2015年10月9日(金)20:00
「攻殻機動隊」25周年リレーインタビュー 神山健治監督 後編 スタッフを説得し続けた6年間 (2)
テレビシリーズの制作には、トータルで300人近くものスタッフが携わる。その中で「一緒に荷物をもとうというスタッフが5人いてくれたら乗り切れる」と神山監督はしみじみと語る。
「本当は各セクションに1人か2人ずついてくれるとすごく助かるんですが、そうでなくても最後まで同じ分量の荷物をもってくれるスタッフが自分の他に5人いてくれたら大丈夫だと思います。2人でもなんとかなるかもしれません。それぐらい難しいことなんですよ。『S.A.C.』の立ち上げ時にはそんなメンバーが5人ぐらいいたと思います。それが1人、2人と減っていって、また新しい人がきてくれたりといった感じでした」
「2nd GIG」では難民問題に焦点をあて、より現実と地続きになったドラマが展開された。過去の事件にスポットをあてた「S.A.C.」から、意図的にテーマを変えたのだという。
「過去の事件は歴史によって咀嚼(そしゃく)されているというか、社会によって総括がなされているんですよね。当時は悪いことだと言われていたけれど、実はこういう理由があったとか、時間によって過去の事件は洗濯がすんでいるんです。その点で、『S.A.C.』はやりやすかったとも言えます」
「2nd GIG」では、押井監督からの「現代の戦争をテーマにやってみろ」というお題もあり、作品を通して答えを見つけていく脚本開発が求められた。「作り手すらも、どうなっていくのかわからない」ところが「2nd GIG」の面白さだと神山監督は語る。
「今まで一度も見たことがないゴルフコースを、全部パーでまとめろって言われるぐらいの難しさですよね。今まさに世界で起きている難民問題やテロ、国際紛争にアプローチして、アニメの中で解決できるのかという挑戦でした。ハードルは上がりますが、同じことをやってもみんな飽きていってしまう状況のなかで、作品を通して答えを見つけていく作業は面白い部分でもあったと思います。制作的には、本当に苦しい中でやりくりしていましたけれど」
高齢化社会と少子化問題に切り込んだシリーズ第3作「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」(以下「SSS」)で、「今を描く」手法はさらに深化する。だが、全52本のテレビシリーズを作り終えたスタッフの疲弊は深刻なものだった。
「『SSS』はいつの間にか決まっていたという感じでした。最後に1本長編を作れたら『S.A.C.』シリーズは勝ちだという思いでやっていたので有り難かったですね。『SSS』も『2nd GIG』が終わると同時に作り始めたのですが、その時期がちょうど『イノセンス』の制作が終わる頃だったんですよ。当時のI.G社内には、大作である『イノセンス』に少しでも参加しておこうという空気があったんです。『S.A.C.』のスタッフの中からも、最近見ないなと思ったら『イノセンス』をやっていたなんてこともありました。『SSS』は、『イノセンス』が公開されて“お祭り”が終わってからの制作だったので、社内的には『まだ作っているの?』と言わんばかりの状況だったですね。そんな雰囲気のなかで作っていくのは本当に難しかったですね」
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