2015年4月4日(土)22:00
「アルスラーン戦記」特集 第2回 アニメーションプロデューサー 土田大亮インタビュー
「アルスラーン戦記」第6話場面カット
(C)2015 荒川弘・ 田中芳樹・講談社/「アルスラーン戦記」製作委員会・MBS
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現在、日曜午後5時よりMBS/TBS系列にて好評放送中のテレビアニメ「アルスラーン戦記」。前回の監督から引き続き、第2回インタビューではアニメーションプロデューサーの土田大亮氏にお話を伺った。
――「アルスラーン戦記」が放映開始して少し経ちました。ここまでの手応えはいかがですか。
土田 多少贔屓目の部分はあると思いますが、悪くはないとは思っています。こちらで狙ったところについて、きちんと反応をいただいていますし、いい意味で、こちらで想像していなかった部分でも反響が来ているという状況です。
――まずは順調な滑り出し、というところですね。
土田 とにもかくにも喜んでいただけたようで、少しホッとしています(笑)。
――では、あらためて、企画の発端から伺えればと思います。土田さんが本作に関わられるようになった経緯はどのようなものだったのですか?
土田 以前からお付き合いのあった、講談社の立石(謙介)さんからお話をいただいたんです。それまで自分は「アルスラーン戦記」について、マンガも小説も読んでいなかったんですよ。それをきっかけにして読んでみたら、非常に面白かったので、「やりたいです」とお話させていただきました。
――原作のどんなところに魅力を感じられましたか?
土田 まずは荒川先生のマンガから読ませていただいたんです。そうしたら、率直に面白いなと。特に今回のアニメでいう2話にあたる部分……大戦があって、負けて、カーラーンが裏切る。そこからの展開の早さが衝撃的で、もう止まらなかったですね。原作コミックの1巻の最後はナルサスが登場するところで終わるじゃないですか。そこで、「敗国の王子が、自身の魅力でもって人を集めていく」という話であることが分かるわけです。三国志の劉備なんかにも通ずるところがありますよね。ああいう仲間が増えて逆転していくような作品が凄く好きなんです。構成や、キャラクター描写、それに時々入るユーモアもセンスがある。そもそも、自分は荒川(弘)先生の大ファンでして……。「鋼の錬金術師」も青春の1ページだったりします(笑)。
――田中(芳樹)先生の原作についてはいかがでしたか。
土田 荒川先生のマンガはもちろん面白かったのですが、先の展開を知りたかったので、田中先生の原作小説も読ませていただいたんですね。そうしたら、これまた小説も面白いんですよ! 固すぎるということもなく、原作が登場したのはもう30年近く前だとは、とても思えない。出てくるキャラクター達がとにかく魅力的で、活き活きしていますよね。
――企画成立後、阿部(記之)監督が起用されることになると思うのですが、その理由はどういったところにあったのでしょうか。
土田 阿部監督にお願いした理由は、2つあるんです。まずやはり「アルスラーン戦記」は大作になると思っていましたので、それを考慮すると経験のあるベテランの方にお願いするべきだろうという点。そうでないとこの作品をまとめきれないだろうと思ったんです。阿部監督は長期シリーズもこなされている方ですし、お任せできるという安心感がありました。もう一点は、荒川先生のマンガのアニメ化というところで、少年マンガ感をしっかりと描きたかったということがあります。阿部監督は「BLEACH」をはじめ、これまで数々の少年マンガが原作のアニメを手掛けてきています。その実績から、アクションエンターテインメントとして成立させてくれると確信が持てたんです。その二点を兼ね備えているという部分で、阿部監督はもうズバリでした。
――先ほど阿部監督起用の理由に、長期シリーズをこなせるという話を挙げられましたが、ライデンフィルムさんとしては、30分もののテレビシリーズというのは、珍しいですよね。
土田 ええ。今までは短編が多かったんですが、去年、「テラフォーマーズ」で、初の30分ものテレビシリーズを制作させて頂きました。そして、今クールはライデンフィルムとしては同タイミングで「山田くんと7人の魔女」のテレビシリーズも動いている状況です。テレビシリーズが2タイトル、同タイミングで動くことは初めてですので、ちょっと未知の部分がありますね(笑)。でも、おかげさまで社内のスタッフも増えてきましたし、それぐらいは回せるスタジオになっていかないと、という思いもあるんです。そこはひとつの挑戦ですね。自分としては、今までやってきた短編や劇場作品、テレビシリーズといった作品群の、集大成的な感覚があるんです。
――かなり作業量も大変な作品だと思いますが……。
土田 新しい会社ですし、毎年毎年未知数なことだらけなんです(笑)。でも、一生懸命やらせていただいて、なんとか皆さんのご期待に答えられるように頑張ります!
