2015年6月13日(土)20:00
「アルスラーン戦記」特集 第3回 チーフキャラクターデザイン 小木曽伸吾インタビュー
現在、日曜午後5時よりMBS/TBS系列にて好評放送中のテレビアニメ「アルスラーン戦記 THE HEROIC LEGEND OF ARSLAN」。前回のアニメーションプロデューサー、土田大亮氏から引き続き、第3回インタビューでは、キャラクターデザインの小木曽伸吾氏にお話を伺った。
―― まずは、小木曽さんが本作に参加された経緯からお聞かせいただけますか。
小木曽 元々は自分に別の作品のキャラクターデザインの話が来ていたんですね。それでライデンフィルムに入っていたんです。その作品は事情があってなくなったのですが、「こういう作品もあります」ということでお話をいただきました。
―― 降って湧いてきたようなお話だったのですね。原作は読まれていたのでしょうか。
小木曽 実は、荒川弘先生が「アルスラーン戦記」の漫画を描かれているということを存じ上げなかったんです。世代的に昔の小説のイメージがあったので、意外だと思いました。お話をいただいたその日のうちに本屋に行き、原作漫画を買いました。
―― では、原作を読まれての第一印象はいかがでしたか。
小木曽 世代的に小説版を周りに読んでいる人はたくさんいて、なんとなく世界観も分かっていたんです。それもあって、戦記ものでヘビーな作品なんだろうなというイメージでいたのですが、凄く楽しい少年漫画になっていることに驚かされました。漫画は重い感じではなく、キャラクターが縦横無尽に動き回る、冒険活劇だと思えました。
―― 荒川先生についてのご印象はいかがですか。
小木曽 「鋼の錬金術師」でアニメーターとしてオープニングに参加したことがあったんです。荒川先生は、アニメ業界での人気が高いんですよね。描きやすいというと語弊があるかもしれないのですが、凄く動かしやすいんですよ。シンプルでありながら表情も豊かだったので、「鋼の錬金術師」もぜひやりたいという気持ちでオープニングに参加させていただいたんです。未読ながらもかなりポジティブな捉え方をしていました。
―― 「アルスラーン戦記」における、荒川先生らしさというのはどこに感じられますか?
小木曽 日常の中のちょっとした笑いというか、性格的にキャラクターが可愛らしく見える……そういう魅力が掘り下げられているのが、荒川先生ならではかなと思います。
―― ギャグもテンポがよくて楽しいですよね。
小木曽 あの作品の中で、ドタバタギャグを挟むのは、難しいと思うんです。でも、そこにチャレンジされている。何よりも凄いのは悪役が憎めないことです。小説も読ませていただきましたが、ボダンのような誰がどう見ても嫌われるキャラが、なんとも憎めないじゃないですか。そこが、荒川先生ならではの魅力だと思います。
―― 実際に小木曽さんがアニメーションキャラクターデザインに落とし込む段で、気をつけたことはどんなことですか。
小木曽 過去にも荒川先生の作品がアニメ化されましたが、それぞれのキャラクターデザイナーさんなりの捉え方で落としこんでいらっしゃったので、「パッと見で荒川先生の作品と分かりつつも、今までにないものにしよう」とは思いました。
―― どういったところで差別化されようと思われたのでしょうか。
小木曽 原作小説の中では、「美しい」という部分が強調されているので、そこを引き出せればと思っていました。それでいて話自体はかなり重いものでしたので、それに堪えるだけのリアルな味付けを少ししたつもりです。そうすることでキャラクターに説得力を持たせたかったんです。
―― 先日(アニメーションプロデューサーの)土田様に伺った時に、原作のフォルムを重視したデザインと、小木曽さんが得意とされているリアリティを掛け合わせたかったというお話があったのですが。
小木曽 そうですね。荒川先生も(いつもの作品より)個人的にはちょっとリアル目に描いている気がしたんです。そこを拾っていきたいなと思ったんですね。今回のキャラクターデザインで、そのあたりを多少誇張してみようと思いました。
―― 細かい話で恐縮なのですが、キャラデザにおいて、漫画と「ここが違う」と言える箇所はどこになるのでしょう。
小木曽 首から下ですかね。そのディテールはかなりリアルにやっています。筋肉の構造をしっかりと描いているつもりです。
―― 筋肉をリアルにする意図というのは、やはり剣戟アクションに堪えうるキャラクターにしたかったためですか。
小木曽 そうですね。そこが安っぽくなってしまうと、作品の魅力が失われてしまうので。例えばこのダリューンのデザインなんかですね。
ダリューン キャラクターデザイン
(C)2015 荒川弘・ 田中芳樹・講談社/「アルスラーン戦記」製作委員会・MBS
イメージを拡大
――ああ、確かに。しっかりと筋肉が描かれていますね。先ほどおっしゃった「美しさ」というところは、例えば、アルスラーンに反映されているのですか?
