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イベント 2019年2月8日(金)19:30

制作もプロデュースもテクノロジーが勝負 「ACTF2019」から見えるアニメの現在

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■5年目を迎えた「ACTF」 デジタル領域の拡大を反映
 近年、アニメーション制作におけるデジタル化の波が急進展している。そうしたなか業界関係者が集まり、最新の知識や経験を共有する場が生まれている。2019年2月2日、東京・練馬区立石神井公園区民交流センターで開催された「アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム(ACTF) 2019」だ。
 企業における最新の試みや経験を披露するメインセッション、制作ツールの事例や技術を紹介するセミナーとワークショップ、さらに製品のデモストレーションをする展示コーナーなどからなる。アニメーション制作のデジタル化をテーマにした総合イベントだ。
 5年目を迎えた19年は、業界関係者345人が参加。また全国8都市9つの専門学校にメインセッションがサテライト中継された。全国の教育関係者、専門学校生が最新情報を知るところとしても、重要な役割を果たしている。

15年のスタート時の「ACTF」の大きな関心は、「デジタル作画」であった。紙や鉛筆でなく、タブレットやタッチペンで絵を描くことが広がるのか、そのデジタル作画にはどういったツールが向いているのかといった具合だ。
 今回は、そこに新たな流れが加わっているように感じた。デジタル作画の普及はもはや既定路線、そこからさらに制作工程の管理やプリプロダクション(企画・設定・絵コンテなど)のデジタル化に関心が広がっているのだ。アニメーション制作のデジタル化は、ポストプロダクション(撮影・編集・特殊効果など)からプロダクション(作画・背景など)、さらに全体に及んでいる。

メインセッションのひとつ「新時代のアニメ統合環境プラットフォームについて」は、まさにそうした内容だった。プロデュース会社のアーチ、そして制作ツール開発・支援の横浜アニメーションラボが、様々な角度からのアニメーションのデジタル化の意味と可能性を話題にした。アーチ代表取締役の平澤直氏、横浜アニメーションラボ代表取締役の大上裕真氏が登壇した。
 そもそも今回のセッションは、制作現場に密接な横浜アニメーションラボとプロデュースが中心のアーチが並ぶ、少し変わった取り合わせである。最初は不思議に思えるこの組み合わせも、全体を聴き終わったあとでは納得がいく。

■デジタルでのタイムシートで何が変わる?
 横浜アニメーションラボは、その名前のとおり横浜市内に拠点を持つ異色のアニメ会社だ。しかし異色なのは所在地だけでない。制作ツールの開発や作画支援をすると同時に、自らも制作をすることになど枠にとらわれない。技術開発とアニメーション制作が一体化しているのが特長である。
 そんな環境から生まれた成果のひとつが、今回紹介されたUAT(Universal Animation Timesheet)である。UATはこれまではカット袋にいれて管理されていたカットごとのアニメーション工程をオンライン上で管理する仕組みである。

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まずUAT上で作品のタイムシートを構成し、サーバー(Dropbox,Google Drive,任意のローカルサーバ)で作画データを管理しながら、UAT上にあるタイムシートと素材をリンクすることで、作画のあがりと制作の進捗状況をリアルタイムに確認ができるものである。また全行程をオンライン上で管理することも可能だが、タイムシートをプリントアウトして渡すこともできる。現状に合わせた融通が利く、使い勝手の良さが特長だ。UATは単純なタイムシートのデジタル版であるだけでなく、エフェクトまで含めたアニメーション制作工程全体の効率性も目指されていることに特徴がある。

■テクノロジーがわかるプロデューサーの時代が到来
 一方アーチの関わりは、プロデューサーサイドからと方向が異なる。しかしアニメーション制作の効率化で新しいテクノロジーを重視する点では横浜アニメーションラボと同じだ。
 アーチのプロダクションに対する事業コンセプトは、制作のためのサポートである。スタジオが制作に集中できる環境づくりで、それは「企画開発」や「制作受注」、製作委員会との「連携支援」「宣伝」「商品展開」など幅広い分野をカバーする。その重要なパートのひとつが「技術開発」だ。技術動向の調査やツール開発支援などをする。
 「IT業界とアニメの現場をつなぐ」のコンセプトは分かりやすい。しかし専門性が増す一方のテクノロジー、そしてアニメーション業界特有のニーズのふたつを理解することは簡単ではない。これを実現することでアーチの事業が成り立つわけだ。
 トークでは、これまでの代表的な取り組み例を紹介。さらに同社の技術顧問で国立研究開発法人・産業技術総合研究所にてユーザーインターフェースと統合環境設計の研究・開発に取り組む加藤淳氏が、コンピュータグラフィックス(CG)やヒューマンコンピュータインタラクション(HCI)分野の最新の研究開発とアニメ制作の現場をつなぐ意義を語った。

アーチ・平澤直氏

アーチ・平澤直氏

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横浜アニメーションラボ、アーチの両社に共通するのは、アニメーション制作のデジタル化が今後ますます進むとの認識だ。それはポストプロダクションやプリダクションだけでなく、制作工程全体の管理に及ぶ。アニメーション制作の現場、プロデュース・企画立案との立場の違いはあるが、そうした環境の変化でアニメーション制作者がいかに課題を解決するかが今後の鍵になる。
 両社はテクノロジーに対する見通しで重なるだけでなく、作る側とサポートする側と異なる視点を持つ点では相互補完関係にある。今回のアーチと横浜アニメーションラボという組み合わせも、ここから理解できる。全体を通す中で、デジタルツールを通したアニメーション業界の変化の流れが分かる仕組みなのだ。

最後のアニメデジタル技術の見通しで、平澤氏がエンジニア出身のプロデューサーが生まれるのではと話したのが印象的だった。アニメーション制作のデジタル化は今後もさらに進む。そのためにはツールだけでなく、高度な人材も必要とされているというわけだ。(数土直志)

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  • アーチ・平澤直氏
  • 加藤淳氏
  • 横浜アニメーションラボ・大上裕真氏

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