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特集・コラム 2026年9月21日(月)19:00

【数土直志の「月刊アニメビジネス」】アニメ産業に影響はあったのか? クールジャパン再考

「アニメエキスポ」会場写真(著者撮影)

「アニメエキスポ」会場写真(著者撮影)

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なぜいま「クールジャパンファンド」

日本政府が旗を振ってきた「クールジャパン政策」が、また注目を浴びている。クールジャパン政策は、日本カルチャーの海外発信を掲げて2010年頃から国が積極的に進めてきた。しかし、近年は「クールジャパン」の言葉は昔ほど聞かれない。
 今年の夏、再びクールジャパンの功罪が話題になったのは、「クールジャパン機構(海外需要開拓支援機構)」の影響が大きい。きっかけは、8月に経済産業省が「クールジャパン機構は統合・廃止を前提に検討」と明らかにしたことにある。クールジャパン機構は9割以上の国の出資により2013年に設立された。当初予定した33年満了を大幅に前倒しする。クールジャパン機構は、クールジャパン分野の海外事業拡大を掲げ約1500億円を投資したが、25年度末には累積赤字が540億円を超えた。残り10年で黒字化できる見込みが薄いとの判断だ。

「クールジャパンファンド」はアニメと距離があった

これがアニメやマンガといったコンテンツ企業に戸惑いを与えている。クールジャパンファンド(クールジャパン機構)がメディアで語られるときに、アニメやマンガの日本のコンテンツ中心と語られることが多い。
 しかし、実際にクールジャパンファンドがアニメ・マンガに投じた資金はイメージほど多くない。もっとも巨額だったのは、今年6月に経営破綻した人工たんぱく質繊維のバイオベンチャーの140億円。さらに中国での大型商業施設110億円、教育コンテンツ配信100億円などが続く。ものづくりや商業、インバウンドが中心だ。世間のイメージとはだいぶ異なる。
 アニメ関係者の間でも失敗事業と語られることの多い海外向けアニメ配信「DAISUKI」への出資は10億円。Tokyo Otaku Modeが10億円。アメリカのアニメ配給会社Sentaiへの出資は37億円と比較的大きいが、これは黒字だったとみられる。周辺事業では米国の映像字幕・吹替のSDIへ75億円、映像製作の金融サポート(つなぎ融資)のジャパンコンテンツファクトリー51億円。
 クールジャパンファンドは、「商業」「ものづくり」「観光」「教育」「エンタテイメント」と非常に幅広いジャンルを扱っており、コンテンツ産業はその一部でしかない。少ない人数でこの広大な領域をカバーしたことに失敗があったのではないだろうか。

海外でのアニメの成功と国家政策

もちろんクールジャパン機構だけが国のコンテンツ振興事業ではない。文化庁が2010年から続ける若手アニメーター等人材育成事業は長期実施することで、現在のアニメ業界の人材育成の喚起につながった。「J-LOP」からスタートした海外展開支援(現地向け翻訳、イベント出展、プロモーション)を活用した関係者の事業への評価はよく聞く。一方で、ほとんど結果を残さなかった産業革新機構が出資した映像企画開発のANEW(All Nippon Entertainment Works)も存在する。成果はそれぞれだが、こうした事業は総合的な産業政策があったというよりも散発的な動きに見える。
 産業規模の成長の高さ、特に海外の急成長から、日本アニメは過去20年近くで大きな成功を収めたと見ていいだろう。もともと海外で人気が高かったが、その規模も、地域の広がりもいちだんと突き抜けた。関連各社の海外売上も大きく伸びたはずだ。
 この期間の行政のアニメ産業(そしてコンテンツ産業)への支援は決して積極的でも、十分であったとは思えない。むしろアニメ産業の成長は業界内側の変革のエネルギー、海外開拓に向けた野心こそが原動力であった。そこに動画配信プラットフォームの登場と急成長という要因が重なった。

コンテンツ産業支援の急拡大は何をもたらすのか

2020年代半ばになって、こうした状況が大きく変わっている。コンテンツ産業の成長ぶりから、国がコンテンツ産業を重点分野のひとつに定めた。アニメ・映画・マンガ・ゲーム・音楽の海外売上を現在の6兆円から2033年までに20兆円にする目標を打ち立てる。アニメは2兆円から6兆円である。
 これに合わせて巨額の予算が計上されている。2025年度の国の補正予算ではコンテンツ振興関連に556億円、経済産業省の「IP360」と名付けられた事業には350億円があてられた。クールジャパンファンドと異なるのはエンタメ5分野にフォーカスしている点だ。
行政や世の中からのアニメ産業への関心の高さには、隔世の感がある。今後はこれまで独立独歩で成長してきたアニメ業界で、巨額の予算をいかに効果的に活用できるのか問われそうだ。
 また資金の大きさばかりに目を奪われがちだが、制度や公共インフラ(グローバルハブの構築)、AIなどに向けて指針や法律整備などの国でしかできない役割が手薄にならないことが大切だろう。

数土 直志

数土直志の「月刊アニメビジネス」

[筆者紹介]
数土 直志(スド タダシ)
ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。国内外のアニメーションに関する取材・報道・執筆、またアニメーションビジネスの調査・研究をする。2004年に情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立、16年7月に独立。代表的な仕事は「デジタルコンテンツ白書」アニメーションパート、「アニメ産業レポート」の執筆など。主著に「誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命」(星海社新書)。

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