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特集・コラム 2026年2月14日(土)19:00

【数土直志の「月刊アニメビジネス」】劇場アニメ2025年興収過去最高、鍵は映画館のライブ会場化

(C)ヒプノシスマイク -Division Rap Battle- Movie

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■2025年劇場アニメ、興行収入が過去最高を大幅更新

1月末に映画製作者連盟が、2025年の国内劇場興行の概要を発表した。年間総興収2744億5200万円は過去最高だ。
アニメ映画に限っても興行収入10億円以上の14作品合計で900億円を超える。10億円未満の映画も足せば1000億円付近になるだろう。これは日本動画協会が発表する22年の邦画アニメ興収過去最高785億円を大幅に超える(*注)。そして国内映画興行全体の3分の1以上を邦画アニメが稼ぎだしたことになる。
 「劇場版『鬼滅の刃』 無限城編 第一章 猗窩座再来」「名探偵コナン 隻眼の残像」「チェンソーマン レゼ篇」といった興収100億円超のメガヒットが記録を牽引した。3作品だけで興収は643億円だ。

[2025年度 興収10億円以上作品]
1.「劇場版『鬼滅の刃』無限城編 第一章 猗窩座再来」391億4000万円
2.「名探偵コナン 隻眼の残像」147億4000万円
3.「チェンソーマン レゼ篇」104億3000万円
4.「映画ドラえもん のび太の絵世界物語」46億1000万円
5.「機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-」36億2000万円
6.「劇場版 忍たま乱太郎 ドクタケ忍者隊最強の軍師」33億5000万円
7.「映画 ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」26億4000万円
8.「クレヨンしんちゃん 超華麗!灼熱のカスカベダンサーズ」23億6000万円
9.「劇場版 呪術廻戦 『渋谷事変 特別編集版』×『死滅回游 先行上映』」20億9000万円
10.「劇場版うたの☆プリンスさまっ♪TABOO NIGHT XXXX」19億8000万円
11.「劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク」15.0億円
12.「『もののけ姫』4Kデジタルリマスター」12億8000万円
13.「映画キミとアイドルプリキュア♪ お待たせ!キミに届けるキラッキライブ!」12.0億円
14.「KING OF PRISM -Your Endless Call- みーんなきらめけ!プリズム☆ツアーズ」11億8000万円
*一般社団法人 日本映画製作者連盟2026年1月発表「全国映画概況」よりアニメ映画を抜粋

■インタラクティブ映画で成功「ヒプノシスマイク」と男性アイドルアニメ

ただテレビシリーズからスタートした漫画原作の作品のメガヒットに目を奪われがちだが、25年のヒットからは他にも近年の潮流を見つけることが出来る。
 まず25年で注目したいのは、25年2月21日に公開された「映画 ヒプノシスマイク -Division Rap Battle-」である。興収26億4000万円はTOHO NEXT配給のODS興行で過去最高だ。
 精神に干渉する特殊マイク「ヒプノシスマイク」を手に覇権を争うラップチームの音楽バトルを描くが、ゲームやテレビシリーズなどの世界観、ストーリーはさほど描かれず、ほぼ楽曲だけで構成されている。特徴は観客が2チームごとの対決の勝敗をスマホアプリを通じて複数回投票することだ。結果次第でストーリーが変わっていく。観客参加型映画はこれまでもあったが、興行で成功したのは「ヒプノシスマイク」が初であると、米国の映画業界誌バラエティでもとりあげられた。

「ヒプノシスマイク」の成功は、勝ち抜き型の対決とインタラクティブなシステムを組み合わせたことだ。インタラクティブ型のストーリーは選択肢がたくさんあるように見えるが、実際は多数決というシステム上、限られた少数のストーリーが選ばれやすい。
ところが本作では地域代表チームとのストーリーにより、映画館ごとに結果が大きく異なった。製作・配給側もストーリーの違いをうまくアピールできた。

