「ヤング ブラック・ジャック」加瀬充子監督インタビュー　後編

時代とともに成長していくブラック・ジャック

『ヤング・ブラック・ジャック』第3話場面カット

(C)ヤング ブラック・ジャック製作委員会

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「ヤング ブラック・ジャック」の制作法について、加瀬充子監督に聞くインタビュー。後編となる今回は、話題がさらに展開。若き日のブラック・ジャックを取り巻く舞台となる1970年前後という時代について話を聞いた。

原作は、ベトナム戦争を軸とした70年代前後の時代性を反映している作品となっている。そのあたりの再現性にこだわりはあったのだろうか。

「この時代は、3億円事件も含め、細かいところで色々なことが起こっていて、そのあたりはキャラクターにも影響しています。例えばインターン制度が廃止されて、研修医制度に変わるのですが、主人公のすぐ側にいる舞子さんは第1話ではインターンで、それが4月くらいの話なんですが、6月に廃止になるという話があり、夏から秋にかけて完全に廃止になる。元は、学校を卒業して、その後に1年インターン制度をやって、その後にやっと国家試験が受けられるというシステムだったのですが、彼女に関しては途中で変わったので、第9話以降、研修医になっています。だから自己紹介でも“インターンの”から“研修医の”と変わります」

踏み込んでいるという意味では、原作においては、医学的な部分もかなり詳細に描かれている。アニメではこのあたりをどのように再現するのだろう。

(C)ヤング ブラック・ジャック製作委員会

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「実際に色々見聞も広めたりしました。切れてしまった腕や、出ている骨であったり、色々と……。もうお腹いっぱいというところまで見ました。
実際に人に対する針の縫い方も見ましたすごく早業の先生もいて、その映像を肴（さかな）にご飯を食べたりしました（笑）。あとは、この作品を手掛けるにあたって、いくつか医療もののドラマや映画を見ました。『白い巨塔』はちょうどこの時代より少し前の話なのですが、医療関係で裁判になってしまったものですよね。『ヤング ブラック・ジャック』の中でも、医療に関して『それは殺人罪に問われるぞ』と逡巡（しゅんじゅん）する場面があります。良かれと思って心臓手術をして、死んでしまえば殺人罪になってしまう。そう考えると医療に携わっている人は、常に死と隣り合わせで生きているんだなと思います。患者の家族の想いとも板挟みになり、すごくつらい立ち位置にいる。間くんはそんな世界で生きている。そういった経験を繰り返すことが、彼の成長の中の一部になっていると思います。そこは作品にとっての見どころでもありますね」

さらに、加瀬監督は現代の医療とは、手術器具が全く違うことについても触れた。

「実は、この時代の医療設備があまり残っていないんですよ。博物館に行って見ると、完全に違うものばかりで（苦笑）。きっと間くんが変化していったように、時代も変化していったんだろうと思います。手術室における器械類は、心電図からベッドから点滴から無影灯から全て違いますよ。一番困ったのは、人工心肺です。今のものとも少し違うんです。でも、古いから動かないので、どうやって動くんだろうとみんなで検証したりしました。結果、分からなかったので、今の原理を取り入れて、ここはこういうふうに動くんだろうと予想しながら描写したり……結構楽しかったです（笑）」

(C)ヤング ブラック・ジャック製作委員会

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若き日のブラック・ジャックのドラマとしても、当時の医療の再現ドラマとしても楽しめる「ヤング ブラック・ジャック」。最後に底本となる手塚治虫が描いた「ブラック・ジャック」との違いについて聞いた。

「『ヤング ブラック・ジャック』の間黒男は、『ブラック・ジャック』とはまた別作品だと思ってもらえると嬉しいです。別のキャラではないのですが、時代の違いで表現が変わっているので、『ヤング ブラック・ジャック』の間黒男が成長する様を見守ってもらえればと思います。ただ、どちらのブラック・ジャックも、頑固なくらいに誰かを助けたいという意志は変わりませんので、『ブラック・ジャック』のファンの方にも、ぜひご覧いただきたいなと思います。」