2015年6月13日(土)20:00
「アルスラーン戦記」特集 第3回 チーフキャラクターデザイン 小木曽伸吾インタビュー (2)
―― 本作が他作品と比べてここが大変といったことはありますか。
小木曽 なんといっても馬ですね。
―― えっ? 馬ですか? それはちょっと意外でした(笑)。
小木曽 馬に関しては専門的な知識と経験値が必要になるんです。作監さんや総作監さんは馬から直さないといけないということもあるんで、そうなった時には物量が大変になるんです。
―― 確かに、本作では馬の動きが非常にリアルですよね。CGでも作られているようですが、作画の馬も尋常じゃないくらいありますね。
小木曽 できる限り上手い作画さんに原画を担当していただいて、作監さんの負担を減らすようにしています。
―― 馬のデザインにもこだわりなどあるのでしょうか。
小木曽 ええ。サラブレッドではないだろうと。重装馬でガタイがいいはずだと思って、そうデザインしています。
パルス軍の一般兵馬 デザイン
(C)2015 荒川弘・ 田中芳樹・講談社/「アルスラーン戦記」製作委員会・MBS
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―― 今、四足の動物を描くテレビアニメーションは少ないと思うのですが……。
小木曽 個人的にはやりたいんですよ。僕はどちらかというと、いろんな芝居を描きたくてアニメーターになったので、できるだけ馬の動きなんかもやっていきたいんです。
―― 芝居させることがお好きなんですか。
小木曽 はい。芝居をさせることによって、キャラクターの魅力や作品の世界観を引き出したいという想いがあるんです。
―― 「アルスラーン戦記」とは何も関係ないかもしれませんが、小木曽さんのお好きなアニメーターさんはどなたですか。
小木曽 今はあえて、特別好きな方を持たないようにしているんですが、業界に入ったきっかけでいえば、安彦良和さんであったり……あとは世代がもうちょっと後だと、黄瀬(和哉)さんといった方々でしょうか。
―― なるほど。リアリティもあって、ちゃんと人間芝居をされている方々ですね。「アルスラーン」もその路線に沿っている気がしますが……。
小木曽 実は今も安彦さんの漫画、「アリオン」を参考にしていたりするんです(笑)。
―― ああ! そうなんですね(笑)。では、本作の作画における全体的なプランも、芝居というところがポイントになってくるのでしょうか。
小木曽 そうですね。芝居にも通ずるのですが、個人的なこだわりとしては、剣戟のやり方や武器の使い方をちゃんとやろうということですね。どうしても日本の時代劇を見慣れてしまっていると、剣術が和風になってしまうので、そうはしないように気をつけています。
―― 資料を拝見させていただくと、弓と矢についてもかなりしっかりと考えられていますね。
小木曽 ええ。矢を射ると矢が回転するんです。それをアニメでも再現しようと思ってやっています。
矢尻が回転しながら飛んで行く指示が書かれている
(C)2015 荒川弘・ 田中芳樹・講談社/「アルスラーン戦記」製作委員会・MBS
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小木曽 剣術的に言うと、特に難しいのはアルスラーンなんです。一般的には強いのですが、ダリューンたちと比べたら弱い、というバランスが難しいんです(笑)。1話と2話の冒頭で、ヴァフリーズと稽古をするじゃないですか。1話と2話で差をつけているんですよ。最初は、木剣相手に刃が立たないアルスラーンですが、2話では成長して、真剣同士で戦う。なおかつ多少互角にやっている様子を見せているんです。
―― 成長の跡を見せているんですね。
小木曽 ええ。ただのチャンバラにはせず、ちゃんと根拠のある剣戟にしようと思いました。それもやっぱり芝居の考え方ですよね。所作の仕方であるとか、戦い方や歩き方を、全てキャラクターの性格によって描き分けたいと思っているんです。その一環として一番誇張しやすいのがアクションなんです。
―― キャラクターごとの作画参考注意事項みたいなものはあったりするんですか?
