事ウォッチャーとしては触れざるを得ない(……そんな肩書き、名乗ったことあったか?)。
 「魔法少女リリカルなのは EXCEEDS Gun Blaze Vengeance」では、これまでのシリーズでは描かれてこなかった次元世界の国・瑞穂を舞台に、「侵略種」と呼ばれる外来生物と、その力を手にした「魔人」という特殊な存在を巡る物語が、新たな主人公である久瀬シイナと、その友人である夜海トワのふたりを中心に描かれていきます。
 魔人となった人間は、人の心を失い、凶暴化する。であるにも関わらず、強大な魔人の力をゆえあって継承しながらも、人の心を失うことがなかった貴重な能力者であるシイナと、人体実験によって魔人化された後、人の心を知り、やがて復讐のために「魔人狩り」となったトワ(考えてみればデビルマンと仮面ライダーのコンビですね、この設定。こういう仕掛けが、このシリーズが長年オタク心をくすぐり続けるポイントのひとつでしょうか)。互いの素性を知らぬまま偶然にも出会い、友情で結ばれたふたりが、すれ違いを乗り越えて共闘する。「リリカルなのは」シリーズで繰り返され、愛され続けてきた物語の定型が、今回もキャラクターと舞台を変えて再話されます。その様子をかつての主人公であった高町なのはとフェイトちゃん(拙者、大好きでござる♡)が遠巻きに見守るのですわ。尊い。
 シリーズを続けるというのは難しいものだなと思います。とりわけ、キャラクターの背負った問題が解決したあとでも続けるのは難しい。葛藤や対立の構図がなければ、少なくとも長編は作りづらい。そのときどうするかといったら、キャラクターを成長させて新たな問題を発生させるか、新キャラを投入するしかない。でも、どちらも大本のシリーズでキャラクターを好きになった人からすれば、求めていないものになりかねないわけですわね。キャラクター性が変化してしまったら、それはもう同じキャラクターとは感じられないし、新キャラが出れば以前からいたキャラの出番は減る。
 アニメが卒業するものではなくなった結果、作り手のやる気とファンの需要があればシリーズはどこまでも続く。それはつまり、あらゆる作品が「ガンダム」への道を歩むことになる、みたいな話。となると、どこかで「機動戦士ガンダム」のあとで「機動戦士Zガンダム」が作られたときと同じ問題に、作り手もファンも向き合わなければならなくなる。
 最近この「Zガンダム問題」みたいなことを、いろいろな作品について取材したり、原稿を書いたりする際に考えることが多いわけですが、「魔法少女リリカルなのは EXCEEDS Gun Blaze Vengeance」はそこのところを絶妙なバランス感覚で乗り切っているように私には感じられるわけです。時間は前に進める。新しい設定を投入する。それでも前作までのキャラクターたちを大きくいじらない。物語の主軸は新キャラにする。新キャラの物語に前作からのキャラクターはそこまで大きく関わらせないが、さりとてまったく無関係というわけではなく、適切な距離感を保ち続ける。その上で、前作のキャラにも見せ場をちゃんとセッティングする。研究対象として実に興味深い。ぜひ他のみなさんにも、こんな問題意識でこの作品を見て、考えてみてほしいと思う次第ですわ。集合知で取り組もうぜ、「Zガンダム問題」。

話を戻して、もうちょっと中身の話をしますけれども、ここまでのところで触れてないみどころといえば、今作で最強の悪役であるところの魔人・篠宮マナ。ひとことでいえば「バットマン」に出てくるジョーカーの女性版……って、それはハーレイ・クインじゃないのかと思いもするのだけれども、ジョーカーの方がしっくりくるんだよなぁ。デザイン的にもちょい近いとこあるし(髪の色の雰囲気だけか)。ともあれこのキャラ、エキセントリックな感情表現に、上坂すみれさんの繊細な怪演がマッチしていて、存在感が抜群。堂々たるラスボスっぷり。このキャラだけでも見る価値あります。
 そして11話。そんなマナとシイナの大激突&なのはとフェイトの大暴れがたっぷりと尺をとって描かれるバトル回で、これがいいんですよ。2000年代の半ばから2010年代にかけて、俺たちアニメファンはこういうアクションが好きだったんじゃないか。「機動戦士ガンダムSEED」の作画がいい回みたいな。その正しい継承者って感じ。近年の超絶バトルアクションのスタイルとちょっと違う。しみじみと興奮しましたね。1話からちゃんと見るべきものではありますが、とにかくまず作品の大トロの部分だけを味わいたいと思うのなら、いきなりこの回から見てもいいかも。見ないよりはその方が全然マシなので。そしてこの回だけでも、「Zガンダム問題」の美しい解答のひとつが示されているように私なんかは思ったりするわけよ。そういう意味でも、見てほしいですね。

前田 久

前Qの「いいアニメを見に行こう」

[筆者紹介]
前田 久(マエダ ヒサシ)
1982年生。ライター。「電撃萌王」(KADOKAWA)でコラム「俺の萌えキャラ王国」連載中。NHK-FM「三森すずことアニソンパラダイス」レギュラー出演者。

作品情報

魔法少女リリカルなのは EXCEEDS Gun Blaze Vengeance

魔法少女リリカルなのは EXCEEDS Gun Blaze Vengeance 69

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