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特集・コラム 2026年4月16日(木)19:00

【数土直志の「月刊アニメビジネス」】Netflixオリジナル「超かぐや姫!」はどう誕生したのか? 企画・山本幸治氏、山下清悟監督が語る

Netflix映画『超かぐや姫!』 Netflixにて独占配信中

Netflix映画『超かぐや姫!』 Netflixにて独占配信中

(C) コロリド・ツインエンジンパートナーズ

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2026年1月22日にNetflixで独占配信をスタートしたオリジナル長編アニメ「超かぐや姫!」が一大ムーブメントを作りだしている。
 ひとり暮らしの女子高校生・彩葉は、電柱から現れた謎の少女「かぐや」とひょんなことからインターネット上の仮想世界”ツクヨミ“でライブ活動を始める。ライブは成功するもののやがてかぐやは月に帰ることになり……。やがて明かされる真実とは? 魅力的なキャラクタービジュアルにボカロPによる数々の楽曲、共感を呼ぶドラマが視聴者の心を掴んだ。

作品の魅力の一方で、ヒットに至った仕組みも関心を集めている。配信開始前後からネットの口コミで話題が盛り上がり、26年2月20日からは19館1週間限定で劇場上映をスタート。これがチケットを取れないほど人気に。その後拡大上映に進み4月7日の段階で興行収入が17億円を超えた。ネットで見られる作品が、なぜ劇場でも大ヒットするのか。
 「超かぐや姫!」の企画からの成り立ちとヒットの秘密について、企画・プロデュースを担当した制作会社ツインエンジンの山本幸治氏、そして山下清悟監督にお話を伺った。


[企画・プロデュース 山本幸治氏インタビュー]

■常に予想を数倍上回る反響が

数土直志(以下、数土):「超かぐや姫!」が大ヒットしています。大きなヒットだけでなく、作品の広がりかたも新しく、それを伺わせてください。最初にバズっているなと気づいたタイミングはありますか?

山本幸治氏(以下、山本):リリース前に出たミュージックビデオやXのフォロワー数、YouTubeの チャンネル登録者数が予想の数倍というのがまずありました。配信開始が次の大きな山となり、劇場公開発表がまた大きな山、そのたびに、こちらの期待する何倍も反響があって喜んでいます。

数土:劇場での盛り上がりはどう捉えていますか?

山本:最初にチケットがなかなか取れなかった時は、特に熱量の高いコアなファンが多かったと思います。Netflixで観たお客さんが来てくれる実感もありつつ、これを機にNetflixに加入して観てくれるオタクな人もいる。僕らが見ている限りでは、新しいお客さんがNetflixに入るきっかけにもなっています。

数土:これまでスタジオコロリドからはNetflixオリジナルで2作品、「雨を告げる漂流団地」と「好きでも嫌いなあまのじゃく」がありました。

山本:劇場公開予定の映画だった「泣きたい私は猫をかぶる」がコロナ禍の影響で上映が叶わず、Netflixで独占配信されました。これをきっかけにNetflixと共同制作契約を結び、「超かぐや姫!」もその中の一作です。

数土:これまでの作品は、どちらかといえば全年齢向け、ファミリーキッズ向けな印象でした。「超かぐや姫!」は若者向けにキャッチーなイメージですが、この企画はどういった経緯で始まったのですか?

山本:「泣き猫」をきっかけに、Netflixとオリジナル作品を一緒にやろうと決めて、3作目が「超かぐや姫!」です。これまでと方向性を変えたというよりも、それぞれの作品で打席に立つ監督がいらっしゃって、それぞれの個性がでていると思います。1本目が石田裕康監督で、2本目が柴山智隆監督、3本目が今回の山下清悟監督です。それぞれ企画の狙いがありますが、コアな層へのアピールを強めるあまり、一般層が入りにくくならないことは、絶えず意識しています。山下さんは最先端ビジュアルを体現する人で、今回は仮想空間などのビジュアルも含め、山下さんの味が出ています。

■なぜ山下清悟監督だったのか

数土:今回の山下さん、柴山さんも、石田さんもそうでしたが、監督が社内スタッフであることを重視しているのですか?