小木曽 アクションに関しては、アクション監督の木村(智)さんに描いていただいたりするのですが、僕の方でも意見を出しました。例えば……
アクションポーズ集その1。ナルサスの立ち姿に注目
(C)2015 荒川弘・ 田中芳樹・講談社/「アルスラーン戦記」製作委員会・MBS
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小木曽 この辺りは僕が描いたのですが、武人は背筋がしっかりしているんですね。
―― ああ。なるほど。腰が入っていますね。これがギーヴだと違うんですか。
小木曽 そうですね。ギーヴはちょっと変則的です。
アクションポーズ集その2。変則的なギーヴの構え方
(C)2015 荒川弘・ 田中芳樹・講談社/「アルスラーン戦記」製作委員会・MBS
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―― ああ、本当だ! ポーズがちょっと面白いですね。
小木曽 (笑)。ヒルメスは殺気が剣に宿っているような感じになっています。
―― このポーズ参考でも、キャラクターの個性を出されているんですね。
小木曽 そうですね。「ポーズひとつにも個性を出していきたい」という意図で描いています。それと実演で僕がちょっとやってみたり(笑)。
―― ご自身でポーズをとったりもされるのですか(笑)。ビデオを見たりも?
小木曽 改めて見るというよりは、趣味です……。「BLEACH」をやっていた頃から、色々と武術やスポーツといった身体の使い方については考えたんですね。他作品でアクションを原画で描いている時も、そういうこだわりを持ってやっていたつもりでして……。改めて調べたということはあまりないのですが、西洋ものに関しては弱かったので、そこは今回、調べたりもしました。
―― 今おっしゃっていたのは戦闘に関するこだわりだと思うのですが、日常描写については、こだわられたところはありますか?
小木曽 道具ですかね。例えば食事のシーンが結構出てくるのですが、食器や食生活はどうだったのか。そういったことには気をつけているつもりです。実際にメインスタッフでペルシャ料理を食べにいったり、そこのご主人に色々聞いたり(笑)。そういうことはやったりしていますね。そういったことは、滲み出てくる世界観(世界観の構築は、コンセプトデザイン・新妻大輔氏が担当)みたいなものに現れてくると思うんです。誰も行ったことのない世界ですが、だからこそやっぱりアルスラーン達がいる世界が本当にあるように、見ている人に思ってもらいたい。作品の中に入って感情移入してもらうためには、そこをちゃんとやらないと、途端にシラケてしまいますからね。
―― 今後、作画面において見所はどんなところになりそうですか?
小木曽 象さんですかね(笑)。未知数ですけど、僕は凄く楽しみにしています。シンドゥラ国の戦象部隊が一視聴者としての楽しみですが、キャラクターデザイナーとしての見所は、近い放送だとシンドゥラのラジェンドラ。あとは、エトワールですかね。エトワールは重要なキャラクターとして立てていきたいので、今後の登場を楽しみにしていただきたいなと思います。
―― 最後に、この作品の小木曽さんなりの魅力を教えていただけますでしょうか。
小木曽 やっぱり、なかなかアニメでは描けない群集戦ですね。個人個人ではなく、何十万対何十万というのは、この作品の最大の魅力だと思います。そんなスケールの大きな戦いが背後にある中で、たったふたりから始まって、4人になり、6人になりという、アルスラーンとその仲間たちがどう奮闘していくのか。そのあたりは、今後も楽しみにしていて欲しいです。
―― ありがとうございました。
作品情報
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アルスラーン戦記 THE HEROIC LEGEND OF ARSLAN
東西を結ぶ陸路の中心地・エクバターナを王都に掲げ、各地からの人や物資、そして豊かな文化が集まる強国パルス。この国の王太子として生まれた少年・アルスラーンは、幸福のうちに国を引き継ぐはずだった。土...
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