2024年3月21日(木)21:00
【第2回新潟国際アニメーション映画祭】グランプリはカナダ作品「アダムが変わるとき」、「アリスとテレスのまぼろし工場」が傾奇賞
コンペティション部門受賞者と審査員
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新潟市で開催された「第2回新潟国際アニメーション映画祭」の長編コンペティション部門授賞式があり、カナダのジョエル・ボードロイユ監督の「アダムが変わるとき」(原題:When Adam changes)がグランプリを受賞、岡田麿里監督の「アリスとテレスのまぼろし工場」が傾奇賞を受賞した。
今年のコンペティション部門への応募数は昨年の倍以上となる29の国と地域から49作品が集まり、12本がノミネートされた。「アダムが変わるとき」は、周りの人たちからの嘲笑や否定的な発言で、身体が変化するという奇妙な特異性を持つ15歳のアダムの人生を描く。
「アダムが変わるとき」
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審査委員長のノラ・トゥーミー監督は「見終わった後もずっと心に残る作品。生きることのぎこちなさのとても深い何かを語っている。この作品の監督とチームはいくつかの一見小さな出来事から魔法のようなドラマを生み出しました。ユーモアと優しい心のバランス、アニメーションに対する知識と技術力を駆使して観客が登場人物とつながることを可能にしています」とグランプリ作品を評した。
ボードロイユ監督は「コンペに選ばれたこと、多くの人々に会えてお話しできたことで十分な贈り物だと思っていました。この作品が今ここに存在できている理由は、多くの才能ある人に巡り合えたからにほかなりません。感動でいっぱいです」と喜びを語った。
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「アリスとテレスのまぼろし工場」に贈られた「傾奇賞」(KABUKU Award)は、本映画祭ならではの賞で、「非常に美しいアニメーション、そして負った傷を乗り越えて、さらに大きく成長することとはなにかを詩情豊かに表現することにより、大人のへの成長譚を新たな高みに昇華させた作品」と評された。トロフィーを手にした岡田監督は、「この作品はスタッフ一丸となって、汗も鼻水もたらしながら走り抜けた作品。その熱意にこのような賞をいただいて答え合わせをできたような幸せな気持ちです」と笑顔で語った。
(C)新見伏製鐵保存会
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境界賞「マーズエクスプレス」と奨励賞「インベンター」の監督は不在のため、プログラム・ディレクターの数土直志氏が代理でトロフィーを受け取った。審査員の一人で「時をかける少女」「サマーウォーズ」など細田守監督作品に携わるプロデューサーの齋藤優一郎氏は、国籍の異なる3人の審査員それぞれに、アイデンティティ、マーケット、カルチャーの違いや認識の差があることを知ったと述べ、「そういう差を埋めるため、互いの価値観を受け入れるためにこのような国際映画祭があると思う」とコメントし、「今年は子どもの将来に向け、子どもたちの未来を肯定する作品を作っているチームに奨励賞を贈った」と話した。
また、授賞式では技術的貢献に対するアワード大川博賞と蕗谷虹児賞の贈賞も行われた。
スタジオに贈られる大川博賞は、「映画大好きポンポさん」を手がけたCLAP、クリエイター(アニメーター/美術/脚本)に贈る蕗谷虹児賞は、「アリスとテレスのまぼろし工場」の東地和生氏(美術監督)、「君たちはどう生きるか」の本田雄氏 (作画監督)、「かがみの孤城」の丸尾みほ氏 (脚本)がそれぞれトロフィーを受け取り喜びを語った。
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CLAPの松尾亮一郎氏:「映画制作を中心に作ったスタジオですので、こういう場で評価いただけたことが励みになる。現在『映画大好きポンポさん』の平尾隆之監督と新作を作っていますし、別の監督とも新作を作っています。今後名前を憶えていただけるとうれしい」
東地和生氏:「当たり前の話ですが背景美術はたくさんのスタッフがいて、オーケストラにたとえると私は指揮者でひとりひとりの演奏があってなり立ちます。私のもとで背景を書いてくれたスタッフ、素晴らしい作品に出会わせてくれた方々にも感謝します」
本田雄氏:「足掛け7年かかって、宮﨑さんのこれが最後の作品だとの覚悟のもと、出来たアニメ映画です。宮﨑さんと机を並べる仕事は緊張感のある現場でしたが、できるだけ宮﨑さんの意向に沿ったものにしたかった。7年かけると、終わった感激とともにさみしい気持ちになる感慨深い作品になりました。宮﨑さんが最後の覚悟で作ったのは間違いないですが、きっとまた次回作がなにかあるんだと思います。その時は僕もぜひ力になれたら」
丸尾みほ氏 :「昨年は海外のいろいろの国で上映していただく機会に恵まれた。現地の方とお話をして、日本と同じようにどこの国でも居場所のない子供たちは少なからずいることを知った。映画を見ることで何かが解決するのは難しいと思いますが、仲間がいる、助け合えることはすばらしいこと。辻村深月さん原作のこの映画を世界中に見てほしい」
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審査員長のノラ・トゥーミー監督は「皆さんの映画はスクリーンから私たちの心をつかみました。アニメーションという美しく、世界的な芸術形態に携わるものとしてとても誇りに感じています。皆さんの作品はアニメーションの未来に希望をもたらします。観客と作品を楽しむことは格別な体験です。次にどんなものが作られるか楽しみにしています。開催から2年目ですが既に世界中の映画製作者、観客に新潟の映画祭は創造性と文化のつながりをもたらす存在として認識されています。来年の映画祭が楽しみです」と総評し、映画祭主催者、スタッフ、観客にも感謝を述べた。
最後に井上伸一郎フェスティバルディレクターが会期を振り返り「第1回に比べてはるかに多い観客を動員することができ、大成功のうちに第2回が終わります。この熱気を新たな年につなげて参りたいと思います」とコメントし閉会を宣言した。
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3月15日から20日、全6日間の会期では、映画上映のほか、国内外の人気監督や映画業界人によるトークイベント、学術的なフォーラムなど様々なイベントが行われた。週末や祝日のみならず、平日日中の上映にも多くのアニメ映画ファンが会場に足を運んでおり、本映画祭の注目度の高さがうかがえた。
▼各賞は以下の通り
グランプリ「アダムが変わるとき」(カナダ)ジョエル・ボードロイユ監督
傾奇賞「アリスとテレスのまぼろし工場」(日本)岡田麿里監督
境界賞「マーズエクスプレス」(フランス)ジェレミー・ペラン監督
奨励賞「インベンター」(アメリカ)ジム・カポビアンコ、ピエール=リュック・グランジョン監督
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