山本:社員監督にこだわっているわけではないです。企画当時はまだ山下さんが代表である株式会社スタジオクロマト(ツインエンジンのグループ会社 / 2024年3月設立)ができる前だったので、当時は外部の人という意識がありました。また、「薄明の翼」といったポケモンのショートアニメを作った時も、グループに所属されていませんでした。
 ツインエンジンでは当初からひとつのスタジオに複数のラインを持つといったことをせず、それぞれスタジオの個性、そこに中核クリエイターがいるという戦い方をしています。各スタジオのメインスタッフのやりたいことや強みを顕在化して見つけることを重視しています。スタジオコロリドはグループのフラッグシップですけど、山下さんがやる仕事は微妙に違うので、分派する形で山下さんのチームを作りました。山下さんのチームは、実際にすごい人たちが集結しています。

数土:長編やシリーズのキャリアのない山下さんを監督に起用するのは大胆でした。

山本:今のアニメ業界ではテレビシリーズで経験を積んで実績を出して初めてオリジナルの監督ができるというように、オリジナルがキャリアステップのゴールのようになっていますが、私はそうは考えていないんです。現場のコントロール、段取り、人を連れてこられる能力、この人が言うならやろうというベテランだからできることもありますが、監督として原作ものを数多く手がけてきたことはオリジナル作品において本質的には重要ではありません。それですと一番作品を作るべき時期に作品を作れているか、怪しいと思うんです。山下さんはまさに今が一番旬なんです。

Netflix映画『超かぐや姫!』 Netflixにて独占配信中

Netflix映画『超かぐや姫!』 Netflixにて独占配信中

(C) コロリド・ツインエンジンパートナーズ

数土:アイドルアニメ的な作品はシリーズから始まることが多いですが、「超かぐや姫!」が長編としてリリースされた理由は? 「漂流団地」も「あまのじゃく」も長編でした。

山本:山下さんには当初から今回はNetflix映画という前提でお話していました。日常描写も含めてキャラクターを高い解像度で描写する山下さんのスタイルは本来的にはシリーズ向きなんですよね。1週間ごとにファンがちょっとずつ増えていく、みたいな。それを今回はぐっと1本にまとめているので、彼の得意とするキャラクター描写は少し抑えられています。ただ長編であることで実現できたこともあるでしょうし、結果として、今回はこれが良かったなと思います。

■オリジナル作品を作る意味

数土:いまオリジナルとの話がありました。昨今アニメ業界はオリジナル長編の苦戦が話題になっていますが、山本さんがオリジナル作品にこだわる理由は?

山本:僕はオリジナル作品にすごくこだわっています。オリジナルを作り続けられるための座組やスキーム作りを最優先にして戦略を立てています。すごい数字が出ている「鬼滅の刃」や「呪術廻戦」は原作を再現する作品です。もちろんそういったアレンジをするのが上手いアニメクリエイターの力もありますが、それとは違う力を持っている人もいます。僕は自分のグループに集まっている企画を作れるクリエイターの才能を生かそうとしています。理想としては、ラインナップの半分程度をオリジナル作品にしていきたいです。

数土:オリジナルですと制作期間や考えだす能力、求められる負担は大きいですよね。

山本:特にクリエイターの負担は大きいですね。企画が実現しないことも多いですし。ヒットしたら報われますけど、ヒットしなかった時のリスクもあると思います。

数土:山本さんは企画プロデューサーですけれど、作品を決めるときのいいアニメの条件は何だと思いますか?

山本:いいアニメとは、解像度の高いキャラクター描写と定義付けられると考えています。山下さんは自分で描く前提でキャラクターから作っているので、解像度と純度の高いキャラクター描写ができています。純度がありながらマーケットセンスも兼ね備えていて、アニメ化を前提に多少緩めに原作を想定して、演出家として描く時に原作者である自分と対話しながら、さらに解像度を上げている。これはオリジナルでしか起きない。もちろん、宣伝や企画、ビジネスも重要な要素ではありますが、今回の最大の勝因はそこにあったのではないかと思います。

数土:作中でもハッピーエンドという言葉が出てきますが、それは意識しているんですか?

