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特集・コラム 2018年10月23日(火)20:30

特集「アニメーション監督 湯浅政明の世界」に寄せて

文:氷川竜介(東京国際映画祭プログラミング・アドバイザー/明治大学大学院特任教授)

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●はじめに

東京国際映画祭では2014年から「アニメーション特集」という上映企画を開催する。本年の第31回(10月25日~11月3日)のテーマは、「アニメーション監督 湯浅政明の世界」である。この特集上映は、今年で5回目となる。
 筆者は「庵野秀明の世界」「ガンダムとその世界」「映画監督 細田守の世界」「映画監督 原恵一の世界」と、全5回にプログラミング・アドバイザーとして関わってきた。アイデアや作品候補の提案、オフィシャル印刷物への文章提供などが主な担当である(作家・作品選定は議論を経ている)。自分としては「アニメーションと映画」という場の性質を意識し、「日本のアニメ-ション映画」の特徴が浮き彫りになるよう努力してきた。
 今回の湯浅政明監督特集では、これまで以上に「アニメーション特集」というタイトルの意味が問われると考えている。ここでは湯浅政明の作家性と映像世界の特色を語りつつ、特集上映のみどころを探ってみたい。

●湯浅政明監督作品の特徴

湯浅監督作品の特色としては、日常性を吹き飛ばす破天荒な色彩と動きに充ちた映像の快楽が真っ先に挙げられる。ユニークな「映像で物語る」という点も大きく、「天才」「鬼才」とされる理由もそこにある。「アニメはこういうもの」と決めつけられた壁を粉砕し、イマジネーションの限界を突破するトリックスター的な側面もある。
 だからと言って芸術を極めた不可解なものということでもない。遊園地やカーニバルに近いエキセントリックな世界観で、世界ごとキャラクターが変容する自由自在で不可思議な動きに身をまかせる快楽がある。湯浅ワールドには、人を惹きつける大いなる魅力があるのだ。物語の中で描かれるものも、微細な感情の揺れとスレ違い、下世話な人情、あるいは稚気にあふれた笑いなど人間くさく、親しみがわきやすい。描写の多くは「食」「排泄」「エロス」「死」など「人の営み」の根幹に関連していて、「人間という生き物」の本質と実相がそこから浮かぶ。
 そもそもアニメーションとは「生命を吹きこむもの」という意味の芸術である。本来は止まっているものが自在に動き、平面なのに手前や奥へと被写体が走り出し、固いと思いこんでいた周囲の世界も柔らかく変化し始めて、そこにアニメーションだけが可能とする世界の息吹が宿る。さらに鮮烈な色彩と言葉の洪水、軽快なリズムを刻む音楽が重なることで、疲れて固まりかけていた精神は驚きを取りもどし、あるいはマッサージを施術されたような刺激を受けて柔らかなシズル感を取りもどす。
 心の奥深くまで突き刺さる映像が物語とシンクロして心に作用したとき、ふだん感じたことのない喜び、笑い、哀切などがわき上がる。エンターテインメントの基本が、そこにある。まさに「感情が動く」という本来的な意味の「感動」――そのためのアニメーションを追求し続けている点は見逃せない。
 商業アニメーションの主流からすれば、湯浅監督作品は異端に見えるかもしれない。ところがこの「動く絵で物語る」という姿勢は、映画の基本、アニメーションの基本に位置づけられる。19世紀末に映画が誕生したとき、「動く写真」ということ自体に新しい価値が宿った。ほどなくフィルムの加工によって人が消えたりする「トリック撮影」が発明され、その技法が「動く画」「動く人形」などの「アニメーション映画」を可能にした。そしてトーキー映画の発明でアニメーションと音楽には大きな親和性があることが判明し、相乗効果で人の感情を解放する大きなビジネスチャンスが生まれた。
 湯浅作品には、この「動く画と音楽」の「原点回帰的な快楽」が果汁のようにあふれている。それが他に類をみない瑞々しさと輝きの秘密である。線で囲まれた色ベタのルックは非常にシンプルで、流行のアニメ作品を見慣れた目には、違和感があるかもしれない。だが線と面がシンプルであるがゆえに、刻々と過ぎる時間の中で自由自在に変容していく動きのタイミングやリズムは脳をダイレクトに刺激する。触発された感情が物語と同期したとき、何かが弾けて意識が拡大していく感じがするはずだ。特に音楽とのシンクロはダンスやバレエなど舞踏的な快楽にもつながっていて、まさに映画祭の大スクリーンで観るにふさわしい映像の快楽がそこにある。

●映画祭の上映プログラムについて

まずはメインビジュアルに注目してほしい。湯浅政明監督らしい華やかな色使いであり、キャラクターも映画祭ならではの共演が実現している。
 上映は劇場映画が3本、「DEVILMAN crybaby」は配信作品だが総尺が240分と劇場映画2本分なのでオールナイトで一挙上映、そしてテレビ作品を交えた自選短編集と合計5プログラムとなっている。チケットは10月20日時点で完売しているが、決済されずにキャンセルされた分が出ることもあるというので要チェックだ。それぞれ湯浅政明監督とゲストを交えたトークが上映前後に開催され、「夜明け告げるルーのうた」では新作発表も予定されているという。
 では、各作品についてのみどころを紹介していこう。

アニメハック編集部

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[筆者紹介]
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