しかし、それ以外にも現在の日本アニメならのカルチャーも見逃せない。10億円超えの邦画アニメには本作以外に、「劇場版うたの☆プリンスさまっ♪TABOO NIGHT XXXX」「KING OF PRISM -Your Endless Call- みーんなきらめけ!プリズム☆ツアーズ」と男性アイドルをコンセプトにした2作品が入っている。
 こうした作品は熱心なファンがたびたび劇場を訪れる。観客が声あげる応援上映も活発に行われてきた。映画であると同時に、音楽ライブにも似ている。ファン参加の「ヒプノシスマイク」は、こうした映画館のライブ化の延長線に誕生した。
男性アイドル以外でも、25年には「劇場版プロジェクトセカイ 壊れたセカイと歌えないミク」や「映画キミとアイドルプリキュア♪ お待たせ!キミに届けるキラッキライブ!」といった音楽ライブを意識した作品がヒットしている。

■入場特典から劇場編集版まで

映画興行のライブ化は音楽だけではない。25年のもうひとつのサプライズは、「機動戦士Gundam GQuuuuuuX -Beginning-」の大ヒットだ。25年1月30日から上映された本編は、25年4月からテレビ放送・無料配信されるシリーズの数話を編集したものだ。数カ月待てば無料で見られる映像のために多くのファンが劇場に足を運ぶ。「劇場版 呪術廻戦 『渋谷事変 特別編集版』×『死滅回游』先行上映」も同じだ。
 これらだけでなく、昨今はテレビ放送前の作品の冒頭を劇場編集版として先行公開することが増えており、興行も好調だ。あえて映画館で観るのは、他のファンと同じ空間を共有することや、いち早く盛り上がるイベント要素が大きいとみていいだろう。

劇場興行のライブ感、イベント化は、劇場アニメ公開で定着した特典配布にもみられる。アニメ映画の先着特典は1970年代から存在したが、それはファンへの感謝、おまけ的な位置づけだった。
 しかし現在は特典が何種類もあり、上映期間中に頻繁に入れ替わる。配られるのは書き下ろし小説・漫画や設定集といった豪華なものも多い。こうした特典は、すでに鑑賞済みの観客のリピートも狙っている。
 かつてならファン心理を利用した「えげつない商売」と批判されたかもしれない。しかし、実際は大きな批判がおきず、むしろ特典を手にするため何度も積極的に映画館に足を運ぶファンが多い。
 何度も見ることがひとつのエンタメのかたちなのだ。新たな特典投入は、映画をリピートするための理由をあたえる。むしろファンの多くがそれを望んでいる。

■映画鑑賞プラスの満足感 ライブ化する劇場

映画興行における近年のアニメの成功は、アニメの大衆化で説明されることが多い。たしかにそれは重要な要素ではあるが、アニメと実写邦画や洋画など他のジャンルとは、観客が映画館で求める体験が異なることも大きい。その違いが国内興行の3分の1という大きな市場を生み出している。
 「アイドルアニメ」「シリーズ編集版」「劇場特典」「何度も鑑賞するリピート客」。それらが示すのは、映画館に行くのは単に映像を見るためではないプラスアルファのライブな体験への期待だ。それはアーティストのライブコンサートやテーマパークに行くのと近い。そう考えれば、1500円から2000円程度のチケット代は2度、3度行ってもむしろ割安で手近なエンタメなのである。

*映画製作者連盟の数字は作品ごとの集計で、12月以降公開作品などを次年度に持ち越す。一方で日本動画協会は1月1日から12月31日までの期間で集計するため数字にややずれがある。

数土 直志

数土直志の「月刊アニメビジネス」

[筆者紹介]
数土 直志(スド タダシ)
ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。国内外のアニメーションに関する取材・報道・執筆、またアニメーションビジネスの調査・研究をする。2004年に情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立、16年7月に独立。代表的な仕事は「デジタルコンテンツ白書」アニメーションパート、「アニメ産業レポート」の執筆など。主著に「誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命」(星海社新書)。

作品情報

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