山本:最初から山下さんはそう言っています。セオリー的にはお客さんの視聴感を想定して、途中重い展開を入れないと後から盛り上げられないって思いがちなんです。それに対して山下さんはもうちょっと先を読んでいます。シナリオの時にも何度か「これちゃんと(視聴者の感情が)高まりますかね?」 と指摘しました。シナリオ論だけで語ると、みんな同じこと言うと思います。でも山下さんは解像度の高いキャラクター描写で絶対クリアできるという自信を持っていた。僕は山下さんに賭けると決めていたので、お任せしました。そこをちゃんとやりきれたことが重要だと思います。

Netflix映画『超かぐや姫!』 Netflixにて独占配信中

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(C) コロリド・ツインエンジンパートナーズ

数土:今回はミュージカル、ライブアニメのジャンルにも入るかなと思いますが、そのための演出も意識されているんですか?

山本:今回はライブシーンの表現そのものが、すごいドラマになっています。山下さんは優れたアクションアニメーターでもあるのですが、「アクションの時にドラマが動いてないと意味がない」と一貫して話していました。「超かぐや姫!」においては、ライブがアクションであり、ライブシーンは単に歌のシーンでなくて、ドラマを動かすためのシーンとなっている。最初からドラマとして曲を捉えていたんです。キャラクターの成長を描く構成の重要な要素に音楽を捉えていた。いわゆるミュージカルとも違うし、アイドルものともまたちょっと違うと思っています。

数土:ストーリーとアクションと音楽がシームレスにつながっているのですね。

山本:そこを分けないのが、山下監督のすごい才能ですね。

■「漂流団地」と「あまのじゃく」が切り拓いた道

数土:今回は劇場上映もして、これが大ヒット。小説もコミカライズも同時に出ています。これから商材も相当動くことを考えると、Netflixを中心としたメディアミックスとして新しい形が生まれたのかもしれません。

山本:劇場同時上映をした前2作品も主戦場はNetflixで、配信を重視していました。その作品に関わったスタッフが今回も一緒にやっています。これも大きかったと思います。配信でヒットを作るという前提と決意を共有していましたから。その結果、YouTubeの再生数やノベライズが売れるなど、「超かぐや姫!」のIPが広がりました。Netflixの方々には、二次利用収入を取り込まないとダメだとか、そういうビジネス的な話は一度も言われたことがないですが、ヒットのために何ができるかについてはずっと話しています。

数土:スタジオコロリドは、ここ何年かNetflix とやってきました。そのなかで感じた点はありますか。

山本:今回のヒットはYouTubeやSNSで気になったらすぐワンクリックで、Netflixで見られる状態で多くの人が観てくださって、そこからの口コミ。このフォーマットだからこそ実現できた。劇場上映を先にしていたらそうならなかったかもしれない。Netflixが業界に貢献しているのは、スタジオやクリエイターがやりたいことだけではなく、やるべき挑戦に向けて、一緒になって背中を押してくれているところです。カット数の制限とか、表現上の制約によって企画が曲がることは全然ない。企画成立のために時に本質的ではないことを取り込みながら作らないといけないような制作現場もある中、僕らアニメスタジオが自分たちの出資でアニメを制作するのは、そうしたノイズを排除するためです。そのスキームを可能にしているのは、Netflixのお陰だと思っています。いろいろと厳しいことも言われますし、数字が出ない時に責任を問われるヒリヒリ感はありますので、もちろんぬるま湯ではない。それで成立している挑戦が、今回花開いたのがすごく良かった。そして、これまでの二作品があったからこそ、今回につながっているという実感も強く持っています。Netflixとの契約をして、一緒にオリジナル長篇を作り出す、この連続性の中で「超かぐや姫!」が生まれたのだと思います。


続いて山下清悟監督に本作の企画について、そして今回のヒットがもたらしていることについてお話を伺った。

山下清悟監督

山下清悟監督

[山下清悟監督インタビュー]

■「超かぐや姫!」はいかに生まれたか

数土:まず「超かぐや姫!」の大ヒットをどう捉えているか、から聞かせてください。

山下清悟監督(以下、山下):Netflixでの独占配信ですから、劇場でこんなに多くの人が見てくれているのを含め、全く想像はしていませんでした。

数土:自身で最初にヒットしていると感じたのはいつ頃ですか?

