2019年3月27日(水)19:00
【数土直志の「月刊アニメビジネス」】「ドラゴンボール超 ブロリー」の世界ヒットを支えた中南米の人気
(C) バードスタジオ/集英社 (C) 「2018 ドラゴンボール超」製作委員会
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■世界興行収入1億ドル超えの「ドラゴンボール超 ブロリー」
昨年12月14日に全国公開した「ドラゴンボール超(スーパー) ブロリー」は、興行収入が38億円を超える大ヒットになっている。しかしその人気は日本だけにとどまらない。2019年1月16日の米国公開を皮切りにスタートした世界興行が絶好調だ。
米国公開初日には、1999年の「劇場版ポケットモンスター 幻のポケモン ルギア爆誕」以来の日本映画でのデイリー1位に輝いた。週末興収でも4位に食いこむハリウッド映画なみの活躍だ。
そんなグローバルヒットを象徴するのが、世界興収1億ドル(約110億円)超えである。日本アニメ映画で1億ドル超えは、宮崎駿監督作品や「ポケットモンスター」「君の名は。」などごく限られている。「ドラゴンボール超 ブロリー」は、その一角に食いこんだ。
もっともグローバルで1億ドル超えと言っても、その稼ぎかたは様々。「千と千尋の神隠し」であれば大半は日本での興収であるし、「ポケットモンスター」なら米国、「君の名は。」では中国のヒットも大きい。「ドラゴンボール超 ブロリー」も、他の映画とは大きく違った特長がある。その鍵は、アメリカ大陸のメキシコ以南、“ラテンアメリカ”と呼ばれる地域だ。
3月25日までに、「ドラゴンボール超 ブロリー」が世界でもっとも興収を叩き出したのは日本の3464万ドル(BOX OFFICE MOJOより)である。その次が北米(アメリカ+カナダ)の3071万ドル。ただし日本と北米を合わせても約6500万ドルと、1億ドルにかなり遠い。
では3位は? メキシコの1045万ドルだ。続く4位がブラジルの435万ドル、5位にペルーの426万ドルと、いずれもラテンアメリカの国々だ。ラテンアメリカ全体を合計すると3389万ドルにもなる。日本に匹敵するだけでなく、北米の数字をも上回る。「ドラゴンボール超 ブロリー」の世界的なヒットは、「日本」「北米」「ラテンアメリカ」の3つの地域で支えられている。
■ラテンアメリカで突出する「ドラゴンボール」と「聖闘士星矢」の人気
ラテンアメリカの特長は、メキシコ、ブラジル、アルゼンチンといった大国だけでなく、ペルーやパラグアイ、チリでも大きな成績を残していることだ。例えばパラグアイの292万ドルはフランスやイタリアを上回るし、エクアドルの195万ドルは韓国やタイ、香港より遥かに多い。地域全体に人気が広がっている。
日本アニメの海外人気というと、北米やヨーロッパ、東アジアがよく挙がる。しかし、日本と馴染みが薄いラテンアメリカも、そうした人気地域のひとつである。
なぜラテンアメリカで、「ドラゴンボール」はこんなに人気なのだろうか? 地域でメジャーな米国系のケーブル放送局「カートゥーンネットワーク」などでたびたびテレビ放送されたことも理由だろう。昔から現地で馴染みの作品だった。かつての子どもたちが映画館に足を向けたと考えられる。
ただ再放送が繰り返されること自体が、この地域と「ドラゴンボール」の相性のよさを物語る。それはアクションたっぷりの派手な演出やストーリーなのかもしれない。
実はラテンアメリカで突出して人気が高い日本アニメは「ドラゴンボール」に限らない。「聖闘士星矢」もそうした作品だ。2014年に劇場公開された「聖闘士星矢 Legend of Sanctuary」の全世界興収は1715万ドルだが、このうち約40パーセントにあたる693万ドルがラテンアメリカである。日本の興収の3倍以上だ。
世界での日本アニメの人気、その楽しさは普遍とされることが多い。しかしやはりそれぞれに文化特性はあり、国や地域によって支持される作品やその理由が異なることも多い。「ドラゴンボール超 ブロリー」の世界興収をほどいてみると、世界のそんな日本アニメ事情も垣間見えてくる。
【「ドラゴンボール超(スーパー) ブロリー」の興行収入が高い国】
1.日本 3464万ドル
2.北米(米国+カナダ) 3071万ドル
3.メキシコ 1045万ドル
4.ブラジル 435万ドル
5.ペルー 426万ドル
【地域別の興行収入】
日本 3464万ドル
北米 3071万ドル
ラテンアメリカ 3389万ドル
ヨーロッパ 905万ドル
アジア(日本を除く) 150万ドル
*米国 BOX OFFICE MOJOの数字を2019年3月25日時点で集計
数土直志の「月刊アニメビジネス」
[筆者紹介]
数土 直志(スド タダシ) ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。国内外のアニメーションに関する取材・報道・執筆、またアニメーションビジネスの調査・研究をする。2004年に情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立、16年7月に独立。代表的な仕事は「デジタルコンテンツ白書」アニメーションパート、「アニメ産業レポート」の執筆など。主著に「誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命」(星海社新書)。
作品情報
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