【「るろうに剣心」インタビュー】斉藤壮馬が守りたい人とは？　いろんな「おろ」も振り返る

和月伸宏氏の大ヒット漫画をテレビアニメ化した「るろうに剣心 －明治剣客浪漫譚－」の第2クールが放送中だ。斎藤一の登場、そして新たな戦いの幕上け――怒とうの展開を前に、主人公・緋村剣心役の斉藤壮馬に第1クールを振り返ってもらった。

そして名ゼリフも多い「るろうに剣心」。第1クールでの剣心の印象的なセリフ「剣一本でも、この瞳に留まる人々くらいなら、なんとか守れるでござるよ」にかけて、「今、斉藤壮馬が守りたいもの」を聞くと「守りたい人」を教えてくれた。（取材・文／編集部）

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■剣心が体に馴染むまで

――「るろうに剣心」といえば、最初のテレビアニメ、実写映画、舞台など、さまざまなコンテンツが制作されています。演じるキャストごとに「それぞれの剣心像」を表現してきたように感じますが、「斉藤壮馬が演じる緋村剣心」は何を大切にしていらっしゃいますか？

「斉藤壮馬が演じる緋村剣心」ということはあまり考えていません。今回は、原作漫画に準拠してアニメーションを再構築するというテーマで制作が進んでいるので、演出や作画、そして作劇上の緋村剣心というものを過不足なく表現できればいいと思っています。

僕自身が強いこだわりを持って「こういう演技的な演出をしています」ということではないのかなとも考えています。作品があってキャラクターがいるので、そこにあえて別の角度から強引なアプローチをする必要はないのかなと。

ただ、やっぱり最初の数話は「緋村剣心を演じなければいけない」という感覚が強かったです。キャラクターがだんだん体になじんでいくにつれて、キャラクターを強く意識して話し、立ち振る舞うのではなく、「普通にしゃべる」ということができるようになってきたと感じています。

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■第1クールで心を動かされた薫の叫び

――第1クールで印象に残ったシーンを教えてください。

刃衛（じんえ）戦が印象残ってますかね。剣心が「今の自分のままでは大切な人を守れないのかもしれない」と過去に目を向けるきっかけになった戦いでした。刃衛戦は印象に残っているし、そこで薫殿がさらわれてしまって、薫を助けるために戦うわけですけど。

そこで、薫が刃衛にかけられた心の一方（しんのいっぽう）を自ら解きます。剣心を救いたいという思いによって術を解くのですが、その時の、コントロールされたお芝居ではない本物の叫びがすごく印象的でした。収録時も印象的でしたが、オンエアで改めて見て、さらにグッときました。その叫びを通して「剣心はだから（人斬りになるのを）踏みとどまれたんだな」とわかったというか。

剣心にとって、どんどん薫が特別な人になっています。自然とそう思えるよう、的確に気持ちを込めてくれる高橋（李依）さんは素晴らしい役者だなと思いました。

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■食事に行ったキャスト4人が“シーンとなった”出来事とは？

――剣心が体になじむまでの過程として、共演陣の存在も大きかったのでは？

そうですね。自然な掛け合いの中で肩に力が入りすぎていたということに気づきました。会話、掛け合い、対話の中で気づかされることがすごくたくさんあります。現場の雰囲気もすごく良いです。

――共演陣との思い出深いエピソードはありますか？

初期剣心組（剣心、薫、弥彦、左之助）のキャスト4人（斉藤、高橋李依、小市眞琴、八代拓）でよくご飯に行くのですが、真面目な深い話もしますし、作品の話も多いですね。「今日の収録はこうだった」「ここはもっといけたかもしれない」みたいな。あとは、みんな作品のファンでもあるので「まだ出てきていないこのキャラのキャストさんは一体誰だろう？」みたいな話もします（笑）

この間、4人で個室のお店でご飯を食べながら、そんな話をしていたら、店員さんが入ってきて「『るろうに剣心』ですか？」と聞かれてたんです。それで「（アニメのキャストとわかっているのか、そうではなく作品のファンなのか）どっちだ？」みたいになってシーンとしていたら、「僕、連載開始当初からのファンなんです」と言われて、「あ、そっちか」と（笑）。我々は思い上がっていたなと反省しました（笑）