山下:劇場19館での上映が始まって、着席率の数字を見た時ですね。「すげえな」と思いました。公開初日に新宿バルト9で劇場を見学させていただき、人の列を見た時に「これはすごいことになった」と実感しました。作品のために足を運んでくれてる方々がいるんだと実感しました。

数土:なぜこれほど多くのお客さんの支持を獲得したのでしょうか?

山下:まずは絵だと思います。長編作品でこういうど真ん中に可愛いというものは意外とないんです。あとはジャンルが今までにありそうでなかった。ボカロPの方々を起用したアイドルものや仮想空間は、企画段階だとすごく良さそうとなりますが、なかなか実現までは難しいんです。「超かぐや姫!」は真っすぐな企画を最後まで丁寧に実現したことで結果的に競合がいなかった。

数土:企画の最初のきっかけは?

山下:フジヤマルリという当社(スタジオクロマト)の社員です。ただこの企画の完成形に至るまでにはかなり会議を重ねています。突然出たというよりは、どういう状況で今何が求められ、僕がどういうものをやりたいかが共有された状態で、今までの要素を全て組み合わせた企画を考えました。企画書にはその時点でやりたいことの全部が入っていました。ドラマや仮想空間、キャラクターの正体。それまでに途中で開発した仮想空間ネタの企画はAIの暴走みたいなありがちなものになりがちだったのですが、かぐや姫が組み合わさった瞬間に全部吹っ飛び、ハッピーエンドに向かう明るい話の可能性が見えて、一気に企画が通りました。

数土:仮想空間、VR、あるいはボカロ音楽があると、通常はどうしても、そういったキャッチーな面に企画が引っ張られますが、今回はストーリーもとても面白く、かつハッピーなのがとても良かったです。

山下:最近は暗い作品が多くてハッピーな作品はあまりなかったんです。僕はちょっと不思議なことが起きる青春ものをバッドエンドにするのはやめてくれと思っていて、観ていてストレスがかかる作品は回避したかった。彩葉とかぐやとのバディもの、その上でヤチヨはギミックがあるキャラクター。そして、かぐやが月に帰った後に真実が明かされるというストーリーです。

Netflix映画『超かぐや姫!』 Netflixにて独占配信中

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(C) コロリド・ツインエンジンパートナーズ

数土:かぐやはすごくポジティブで、彩葉はなんでも出来るスーパー少女。これらのキャラクターは、どのように考えられたのでしょうか?

山下:かぐやは最初から結構人気がありました。ただ彩葉が何を考えているのかわからない、こんな恵まれてるのになぜ悩んでいるのか、という意見があり、彩葉がハイスペックスーパー少女と受け取られていたのは意外でした。観客が抱く感情移入のために、キャラクターの悩みは普遍的であればいいと思ってます。でも、逆に彩葉が引っ込み思案で、かぐやと出会うことでみんなとコミュニケーションが取れました、という話だったら、成長の軸は全くずれてしまう。彩葉は最初から何でもできるし、コミュニケーションもできる、でもそれが人生の中心じゃない、誰かの意思によって頑張るんじゃなくて、自分の中から願いを見つけることが重要であるというメッセージを伝えたかった。表面上はうまくいってそうでも、そこにはあまり意味がないと思うからです。

■スタートからツインエンジン、Netflixから熱い反応

数土:制作サイドで練られた企画を見たツインエンジン、Netflixの当初の反応は?

