2018年11月30日(金)19:00
「機動戦士ガンダムNT」ヨナ・バシュタ役の榎木淳弥が読み解く“ナラティブ組体操”に隠されたテーマ
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11月30日から劇場公開中の「機動戦士ガンダムNT(ナラティブ)」。「機動戦士ガンダムUC(ユニコーン)」の1年後を描く同作は、宇宙世紀を舞台とした「ガンダム」作品の劇場版としては、1991年公開の「機動戦士ガンダムF91」以来、実に27年ぶりの完全新作であり、2019年からスタートする「機動戦士ガンダム40周年プロジェクト」への橋渡しという重要な役割も担う、「ガンダム」シリーズの新たなメルクマールとなる作品だ。突如として現れたユニコーンガンダム3号機“フェネクス”を追う、同作の主人公ヨナ・バシュタ役を務める榎木淳弥に、大作に挑んだ心境と、収録の裏側を聞いた。
――榎木さんは、オーディションで出演が決まったそうですね。
榎木:オーディションでは、事前にセリフ原稿とキャラ絵をいただいて、そこからキャラクターを組み立てていきました。本作のベースになった小説「機動戦士ガンダムUC 不死鳥狩り」も購入してチェックしていたのですが、幼なじみのミシェル・ルオや、ヨナの乗機ナラティブガンダムが登場しないことがわかったので、あまり深く読み進めないようにしました。「ガンダムNT」は、「ガンダムUC」ではない、新しい物語を作っていくのだと思ったので、イメージを固めてしまうのはよくないなと。オーディション資料から読み解ける情報はあまり多くはなかったのですが、同じく幼なじみであるリタ・ベルナル――“フェネクス”を追い求めることが、ヨナの行動原理だと感じ、その執着を表現できればいいなと。
――実際に収録に臨んで、ヨナのキャラクター造形をどのように考えていったのでしょうか。
榎木:僕は、25歳現在のヨナだけでなく、15歳の頃のヨナも演じることになりました。幼少期のヨナのシーンと照らし合わせることで、その人物像が見えてきたので、過去からのつながりを分析して、ミシェルたちとの関わり方や、普段のヨナの姿を想像していきました。リタにまつわる幼少期の痛烈なできごとは、ヨナにとても大きな後悔と、自分や他人に対する怒りを植えつけました。そのときの感情を、大人になるまで、ずっと鮮明に保ち続けてきたのがヨナなんだと思っています。ですから、さきほども申し上げた「もう一度リタに会いたい」という執念こそが、ヨナを演じるに当たってのカギになりました。
――収録時には、どんなディレクションを受けましたか。
榎木:おおむねお任せいただけたのですが、「15歳のときのヨナの声を若くしてほしい」と言われました。もっと小さな頃から、戦争を通じてさんざんな目にあってきたヨナですから、15歳にして、世の中に対する達観というか諦めがにじみ出るように演じました。一方、25歳のヨナは、幼い頃に感じた諦観が、価値観の根底にあるのは間違いないと思いますが、「リタと再会する」という明確な目的ができたので、よけいなことを考えずに、ひたすら目的に向かって突き進んでいきました。
――小説「不死鳥狩り」の作者であり、今作の脚本も務めた福井晴敏さんとお話しされたことはありますか。
榎木:収録がスタートする前に、福井さんをはじめとするスタッフのみなさんとお食事させていただく機会がありました。そのとき、僕がヨナ役に選ばれた理由を教えてもらったのですが、僕の「青年にも、少年にも聴こえる声」が決め手になったのだそうです。実際に、青年期と少年期の両方を演じましたが、それだけではなく――あくまで僕の解釈ですが――「25歳のヨナが15歳の頃の気持ちでしゃべる」というシーンもあるので、無事収録を終えられた今は、あの時の福井さんの言葉の意味が分かったような気がします。
――同じく福井さんが脚本を務めた「機動戦士ガンダムUC」は、今作とも密接なつながりをもつ作品ですが、ご覧になりましたか。
榎木:はい。絵のクオリティが高く、役者のみなさんのお芝居も熱が入っていたので、物語にとても引き込まれました。「人間の未来に対する希望を捨てない」という、一貫したテーマも大好きです。ただ、やはり「ガンダムUC」と「ガンダムNT」とは別の作品ですので、ヨナを演じるにあたって、ことさらにつながりを意識したことはありません。
――収録現場の様子はいかがでしたか。
榎木:画面上ではコロニー落としが行われたり、凄惨なシーンが展開されていたりしましたが、現場は和気あいあいとした和やかな雰囲気でした。ミシェル役の村中知さんとは、作中で絡む機会も多いので、空き時間を使って、セリフの解釈をすり合わせていきました。15歳のヨナとミシェルが、それぞれに真実をどこまで知っているのかというような、作中で明確には描かれていないことを詰めていったかたちです。また、「ガンダムシリーズ」ファンの共演者の方から、シリーズに対する思い入れや解説が聞けたのは楽しかったですね。
