「ヤマノススメ おもいでプレゼント」山本裕介監督に聞く　3人の原画マンで“丁寧に”作った理由 (3)

江崎慎平さん担当の後半絵コンテ

(C) しろ／アース・スター エンターテイメント／『ヤマノススメ』製作委員会

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――後半のエピソードは、絵コンテを「モンスターストライク THE MOVIE はじまりの場所へ」監督の江崎慎平さんが担当されています。山本監督が担当されていないのは、7月放送の「ナイツ＆マジック」の監督をやられていたからなんでしょうか。

山本：まあ、そのとおりですね（笑）。前半のコンテはとにかく自分で描いて、早く松尾さんに作画に入ってもらうことが最優先でした。後半についてはスケジュールには余裕があるものの、僕の余裕がなくなってきているので、腕のあるコンテマンにお願いしたいという話をして、制作の大友くんが江崎さんを連れてきてくれました。初めてお仕事しましたが（Production）I.G系の出身で、「ヤマノススメ」でもお仕事をした「ゆるキャン△」監督の京極義昭さんとは、確か同期だと聞きました。若いのにとても演出に対する考えがしっかりしていて、感心しました。

――後半のエピソードの作画スタッフは、嶋田（和晃）さん、古橋（聡）さんのおふたりでした。こちらもまた少数精鋭の体制で作られていて。

山本：「少数精鋭」という言葉は、あまり使いたくないんですが……どんな制作も演出も可能なら少数で作りたい、というのが本音じゃないでしょうか。原画マンが少ないほうが、統一感もとりやすいし、制作もスケジュール管理がしやすいに決まっています。人海戦術になっている昨今の状況の方がおかしいと思うんです。昔の30分アニメは3、4人の原画マンで作るのが普通でしたし、今でも時間さえ許すのならばそうしたいと思っている原画マンは少なくないと思っています。

――たしかに、いろいろな作品のキャラクターを数カットずつ描くより、ひとつの作品で多くのカットを担当するほうがいいように思います。

山本：同じ作品の絵を描き続ける方がどんどんキャラに慣れていきますしね。それに全カットを全力投球ではなく、「ここは頑張る」「ここはちょっと力を抜いてもいい」と、原画マン自身でペース配分できるところが良いんです。ちょっと話が脱線しますが、今のテレビアニメで、例えば300カットの原画を20人で作業するとしたら、ひとり10数カット描く計算になります。すると、なまじカットが少ないためにみんな自分が受けもったカットを頑張りすぎてしまって、そんなに頑張らなくてもいいシーンにまで無駄に力が入ってしまうことがあるんです。またそれとは逆に、まったく無責任に10カットをただ描き逃げるという人もでてきます。とにかく演出も作監も全体のクオリティコントロールが難しくなるんです。

――最初の「丁寧に作っている」という質問と同じで、「少数精鋭」という聞き方がよくなかったのですね。本来のかたちでやっていることが、まわりからはそう見えているというだけで。

山本：いえいえ。おっしゃっていることは分かりますし、光栄でもあります。ただ、制作としては変わったことを仕掛けているつもりはなくて、自然に3人にお願いするかたちになったのだと思います。松尾さんたちも無理なことをやらされたとは思っていないはずです。

――最後に、「ヤマノススメ」ファンの方に、ひとことお願いします。

山本：「旧交を温める」という言葉がありますが、そんなふうに「ヤマノススメ」の登場人物を懐かしむつもりで劇場に足を運んでいただければと思います。僕自身、絵コンテを描いて久々の「ヤマノススメ」の世界で、ここなやひなたたちの振る舞いを描くことがとても心地よかったです。また、今日何度も言っていただいた「丁寧」という部分でいうと、間違いなく丁寧に作っていますので、きっとご満足いただけるんじゃないかと思います。

――各エピソードの前にある、ナレーションでこれまでの話を紹介する映像も、テレビシリーズの良いシーンが切り取られていて、とてもよかったです。

山本：ありがとうございます。しょせんは寄せ集めの映像なんですが、旧作から、もっとも気に入っているカットを集めて自分で編集しました。専用の曲をyamazoさんに作っていただいてますし、褒めていただけるととてもうれしいです。今回、新作した曲はもちろん、既存の劇伴も全て劇場の5.1チャンネル用にリミックスしていただいてるんです。音響的に、けして奇をてらったことはやっていませんが、心地よく見ていただけるような臨場感を心がけました。ぜひ劇場でご確認ください。

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