小木曽 アルスラーンに関しては、キャラクターデザインそのものよりも、色を決める時に意識をして、美しさを出しました。版権や総作監修正の時にも気をつけています。
―― 色で美しさを意識されているというのは、具体的にはどういうことでしょう。
小木曽 髪の毛の色を薄くというか……色相を落としているんです。ここは監督もこだわられたところですね。髪の主線は鉛筆の黒で描いているのですが、塗る時に毛の色を抜いているんです。そうすると髪の毛のさらさらにした感じが出るんですよ。
――なるほど。毛の輪郭線を、内側の白っぽい色に寄せているんですね。確かにアルスラーンの髪は柔らかでフワッとした感じがします。アルスラーン自身の印象にも大きく影響していますね。
小木曽 そうなんです。
―― アルスラーンについては、女性的なラインを意識されていたりはするのですか。
小木曽 いや、女性は意識したことはないです。美少年ですね。
―― 身体つきは、ちょっと幼い感じにされている?
小木曽 ええ。
―― なるほど。美しいと言う意味では、ファランギースはいかがでしょうか。
小木曽 ファランギースやナルサスのような美形的なキャラは、ちょっとリアル目にアレンジしているつもりです。どうしても自分の引き出しの中からの作業になるのですが、自分なりに細かいディテールを起こしたり、少し顔を面長にしていますね。
―― 個人的な感想としては、彫刻的な美しさを感じます。
小木曽 どちらかというと、ファランギースやタハミーネは、観音様のイメージでしょうか。崇高で普遍的な美しさを感じてもらえるようにしたつもりです。ただ、自分は美大でそういったことを勉強していたので、これはあまり意識してやっているという感じでもないんですが……(笑)。
―― キャラクターの点数が多い作品ではあると思いますが、そういった部分でのご苦労はありましたか。
小木曽 それは一番苦労している部分です。それで(キャラクターデザインとして)3人立っているんですよね。
―― 小木曽さんがチーフで、田澤(潮)さんと、渡邊(和夫)さんがそれぞれキャラクターデザインという役職なんですよね。
小木曽 ええ。三者三様、絵柄も違うので、方向性を合わせていくというのも重要ですし、描いても描いても終わらないという物量の意味でも苦労しています。
―― マルズバーン(万騎長)なんか、キャラが立っていますよね。
小木曽 みんなカッコいいんです。凄く思い入れのあるキャラクター達だったんですよ。キャラクターデザインも、しっかりやろうという心持ちだったのですが、割とすぐ死んじゃうんですよね………。
―― そうですよね。キャラクターデザインお三方は、どのような役割分担なのですか。
小木曽 単純に言うと重要なキャラは基本的に僕がやらせていただいて、自分ができなかったものをお二人にやっていただいています。最終的なチェックは僕が行い、気になる点は直させていただいたりもしています。
―― ああ、キャラクターデザイン修正もあるんですね。キャラクターの数が多いという意味では、描き分けも凄く難しいのではないかと思うのですが、ともすれば同じような顔になったりしないのですか。
小木曽 逆に、戦記ものらしいキャラクターと、アルスラーンやエラムのような可愛いキャラクターが、同じ世界観で統一できるのか。そこに気をつけていますね。そういう可愛い系のキャラクターは、ちょっとだけリアルに寄せています。自分はリアルに描く癖があるので、それを抑えつつ、ですが。
―― 本作が他作品と比べてここが大変といったことはありますか。
小木曽 なんといっても馬ですね。
―― えっ? 馬ですか?
作品情報
-
アルスラーン戦記 THE HEROIC LEGEND OF ARSLAN
東西を結ぶ陸路の中心地・エクバターナを王都に掲げ、各地からの人や物資、そして豊かな文化が集まる強国パルス。この国の王太子として生まれた少年・アルスラーンは、幸福のうちに国を引き継ぐはずだった。土...
フォトギャラリー
フォトギャラリーへ
-
blaze(期間生産限定アニメ盤)(DVD付)
2016年08月09日¥1,528 ¥1,204
-
アルスラーン戦記 03 デザインC [公式イラスト] アクリルフィギュアプレート
¥1,635
-
アルスラーン戦記 02 デザインB [公式イラスト] キャラアクリルフィギュア
¥1,679
-
アルスラーン戦記 01 デザインA [公式イラスト] キャラアクリルフィギュア
¥402
特集コラム・注目情報
関連記事
イベント情報・チケット情報
- 2019年9月16日(月)
- 2019年9月16日(月)
- 2019年9月15日(日)
- 2019年9月15日(日)
- 2019年9月14日(土)