それくらい、友人としてなんでもない話もしますし、収録ブースを離れても作品について語り合える。すごくいいチームだなと感じています。

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■「同じ『おろ』はひとつたりともない」

――剣心の口ぐせといえば「おろ」ですよね。

「おろ」は、剣心の特徴的な言い回しなので、家で練習しながら「どんな『おろ』がいいだろう」と考えました。

――「おろ」の自主練習をされたということですか？

そうですね。テープオーディションの段階から、家の中でいろんな「おろ」を練習しました。オーディションでは、「バトルのアドリブを何パターンかください」という課題の後に、「『おろ』を自由に何パターンかやってみて下さい」という課題があって、それが最後の課題でした。

――自主練期間を経て、収録での「おろ」はどうでしたか？

僕が1話の収録の時にもっていった「おろ」は、「そこまではっきりとおろと発音しすぎないパターン」でした。アレとオロの中間みたいな感じ、ナチュラルなリアクションみたいに演じました。でも協議の結果、しっかり「おろ」と言う方向でいきましょうということになって。だから序盤は、かなりはっきりと「おろ」と言っています。そうやって、いろんな表現が出てきて、「おろ」ひとつとってもチームの皆さんと一緒に作れている感覚があります。

――アニメでの、剣心の最初の「おろ」は覚えていますか？

1話で剣心が最初にしゃべる言葉が「おろ」ですが、実はあの場面は、「おろ」と言う前に、薫に「待ちなさい！」と言われて気づくという息のアドリブを入れていました。オンエアでそこがカットされた結果、剣心の第一声が「おろ」になりました。

そうなったことで、インタビューなどで「第一声が『おろ』ですが」と言っていただけるので、めちゃくちゃしゃべりやすいです（笑）。ありがたいです。

――その他に印象に残った「おろ」はありますか？

「おろ」を足しまくった回があります。「おろ」を使ってユーモラスに描いているシーンがあったので「じゃあここは遊び心があってもいいかな」と思って足してみたら、大量の「おろ」が使用され、印象的なシーンになりました。

――第1クールもいろんな「おろ」がありましたね。特に「おろろ～」がかわいかったです（笑）。

ありがとうございます（笑）。同じ「おろ」はひとつたりともないので、そこに注目しても楽しんでもらえると思います。

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■斉藤壮馬が守りたいものと、なかなか守れない（？）もの

――第1クールの剣心の名ゼリフのひとつ「剣一本でも、この瞳に留まる人々くらいなら、なんとか守れるでござるよ」にかけて、質問させてください。声優として素晴らしいキャリアを積まれ、30代に入られた斉藤さんが「今、守りたいもの」はなんでしょうか？

自分は環境や人に恵まれていると思うので、それを当たり前だと思わないようにしていきたい、そこにあぐらをかいて「そうしてくれて当然」みたいにならないようにいたいです。人は慣れてしまうものだから。こういう質問をしていただくと、「そうだよな、これは特別なことなんだ」と初心に立ち返ることができるのでありがたいです。

だから、守りたいものは「人」です。すべての大前提ですが、人とのご縁、力を貸してくださる方々の思いを大切にしていきたいです。

あとは睡眠時間を守りたいです（笑）

――急に話の方向性が変わりましたね（笑）

僕はすごいロングスリーパーで、寝つきがめちゃくちゃ悪くて、朝も弱いタイプなんです。声優業は不定期なスケジュールなので、夜遅くなったりすることもあるので、理想の睡眠時間が毎日確保できているわけではないんです。だからちょっとでも健康な状態でいるというのが、お芝居においては大事だなと30代に入ってより感じるようになりました。

――良い入眠方法は見つかりましたか？

呼吸法やよく眠れるBGMなどいろいろ試しましたが、なかなか……。手っ取り早いのは肉体的に疲れることだと思って、最近はトレーニングをしています。ジムに行くと肉体的には疲れるのですが、ずっと眠れるわけではなくて。トレーニングを始めたばかりの頃は寝つきがよくなったと思ったのですが、ある程度経ったら、体にどのくらいの負荷がかかるか逆算できるようになってしまって。なかなか成果が出ないので……睡眠時間を守るために、何か良い方法があったら教えていただきたいです（笑）

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