2015年10月9日(金)20:00
「攻殻機動隊」25周年リレーインタビュー 神山健治監督 後編 スタッフを説得し続けた6年間 (3)
「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」場面カット
(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会
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「52本の映画を作る」ような気持ちでテレビシリーズを作り終え、神山監督自身も、当初考えていたアイデアはほぼ使いつくしていたような状況だった。けれど、「ここで作るものでこそ本当の実力が試される」とも考えたのだという。
「僕的には今度こそが本番じゃないかと思ったんだけど、その気持ちを爆心地から遠いスタッフと共有するのは無理というか、それを強いること自体が難しいことなんだなと。色々な意味で歯を食いしばって作った作品です。つらいことも多かったですが、シリーズ2本を一緒に作って成熟したスタッフがいたからできた部分も多くて、そこは6年間『S.A.C.』を作り続けてきたからだと思います。最後まで逃げずに作品に携わってくれたスタッフが“黒澤組”になっていくんだなと実感しました」
最後に、『GHOST IN THE SHELL / 攻殻機動隊』の公開から20年が経った今、「攻殻」シリーズを取り巻く状況の変化について聞いた。
「世界は大きく変わったなと思います。それまでのエンターテインメントって、ストーリーや構成を中道左派で作っておくのが無難だったと思うんですよ。公安9課も内務省直下の隠密部隊なわけで、体制側に足をおきながら、市井に対してどうアプローチしていくかという話ですよね。僕が『S.A.C.』を作っていた2000年代の半ばぐらいまでは、それこそ『水戸黄門』や『遠山の金さん』のような物語がエンターテインメントの基本的なかたちだったのが、今は真逆ですよね。むしろ国家やイデオロギーといったものにもっと寄り添うようになってきているように思えます。冷戦終結後にスパイ映画が作りにくくなったのと同じように、公安9課という存在が政治的な犯罪にアプローチするとき、彼らが考える哲学や思想といったものも変わらざるを得ない時代になったんじゃないかと思います」
「攻殻機動隊 STAND ALONE COMPLEX Solid State Society」場面カット
(C)士郎正宗・Production I.G/講談社・攻殻機動隊製作委員会
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今後の「攻殻」シリーズの可能性についても聞いたところ、「次にやる人の参考になれば」と以下のような言葉をもらった。
「大抵は、これまでと違う新しいことをやろうと考えますよね。でも、同じことをやってみた方が楽かもよって思うんです。同じことをやろうと思っても、結果、作った人の個性は出ます。『S.A.C.』でも、士郎先生の漫画の雰囲気を残そうとか、押井さんと同じことをしようとか、僕なりに似たものを作ろうと考えながら作っていったんです。最初から個性を出そうとはしていなかった。そう思われてないかもしれないですけどね(笑)。最終的にできた差異こそが個性なんだと後でわかったんです。なので、まずは模倣から入ることをお勧めします。それが原作寄りなのか、押井攻殻なのか、『S.A.C.』なのかは、作り手の意思に任せますけどね」
作品情報
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西暦2030年。“笑い男事件”が解決して半年・・・公安9課が完全な再建に向けて活動をしていた。ある夜、中国大使館で「個別の11人」と名乗るテロ組織による人質立て籠もり事件が勃発する。彼らの要求は...
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