2026年5月29日(金)19:00
【数土直志の「月刊アニメビジネス」】「実写VSアニメ」 世界のフロンティアはどこにある

「ゴジラ-1.0」の先の世界を描く「ゴジラ-0.0」が11月3日公開(北米では11月6日公開)
(C)2026 TOHO
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大きくなった邦画アニメの存在感
昨今、映画界でのアニメのプレゼンスが拡大している。2025年の映画興収の全体の1/3以上、邦画だけなら半分近くに迫る。邦画実写の年間公開本数が700本近く、邦画アニメの100本程度も考えると、両者の差の大きさとアニメの存在感に驚かされる。
映画だけでなく、テレビ番組も同じだ。現在、日本で制作されるテレビアニメのほとんどが海外の配信会社、放送局に購入され、世界のファンに届けられ巨大なビジネスを築いている。実写番組の海外販売は、本数も金額も大きくない。
ただ「実写」と「アニメ」のビジネスの大きさを比較することは、あまり意味はない。同じ映像作品であるが、2つのジャンルはビジネスモデルもファンの接しかたも違うからだ。
なかでも大きいのは、ユーザーの消費のかたちだろう。実写では多くの映画が映画それ自体で作品として完結する。つまり映像単体でのビジネスだ。
一方で大ヒットアニメの多くは、映像を中心に巨大なカルチャーマーケットを築いている。映像からキャラクター商品やマンガの購入、イベント、SNSでの交流などに広がっていく。アニメでは、これら全てを包み込んだ世界が作品なのだ。マーケットが大きくなる理由でもある。
ただ、こうした作品構造、ビジネスモデルの違いを理由に、実写作品がアニメのように大きなビジネス展開が出来ないと考えるのは早計だ。
実写が海外で広がらない理由は本当なのか
昨年、経済産業省が明らかにした「エンタメ・クリエイティブ産業戦略」は、2024年に2.1兆円の海外の日本アニメ市場を10年で3倍の6兆円にするとしている。一方の実写映像の目標は1000億円から5000億円と倍率こそ大きいが金額はささやかだ。あまり期待されていないのかもしれない。
しかし、すでに全世界にネットワーク張り巡らし、作品が送りこまれているアニメがここからさらに市場を3倍にするのは意外にハードルが高い。
むしろ世界では、まだ知らない人、見たことがない人が多い、国内実写映画・ドラマに伸びしろ、成長の余地があるのでないか。
そんな話を僕はたびたびするのだが、賛同されることはあまりない。とりわけ実写の現場に近い人ほど、実写の将来に対して悲観的なことが多い。
実写映画が成長できない理由としてこんなことが挙げられる。
・アジア人主体の映像はアジア以外で馴染みが薄い
・制作スタッフの層が薄く、未成熟
・海外公開や配信の弱さ、可能性の低さ
主要な登場人物がアジア系ばかりの実写は、海外で馴染みが薄くヒットが難しいと言われてきた。アニメは無国籍なキャラクターデザインで国境を越えやすいと。しかし、韓流ドラマ、映画の世界的なヒットが、これを崩すことに成功した。
そして日本の実写映像のスタッフの水準は決して低くない。たとえば「今際の国のアリス」「新幹線大爆破」などは、世界的にヒットして評価も高い。これらが大手配信プラットフォームの豊富な資金を得た特別なケースと説明されることは多い。しかし、重要なのは環境が整えば、結果をだせる事実である。昨今の国際映画祭での日本の若手監督の台頭も、映像業界のレベルと無関係でないはずだ。不足しているのは才能でなく、機会と十分な資金なのだ。
アニメ、韓流の成功は移植できる
ここでもう一度、アニメの成功が浮かぶ。ひと昔は、アニメはコアファンに支持されているが大衆レベルに達しないと言われていた。巨大なニッチとされたアニメは、配信と流通インフラを入れることで世界の大衆層にリーチを広げた。同じことが実写でも可能ではないだろうか。
たとえばアニメのようにマンガか小説を原作にした作品からまず切りこめば、作品が映像を超えた大きな市場につながるのではないか。あるいはアニメだけでなく、韓流が築いたアジアドラマの流通に乗せられないか。
2023年に米国で大きなヒットとなった「ゴジラ-1.0」は、知名度の高いゴジラの題材に、良質の作品、そして全米公開というインフラを得たことでヒットが拡大した。作品の評価に加えて、キャラクター市場への波及も大きい。
現状1000億円の日本映画とドラマの海外市場は驚くほど小さい。だからこそ、次の有望ジャンルは実写なのだ。優れた作品があり、さらに適切なマーケティング、流通経路があれば、ガラスの天井はきっと超えられるはずだ。
数土直志の「月刊アニメビジネス」
[筆者紹介]
数土 直志(スド タダシ) ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。国内外のアニメーションに関する取材・報道・執筆、またアニメーションビジネスの調査・研究をする。2004年に情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立、16年7月に独立。代表的な仕事は「デジタルコンテンツ白書」アニメーションパート、「アニメ産業レポート」の執筆など。主著に「誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命」(星海社新書)。
作品情報

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