2022年1月21日(金)19:00
【前Qの「いいアニメを見にいこう」】第40回 「スローループ」で感じる「きらら」のありがたみ
(C)うちのまいこ・芳文社/スローループ製作委員会
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これだ、これだよ。見るほどにそんな気持ちのこみ上げる「スローループ」の話を、今年最初の更新ではします。しますったら、します!
今期も魅力的なヒロインの活躍を作品のおもしろさの核に据えたタイトルは花盛り。あんなタイトルもこんなタイトルもあるんですが、どうもこう、アラフォーの私からすると味付けの濃いタイトルが多いんですよ。
こだわりの映像美からあふれ出る作り手のフェチズム。限界ギリギリを攻めるセクシー描写の嵐。そういうものが悪いとは、まったく申しませぬ。20歳……いや、10歳若かったら、私も目を血走らせながら画面にかじりついて見ていたことでしょう。しかし今の私は、もうちょっと穏やかに美少女を愛でたい。「エロ」よりも、「かわいい」がほしい。
「娘を見守る親のような目線で……」などとは申しますまい。それは欺瞞ですよ。やっぱりドキドキしながら見てはいるんです。恋、しちゃってるでござる。でもさー、別にその、リアル10代のころだって、クラスメイトの女の子のことをドギツい、生々しい気持ちで四六時中眺めていたわけではないでしょう? 異性への思いのグラデーションの中で、あくまでほんのりと、「なんかいいな」「ときめくな」くらいの気持ちを大事にしたいわけです。わかってよ、この気持ち!!
……というわけで、「スローループ」なんです。ちょっと人見知りな海凪ひよりと、天真爛漫な海凪小春。両親の再婚で義理の姉妹になった女子高生2人が、「釣り」を通じて少しずつ距離を縮めていく様子を、日和の幼馴染で釣具店の娘の吉永恋をはじめ、周囲の人々も交えながら穏やかに描いていくアニメ。原作は芳文社の「まんがタイムきららフォワード」で連載中の……といえば、もうおわかりですね? そう、僕の私の「きらら」系アニメの最新作なわけです。つまり私、今期、あらためて「きらら」アニメのありがたみを噛みしめているのですね。
まずキャラクターデザインの嫌味のなさ。原作の絵柄の持ち味からしてそうなのですが、滝本祥子さん(個人的には「武装少女マキャヴェリズム」での仕事が印象深い方ですね)のアニメーションキャラクターデザインとしての処理も実にグッド。そして1話冒頭でいきなり小春ちゃんがスクール水着姿になるとき。胸元をどどんとアップにして、若干濃いめの処理も乗せはするものの、あまり扇情的には見せない演出のさじ加減。原作でもさっぱりとした描写ですが、アニメでここをエロくすることはいくらでも可能なわけです。でも、やらない。
それはその後の描き方でも同様で、この作品はあくまで、思春期の女の子たちが「釣り」趣味を通じて交流していくなかでの、ほのかな心の交わりを見せようとしているわけですね。2話でひよりちゃんと小春ちゃんの仲睦まじい様子を見て、恋ちゃんがほんのり嫉妬しそうになるあたりの空気。これ、これなのよ!!(机をバンバン叩いていると思いねえ)女の子の「かわいい」はこういうところに表れるの!! アーッ!!!!
……というわけで、昨今はどうしても、いろんな意味で味付けの濃いアニメが話題になりがちです。バズりやすいからね。繰り返しますが、そういう作品もまったく悪いとは申しませんが、穏やかな、落ち着いた、現代の古典ともいうべき味わいの「スローループ」みたいなタイプの美少女もの作品をアニメファンのみなさまにおかれましては見逃していただきたくない。そんな強い思いで、このたび、筆を執った次第でありました。それが私の30代最後の叫び(※来月の15日で40歳になります)。以上!!
前Qの「いいアニメを見に行こう」
[筆者紹介]
前田 久(マエダ ヒサシ) 1982年生。ライター。「電撃萌王」(KADOKAWA)でコラム「俺の萌えキャラ王国」連載中。NHK-FM「三森すずことアニソンパラダイス」レギュラー出演者。
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