2020年2月23日(日)20:00
デジタル作画専門の海外スタジオ設立、自動中割り機能…アニメ制作デジタル化の新潮流
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毎年2月に開催されている「ACTF」をご存知だろうか。「アニメーション・クリエイティブ・テクノロジー・フォーラム」の略称で、「アニメ制作のデジタル化」をテーマにセミナーや企業の商品・サービス紹介、名刺交換会などを設けている。
参加者はアニメ業界で働く人に限定されるが、今年は300人を超えた。さらに地方在住者や学生向けに主要セッションを全国各地の専門学校にライブ中継する。今年で6回目を迎えるが、デジタル制作の最新情報を得る貴重な場所として活用されている。
アニメ業界を見渡すと、アニメ制作のデジタル化はまだ実現は遠いとの意見も多い。ところがACTFでは、アニメ制作のデジタル化は不可避との見方が多かった。デジタル化の導入の是非でなく、どの様にスムーズにデジタルを取り入れていくかが、現在の課題だと指摘する。
さらにデジタル化の潮流の変化も感じた。これまでACTFでは手描き作画に替わるデジタル作画が大きなテーマだったが、対象となるデジタル分野がいっきに広がったからだ。
出展ブースの企業・団体・個人は昨年のほぼ倍で過去最大の23団体。これまでは作画ツールや制作ソフトのメーカーが中心であったが、今回は絵コンテのデジタル化や制作管理のシステム、ネットワークのサポート、さらに膨大なデータを保管するクラウドサービスなど広い分野にわたる。アニメ制作のデジタル化が、多分野で同時に進んでいることが分かる。
制作管理では、クリエイターのプロジェクト管理システムをアニメ向けにしたMUGENUPの管理ツール「Save Point for アニメ」セミナー、メモリーテックの「タイムシート・カット袋・カット表のデジタル化」がセッションでも披露されていた。今後の新たな潮流となりそうな分野だ。
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制作のデジタル化に懐疑的な意見に、デジタル化がかえって制作の煩雑さと時間、コストを増しているとの指摘がある。
デジタル化によるコストアップの問題は、アナログとデジタルの両方の工程が併存していることが大きい。アナログからデジタル、デジタルからアナログの変換作業が頻繁に発生するためである。しかしもし制作プロジェクトで全面的にデジタルが導入できれば、劇的な効率化が進むだろう。
そうした点では、オー・エル・エムの加藤浩幸氏が登壇した「デジタル作画は国境を超える!」が興味深いものだった。作画のデジタル化導入を、あえてマレーシアに設立した現地法人OLM Asiaで行う。すでに手描き作画のシステムが築かれている国内でなく、海外でゼロから基盤をつくる発想は合理的だ。2つのシステムを併存するコストを避けられる。
加藤氏によれば、OLM Asiaのスタッフは現地100人以上、日本からのスタッフが6人と国内の作画スタジオと比べてもかなりの規模に育っている。動画で当面は月産4万枚を目指すという。テレビシリーズを複数作品支えられるほどの規模である。
実際はこうしたケースは海外だけに限らない。セッションでも言及されたが、国内地方都市での作画スタジオ拠点の立上げでも同様である。デジタル作画のメリットは地方スタジオほど大きい。
未来の先取りでは、CACANiによる「別次元の進化! CACANi2.0 のスタジオ活用最前線を語ります」も面白かった。作画支援ツールとして開発されたCACANiは、国内では自動中割り機能で注目されている。
通常の作画アニメでは、ひとつのまとまった動き(1カット)を表現するにあたり、キーとなる数枚の絵を原画担当が描き、さらに動きをよりスムーズにするその間の絵(中割)を動画担当が描き足す。CACANiは、その中割の絵を自動的に生成する。デイヴィッドプロダクションをはじめいくつかの国内スタジオで実践投入も始まっている。
「クリエイティブの源泉である動きをソフトが置き換えられるのか?」と思ってしまうが、セミナーを聞くとその前提が異なっていることがわかった。CACANiはあくまでも線を引くツールに過ぎず、実際のクリエイティブは人が判断する。1カットの動画枚数やタメ、ツメ、動きのバランスは動画担当者が指定、チェック、修正していく。
逆に言えば、CACANiを使用することで、どの程度が効率化できるのかも気になった。ソフトのルールを覚えるなど手間は多い。また最終的に人の判断に依存するだけに、線を描く作業こそ減少するが、効率化に関しては未知数と感じた。
そうであっても、こうした試行錯誤を繰り返すなかで、デジタル制作のもっとも効率的な方法をみつけていくのが今の流れなのである。アニメ制作における課題の理解、そして将来のデジタルの可能性を感じさせる面でACTFは興味深い。苦労が多いデジタルの導入であるが、今後のさらなる発展を期待させるACTFであった。(数土直志)
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