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特集・コラム 2023年10月9日(月)19:00

【明田川進の「音物語」】第74回 外画出身の声優、今のアニメ声優、それぞれの強み

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外画専門の方やナレーターの方などが深夜アニメに出演することが、ある時期から珍しくなくなりました。

少し前、仁(※明田川進氏の息子で音響監督の明田川仁氏)が音響監督をした「アルスラーン戦記」(※テレビアニメ版。2015~16年放送)を見たら、鈴木英一郎さんが担当したナレーションがとても印象的で、立木文彦さんの声を思い出しました。気になったので仁に聞いてみたら、偶然にも立木さんと同じ事務所の方で、リアルな感じでできる方をと探した結果、やっていただくことになったんだそうです。鈴木さんはナレーターの仕事が多い方で、今はこういう方もどんどんアニメの世界に入ってこられているんだなと思いました。

僕がOVA「銀河英雄伝説」の音響監督をしていた頃は、アニメ専門ではない声優が出演するのは今よりも珍しくて、「舞台俳優が声優を?」なんて言われることもありました。会話劇が魅力の「銀英伝」には、相手の芝居をうけながらきちっとセリフが言える人が必要ですから、誰か良い人がいないかと探すなかで、外画専門の方や劇団で芝居をやっている方にたどりつきました。そうした方々を対象に何回となくオーディションをやって、声の芝居がいいなと思った方に収録に来てもらうと、映像にあてたときにメロメロになってしまうケースもなかにはありました。口パクにあわせて演技をするのは特殊な技術が必要なんですよね。最初のうちは、ある程度しょうがないと思ってやってもらい、収録を重ねるなかで自分なりに勘をつかんで口パクに合わせながら面白い芝居をしてくれるようになった方が何人もいました。

実写の映画やドラマの吹き替えは、レシーバーで原音を聴きながら収録します。言語は違っても原音の雰囲気を感じながら演じることが求められて、有名な俳優になると、この俳優の吹き替えにはこの声優と専属のようなかたちになることもあります。面白い芝居をするなと僕が感じるのはアニメ専門でない方のことが多く、昔よりもリアルなニュアンスの芝居が求められる最近のアニメに外画出身の方は向いているのではないかと思うのですが、あるベテランの外画出身の声優さんから、「今のアニメの収録では自分にはできない」という話を聞いたことがあります。最近のアニメの収録は絵が完成していないことがほとんどで、アフレコ台本のト書きからキャラクターがおかれた状況を把握し、想像しながら演じることが求められます。何も絵がない状況ではとてもじゃないができないと言われて、現在の環境で収録にのぞんでいるアニメ専門の声優たちは大変な能力をもっているんだなとあらためて感じたことがあります。

僕自身は実写作品の吹き替えの仕事はほとんどしていませんが、「リベラ・メ」という韓国映画(2001年公開)では珍しくキャスティングから関わらせてもらったことがあります。消防士の話で、池田秀一さん、山路和弘さん、平田広明さん、宮村優子さん、大塚明夫さんらに出演していただきました。東映の撮影所の方から依頼をうけての仕事で、収録には韓国のディレクターさんも立ち会って一緒にやった思い出があります。

明田川 進

明田川進の「音物語」

[筆者紹介]
明田川 進(アケタガワ ススム)
マジックカプセル代表取締役社長、日本音声製作者連盟理事。日本のアニメ黎明期から音の現場に携わり続け、音響監督を手がけた作品は「リボンの騎士」「AKIRA」「銀河英雄伝説」「カスミン」など多数。

作品情報

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