山下:評判は良かったです。基本はバディもの、そこにライブもあるし、アクションもある。反対された記憶がないです。そして、ツインエンジンの山本(幸治)さんが「これいけます」と企画を通そうと動いてくれました。勢いがあることが伝わったと思います。

数土:長編映画なのですが、キャラクター推しが出来るのはシリーズにも向いた内容かなとも思いました。

山下:山本さんに企画を出した時も、「これシリーズですよね」と言われて。「いや、長編映画として作っています」と話しました。もともと僕がずっとシリーズをやりたいと話していたのもあります。ただツインエンジンからは長編映画をやりたいとの意志を感じていましたので、じゃあシリーズっぽいものを長編映画にして成り立たせてみようと考えました。

数土:長編映画になって良かったことは?

山下:密度が高くなったことですね。一本に全部が入っているのがいいところです。作画クオリティの面でも、全カットをうまく作り終えることができた。長編映画にしたメリットをすごく感じます。あとは、今となっての実感ですが、映画の興行としてダイレクトに利益になっていくところも絶対あります。ビジネスでの強みを感じました。
 僕はシリーズでしか成功する道はないってずっと思っていたからびっくりしています。事前にXでLive2D動画を出すことや、配信後にrayのMVを出せたことも含めて、疑似的にシリーズと同じような売り方ができたので、今はシリーズが絶対っていう気持ちはなくなりました。

数土:山下監督はこれまでオープニングや短編を多く手掛けるなかで注目されていたので、それがいよいよ長編映画か、という周囲の期待もあったと思います。

山下:通常であれば、原作付きアニメの監督やるとか、演出を持ったりとかのキャリアパスがあると思いますが、今回はいきなりオリジナルの長編映画に挑戦することになりました。僕は一足飛びにやることでやる気を出すタイプなので、プレッシャーはあまりなく、楽しみな気持ちが大きかったです。もちろん不安もありましたし、カット数もめちゃくちゃ多いので単純に大変ではありました。

数土:本作の制作体制はスタジオコロリドとスタジオクロマトの共同ですが、実際の仕組みは?

山下:クロマトは5人の会社で、制作機能はあません。動画や仕上げといった制作回りもほとんどはコロリドです。制作において主にプリヴィズを含めたプリプロを行う会社としてクロマト、実制作はコロリドという住み分けです。

■新しい企画はどんどん浮かんでいる

数土:「超かぐや姫!」の前にも企画はあったとの話ですが、常に企画は持っておられるんですか?

山下:その時点ではそれほど数はなくて、むしろかぐやを作ってる間に新しい企画がどんどん浮かびました。やりたいものが次々に浮かんでくる。ただ本当に優先順位が高いのはいまはひとつです。それをどうかたちにするかを考えている段階です。

数土:最近話題になっている、原作付きの作品がいいのか、オリジナルがいいのか、という点についてはどう考えていますか?

山下:僕はオリジナル作品をやりたいという思いがありますが、原作を翻案するなかでオリジナリティを出す方もいらっしゃるので、どっちがいいってことはないです。原作付き企画はやはり一定の数字が見込めるという感覚はあります。純粋にビジネスとして考えればオリジナルを作るメリットは決して高くありません。
 ただしアニメはマンガと企画の立てかたが全く異なるんです。アニメは時間軸があるので、アニメにおける最大の快感は、アニメ原作でないと出ないと思っていますし、だからこそアニメのオリジナルを絶やしてはいけない。これは、クリエイターの地位を守るとか、アニメ業界の将来の話とは別です。アニメでもたらされる感動の最大値は、アニメオリジナルにこそ宿るものだと僕は信じています。

数土:感動の最大値とは?

山下:やはり動きです。芝居と動きに集約されます。今回の「超かぐや姫!」は、すごく特殊な作り方で、映画の不文律、あるいは漫画の不文律、ストーリー構成上必要とされるものを、かなり意図的に外しています。どこまで行ってもキャラの芝居や表情の動きが感動に直結するように作っているんです。それは漫画だと表現することが難しい。これは漫画が劣るのでなくて、映像として体験する時にアニメのほうが強さが出るためです。

Netflix映画『超かぐや姫!』 Netflixにて独占配信中

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(C) コロリド・ツインエンジンパートナーズ

数土:作品のなかで音楽が重要な役割を持っています。あとは音楽アニメからのヒットが昨今多いのですが、意識はされましたか。

山下:それは意識しています。音楽ものであることは企画段階でありました。ライバーや仮想空間と紐付くのなら文脈的にボカロ音楽が合うと自然に決まっていきました。全編通して曲が流れる時に、文脈を持ったジャンル感のアーティストさんに集まってもらって一曲ずつ提供してもらうのが強いんじゃないかと考えました。

数土:最初にヒットの理由に絵をあげられてましたが、キャラクターデザインの決め手は?