――期待しています(笑)。それでは、監督に次いでポイントになるであろうチーフキャラクターデザインの小木曽(伸吾)さんについても、お話伺えますでしょうか。
土田 小木曽さんについては、ご本人もおっしゃっていましたが、リアル寄りな絵を得意とされる方なんですよ。もともと美術大学ご出身で、油絵を描かれていた方なんです。ですから、実は荒川先生と絵柄の系統が少し違うんですよね。本来であれば、キャラクターデザインには、もう少しすっきりとした絵を描かれる方を選ぶところなんです。ただ、実は自分には荒川先生と小木曽さんの「良いところどり」ができないかという思惑があったんですよ。荒川先生のテイストをしっかりと残しつつ、大河ドラマ感を出すために、少しリアル寄りのテイストも加えたかったんです。最初に小木曽さんに話を持っていった時も、少し戸惑っていらっしゃったんですが、「トライしてみてもらえませんか?」とお願いしました。ですから、実際のキャラクターデザインは多少リアルになっているんです。だけど、パッと見では、荒川先生の絵と違うという印象はないはずです。その部分は凄くストンとハマったなと思います。
「アルスラーン戦記」エンディング
(C)2015 荒川弘・ 田中芳樹・講談社/「アルスラーン戦記」製作委員会・MBS
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――エンディングは、また少しテイストの違った絵柄でしたね。
土田 今回は戦記ものですから、作品性としては男らしい面があると思うんです。でも、一方で架空とはいえ、中世のペルシャ的な雰囲気のある、栄華を誇った国の物語でもある。ですから大河ロマン感という作品性もあるはずだと思っていたんですね。
――その大河ロマン感をエンディングに反映されたのでしょうか?
土田 ええ。どちらかというとオープニングは戦記もの感……アクション的な要素を推すことになると思ったので、エンディングでは大河感を推したいなと。自分は、色んな物には相反する側面があると考える方なんですが、オープニングが男性的だとすれば、エンディングは女性的だなと思ったんですね。だから、演出として中山(奈緒美)さんにお声をお掛けしたんです。そこで、綺麗系で耽美な世界でやりたいとお話しました。作画を横山(愛)さんにお任せしたのは、そういった世界を表現するためにというところで、僕も中山さんも意見が一致したんです。さらに講談社さんにも「ちょっと絵柄を変えてもいいですか?」という話を前もってしたところ、承諾して頂けました。。そして、EDの楽曲に決まったのも藍井エイルさんの「ラピスラズリ」だったんです。イメージぴったりで、曲を聞いた途端、「もうこの路線で行くしかない!」と思いました(笑)。横山さんには「こういう路線でお願いします!」と言ってみて、完成したのがあのエンディングだったんですよね。
作品情報
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アルスラーン戦記 THE HEROIC LEGEND OF ARSLAN
東西を結ぶ陸路の中心地・エクバターナを王都に掲げ、各地からの人や物資、そして豊かな文化が集まる強国パルス。この国の王太子として生まれた少年・アルスラーンは、幸福のうちに国を引き継ぐはずだった。土...
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