――今作は宇宙世紀を描いた「ガンダム」シリーズでは27年ぶりの完全新作劇場版で、来年にはシリーズ40周年をむかえる、歴史ある「ガンダム」シリーズの節目に生まれた大作です。出演にあたって、大きなプレッシャーがあったのではないかと思うのですが。
榎木:日本中の方がご存知のシリーズですので、「下手な芝居はできない」という重責は感じました。でも、そこを意識すれば、いい芝居ができるかというとそうではないんです。ですから、なるべくいつもどおりの自然体で収録に臨むようにしました。
――榎木さんご自身に「ガンダム」シリーズへの思い入れはありましたか。
榎木:子どもの頃にはゲームをプレイしていましたし、声優をやっているからには、一度はガンダムに乗ってみたいという願望がありました。でも、ディープなファンのみなさまに比べると思い入れは浅いほうで、だからこそ、肩の力が入りすぎずフラットなお芝居ができたのかなと思っています。
――今作でも、たくさんのモビルスーツやモビルアーマーが登場します。榎木さんがお気に入りの機体はありますか。
榎木:自分の機体なので、やっぱりナラティブガンダムが一番のお気に入りです。これまで、リアル頭身のプラモデルは作ったことがなくて、SDガンダムが好きだったんです。でも、ちょうど公開日に発売される「1/144 ナラティブガンダム A装備」で、スケールモデルに初挑戦したいと思っています。ガンダムベース東京で試作品を見て、その大迫力に驚いてしまいました。横幅がとても大きいので、今からどこに飾ろうかなと悩んでいます(笑)。
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――ネット上では、今作のキービジュアルが「ナラティブ組体操」として話題になりました。榎木さんはどんな感想をもたれましたか。
榎木:「すごいキービジュアルが来たな」と思いました。みなさん楽しんでくださっているようで何よりです。宣伝は“話題になる”ことも大事だと思うので、そういう意味では大成功ですよね(笑)。それに、奇抜な格好ではありますが、メッセージも込められている絵柄だと思うんです。ヨナ、ミシェル、そしてライバルのゾルタン・アッカネン、3人それぞれの思惑が絡み合って物語が作られていくことを象徴していますし、それぞれの意思が互いに押さえつけ合うように衝突するストーリーだということも見てとれます。ヨナがリタを追い求めているということも、天からヨナに差し伸べられる手という形でわかりやすく表現されていますし……完璧なキービジュアルですね。
――「ガンダムNT」が口火を切り、19年からスタートする「機動戦士ガンダム40周年プロジェクト」に期待することはありますか。
榎木:「ガンダムNT」と、「機動戦士ガンダムF91」の間をつなぐストーリーを見てみたいですね(※編注)。「F91」のあとの「クロスボーンガンダム」もアニメ化してもらいたいです。「ガンダムNT」はキレイな終わり方をしますので、ヨナもストーリーに深く関わるかたちではなく、カメオ出演させていただけるとうれしいです。
――最後に、今作の見どころを教えてください。
榎木:キャッチコピーにもなっている「ニュータイプ神話の行き着く先」、つまり「ニュータイプとはいったいなんなのか」というテーマに深く切り込んでいく作品なので、シリーズファンの方には、ぜひ注目してもらいたいです。また、福井さんが「メロドラマ」とおっしゃっているように、“人と人との関わりの中から生まれ出るもの”も濃密に描かれているので、「ガンダム」シリーズを知らない方にも楽しんでいただける作品に仕上がっていると思います。ぜひ劇場の大画面でご覧ください。
※編注:このインタビューのあとに、宇宙世紀0097年を舞台にした「ガンダムNT」と、宇宙世紀0123年の「F91」の間隙を埋める、宇宙世紀0105年の物語「機動戦士ガンダム 閃光のハサウェイ」の劇場アニメ3部作公開が発表された。
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U.C.0097――。『ラプラスの箱』が開かれて一年。ニュータイプの存在とその権利に言及した『宇宙世紀憲章』の存在が明かされても、世界の枠組みが大きく変化することはなかった。のちに『ラプラス事変...
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