2024年9月21日(土)19:00
【前Qの「いいアニメを見にいこう」】第56回 「真夜中ぱんチ」のまっとうさを愛す
(C)2024 KADOKAWA/P.A.WORKS/MAYOPAN PROJECT
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この連載もそこそこ長く続いているけれど、過去の回を振り返ると、とにかく私は「普通に面白い」ことに一貫してこだわっているのだな、ということがわかる。ここでいう「普通」の意味は、厳密に定義して用いているわけではないが、キャラクターが立っていて、演出や作画に大きな破綻がなく、しばしば「おっ」と思うような気の利いたカットやシーン、セリフがあり、笑って、泣けて、ちょっとだけ人生の真実のようなものに触れられた気がする……みたいなこと。ようするに、エンターテインメントとしてごくごくまっとうなアニメのことを、きちんと評価したいし、記録したい。そんな気持ちが、この連載で取り上げる作品を選ぶひとつの基準としてある。
現在放送中の「真夜中ぱんチ」は、この意味で「普通に面白い」アニメだ。
主人公は、NewTuber(今作の作品世界におけるYouTuberのような存在)として成功することを夢見て3人組の女性ユニットとして活動し、中堅くらいの成功を収めていたものの、生配信中の問題行動(鉄拳による暴力)とその後のSNS裏アカウント発覚で大炎上し、仲間から見捨てられてしまった「まさ吉」こと真咲。騒動からさほど間をおかず、個人の動画配信チャンネルを立ち上げて再起を図るものの、真咲自身に反省の色があまり見えないこともあって、大炎上をきっかけに湧いたアンチからの執拗な攻撃が続き、復活の目処は立たない。途方に暮れていた真咲だったが、酔った勢いで入り込んだ深夜の廃病院(迷惑系主人公……)で、自分の血に猛烈な執着を示すヴァンパイアのりぶと運命的な出会いを果たす。
そこから若干の紆余曲折を経て、真咲はりぶとその仲間のヴァンパイア、苺子、十景、譜風によるNewTuberユニット「真夜中ぱんチ」を結成。自身は動画に出演することなく、裏方として企画や撮影、動画編集を手がけ、着実に実績を積んでいく。目標はチャンネル登録者数100万人。それは、真咲がNewTuberとして活動をはじめてすぐに掲げた目標の数字であり、「マザー」と呼ばれるヴァンパイアたちを管理する強大な存在から、トラブル続きの真夜中ぱんチがずっと変わらぬ活動を続ける許可を受けるため突きつけられた条件でもある。
まず何より、この真咲、りぶ、苺子、十景、譜風の5人が揃って、わちゃわちゃと騒いでいるだけで楽しい。自分の欲望に正直で、手段を選ばないようにみせて、根は純粋な真咲。屈折しているようで実は妙に生真面目なところが、とても愛せるキャラだ。威勢がいいようで、その実、他人の目を気にしまくり、炎上後のデジタルタトゥーに敏感になっていたりするところも、ネットでの素行が荒っぽい(オブラートに包んだ表現)私としては他人事じゃないのもあって、実に推せる。めっちゃ好き。そんな真咲と、素直で元気だが、時に強大な力を秘めたヴァンパイアとしての怖さと、過去の陰を感じさせるりぶのやりとりがいい。真咲の美味しい血に情欲を掻き立てられたときのルパン三世ばりの欲の弾け方が、ちょっぴり懐かしいテイストもあってグッと来る。
残りのメンバーである、お馬鹿でリアクションが破天荒な苺子、大人しそうに見えて内に秘めたものは濃い譜風(YouTubeで公開されているマンガ紹介のショート動画をぜひ見てほしい)、ナチュラルなダメさと人の良さの塩梅が絶妙な十景の3人もそれぞれに魅力的。特に十景は、アニメでここまでしっかりとパチンコ好き(ふたたびオブラートに包んだ表現)の生態が描かれたことがあっただろうか? と感じるほどの生っぽさがたまらない。
この5人のキャラ立ちが端的にわかりやすいシーンとして、3話で罰ゲーム的に生にんにくをりぶ、苺子、十景、譜風が食べさせられるところを見てみてほしい。同じものを食べたときのリアクションの違いでキャラの個性がわかる……なんて話が少し前にSNSでバズっていたが、お手本のようにその意味が理解できる。そして笑える。
そんな5人のマリアージュに、さらに真夜中ぱんチの面々を監視する……といいながら、混ざりたくてしょうがないダメっ子風紀委員長のような立ち位置のゆき(一見すると生真面目な雰囲気なのに、二面性があって実は誰よりもヤバい美少女を演じたときの茅野愛衣さんってホントたまらんですね。しみじみ)が混ざったりして、ギャグのハーモニーがとても重層的かつ心地よい。映像のテンポ感もよく、おそらく意図しているのであろう、各話単位で作画や演出にいい意味で若干のバラつきがある(映像の品質のアベレージを保ちながらも、持ち味がバラエティに富んでいる)ところも、テレビアニメらしい魅力でたまらないものがあります。個人的なイチオシは第9話で、細かいリアクションで柔らかくはっちゃける作画が大変魅力的だった。
映像面だけではなく、そもそもエピソードの内容のレベルで、笑えるものから、思わずホロっと来てしまうものまで(4話とか、普通におじさんの涙腺にきて、思わずボロ泣きしてしまった)、1クールのオリジナルアニメでしっかりとさまざまなタイプの物語をやっているのが素晴らしい。
本稿の執筆時点では、残すところあと1話、最終話(12話)の放送を待つばかりの状況だ。11話では、炎上のトラウマで自分が動画に映れなくなっていた真咲が、過去を乗り越え、真夜中ぱんチの一員として配信者に復帰しようとしたところ、アクシデント的に情報が漏れ、ふたたび大炎上。真咲は癒えかけた心の傷を抉られ、仲間たちの前から失踪してしまう。その間、りぶも忘れていた過去を思い出し、姿を消してしまう。立て続けに事件が起こる中、さらにはマザーが真夜中ぱんチに対する態度を硬化させ、チャンネル登録者数100万人達成までの期限を前倒しする。絶望的なユニット存続の危機。追い詰められた真夜中ぱんチは、真咲に発破をかけ、りぶとの再会と、登録者数爆上げを狙って、一発逆転の奇策に出るが……。
予告を見る限り、最終話にはカロリーの高そうなアクションががっつり登場しそう。最後のこのひと盛り上がりの作り方も含めて、本当にしっかりと、丁寧にエンターテインメントをやっている。「普通に面白い」を求める人……アニメ視聴者の大半は実は潜在的にそうだと私は考えているのだが、そういう人には見逃さずにチェックしていただきたい。いいアニメなんです、ホント。
前Qの「いいアニメを見に行こう」
[筆者紹介]
前田 久(マエダ ヒサシ) 1982年生。ライター。「電撃萌王」(KADOKAWA)でコラム「俺の萌えキャラ王国」連載中。NHK-FM「三森すずことアニソンパラダイス」レギュラー出演者。
作品情報
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