2022年9月24日(土)19:00
【前Qの「いいアニメを見にいこう」】第44回 アニメ「てっぺんっ」に乗り遅れるな!(と、遅れたヤツがいう……)
(C)てっぺんグランプリ実行委員会
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激しく後悔しています。「てっぺんっ!!!!!!!!!!!!!!!」に乗り遅れてしまったことを。
毎クール、アニメの新番組は、最低でも2話くらいまでは大体チェックするんですよ。だから当然、この作品もチェックしていたんです。でも「てっぺんグランプリってお笑いの甲子園みたいなものの優勝を目指して切磋琢磨する5組のトリオ漫才の女の子たちの物語か。高松信司監督(※今作での正式なクレジットは「総監督」)らしいギャグアニメだなあ。キャラもかわいいし、これはもう、ある一定以上のおもしろさがあることは確定だろうな。こういう安全牌みたいな感じの作品は、あとでまとめて見ることにしよう」なんて、スレたオタクっぽいムーブをキメてしまったんですね。そのあと、2話の放送がいろいろあって飛んでしまったこともあり。
もうね、時をさかのぼって、そんな舐めた考えでいたあの日の自分に蹴りを入れてやりたい。見ろと。黙って視聴を継続しろと。お前、損するぞと。というのもこのアニメ、毎話違ったシチュエーションでの笑いをぶっ込んでくる作品なんですよ。「ギャラクシーエンジェル」とか「探偵オペラ ミルキィホームズ」みたいな感じの。好きじゃん! お前、絶対に好きじゃん! なんで見逃すかな、もう! もう! 過去の俺のバカバカバカ!
シリーズの中でも個人的に印象深い話数を挙げると、まずはその第2話。「コンヤハチジ ダイトウリョウ アンサツ ケッコウ」と書かれた絵馬を、今作に登場するお笑いトリオのなかでもメイン格の扱いであるヤングワイワイが見つけてしまったことから始まり、勘違いが勘違いを招いてドタバタのスケールが周囲を巻き込みどんどん加速していく、群像劇仕掛けの1本。
某24時間のあいだに起こる事件を描いた海外の人気刑事ドラマ風の演出を取り入れながら(ゲスト声優に小山力也さんを呼んでいるのがスゴい)、総勢15人の美少女キャラクターたちの個性を手際よく視聴者に印象づける。そのうえで笑わせる。さらっとやっているが、かなりの離れ業でしびれてしまう。そしてめっちゃ笑う。
続いて取り上げたいのは第5話。登場人物は3人、場面設定はほぼバスの車中、そんな限定状況で展開するループもの。言ってしまえば、テレビシリーズの中での制作カロリーのコントロールのために設定されたような省エネ的な話数なのだが、そんなことを微塵とも感じさせない……というか、むしろその状況を逆手にとって、強烈なインパクトを与えてくれる。すげえ。そしてやっぱり笑ってしまう。
第8話もいい。映像の雰囲気にくわえて、BGMまで絶妙に雰囲気を寄せた「ザ・○ン○ィクション」のパロディに始まり、ドキュメンタリーという表現形式のはらむ本質的な問題にギリギリまで迫った社会派な1本。同じ映像素材を元にしても、編集によってガラッと印象が変わってしまうことを、こんなにもアニメで巧みに描けるものかと。あ、ちなみに、このアニメはボケとツッコミのテンポをタイトにするために、編集時にかなりシビアな調整をかけているそうです。そんなメイキング的な小ネタを想像すると、「編集」をエピソードの中心に据えていることにますます何らかのメッセージ性を読み取ってしまうわけです。深いっ! 深すぎるっ! と、若干電波を受け取りつつ、マスメディアの端くれにいる人間としてなんともいえない気持ちになりつつ、これもまたやっぱり、笑わずにはいられない。
いやー、どれもまとめて一気に見たときにも、十分おもしろかったんですよ? おもしろかったんですけど、絶対に毎週、「おいおい、次は何をやらかすんだよ!?」と思いながら見たほうが楽しかったに違いないのです。あー、くやしい。
さて、そんな「てっぺんっ!!!!!!!!!!!!!!!」ですが、このコラムが公開されるころには、最終話の放送が間近に迫っております。直前の11話でヤングワイワイにまさかの出来事が起こり、ショッキングな引きが作られ、次回予告にも既にカオスな予感が満ちている。
これはもう「事件」の予感しかしないわけで。過去の私と同じ後悔をしないでほしい。ぜひ今からでも遅くないので、配信を駆使して、最終話の放送に追いついてほしい。このコラムを更新直後に読んでくれていたら、まだギリギリ間に合うんじゃないかな? ほかのすべてをかなぐり捨てて、めざせ「てっぺんっ!!!!!!!!!!!!!!!」……と、そんなことを強く願って、今回は筆を置く次第。
前Qの「いいアニメを見に行こう」
[筆者紹介]
前田 久(マエダ ヒサシ) 1982年生。ライター。「電撃萌王」(KADOKAWA)でコラム「俺の萌えキャラ王国」連載中。NHK-FM「三森すずことアニソンパラダイス」レギュラー出演者。
作品情報
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