山下:コロリドで作るのが決まった段階で、デザインは社内の信頼がおける方に頼めるといいよねとプロデューサーと話しました。その中でVTuber的なデザインならへちまさんしかいないと自然に決まりました。絵柄が最新であることと、華があることが一番重要でした。衣装もこだわりがある方で知識もすごいです。総作監もやってもらいましたが、すごく洒脱な線でどんどん上手くなっていく、キャラに対しての愛と思い入れがとても強いんです。
 現実パートの永江さんもキャラクターデザイナーとして稀有な才能です。本当に繊細で柔らかい感じの絵を描かれる人です。女性的な要素、少女マンガみたいな雰囲気、清潔感がぴったりだった。初稿が上がってきた時にめちゃめちゃテンションが上がりました。

数土:最後に「超かぐや姫!」を作り切った後、今後につながる何か、掴んだものはありますか?

山下:今回あらゆる要素を詰めこんだので、掴んだというより次が難しいという感覚になってます。もちろん同じことはできませんし。企画は、いっぱいあるんですが、次にまたオリジナルの作品をつくるなら、全然別のアプローチをしないといけない。ちょっと考えないといけません。掴んだというよりはより今後が大変になったな、と。かぐやによって逆にハードルが上がった感覚です。


最後に日本のNetflixでアニメ作品を統括するコンテンツ部門 ディレクターの山野裕史氏からも本作の大ヒットについてコメントをいただいた。配信からアニメの大きなヒットについての喜び、そしてこれからも引き続きアニメの作り手をサポートしていくことなど、今後のNetflixにおけるアニメの展開からも目が離せなさそうだ。

「Netflixオリジナル作品からのヒットには、まずは本当に嬉しい、ありがたい、という気持ちが大きいです。弊社のサービスで何回も見ていただいている方が本当に多く、それが作品評価につながっていることに対しても嬉しく思います。
 包括契約を経て複数作品でご一緒するなかで、どの企画をやっていくか、という時にツインエンジンの山本幸治さんから最初にこの企画を話していただいたのが2022年でした。初めにこのお話を伺った時は、随分コアの方にぐいーっと来たな、という印象でした。ただ脚本や中身を拝見させていただくと、分かりやすいテーマがあってハッピーエンドに連れて行ってもらえる。竹取物語がベースにあって、ボカロPの方々の楽曲ですとか、キャラクターのビジュアルといった本質的なところが、すごく面白そうということで、ご一緒させていただきました。
 当初の包括契約時からずっとお話させていただいていたのが、配信をファーストとしたヒット。「雨を告げる漂流団地」「好きでも嫌いなあまのじゃく」ではNetflixで配信と劇場公開を同時にやらせていただきましたが、今回は初めて配信ファーストとなり、そこで大きくファンのみなさんにご支持をいただき、IP が広がりました。
 今回、山下監督をはじめ、クリエイターのみなさんが、本当にすごいクオリティで、どんどん新しい挑戦をされていて、一緒に走りながら、ワクワクしています。これからも元気な日本のアニメの作り手を引き続きサポートさせていただけたら嬉しいです」

数土 直志

数土直志の「月刊アニメビジネス」

[筆者紹介]
数土 直志(スド タダシ)
ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。国内外のアニメーションに関する取材・報道・執筆、またアニメーションビジネスの調査・研究をする。2004年に情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立、16年7月に独立。代表的な仕事は「デジタルコンテンツ白書」アニメーションパート、「アニメ産業レポート」の執筆など。主著に「誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命」(星海社新書)。

作品情報

超かぐや姫!

超かぐや姫! 140

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