2020年1月18日(土)19:00
【数土直志の「月刊アニメビジネス」】もっと大きくなる池袋 乙女の聖地から「コト消費」の拠点へ
アニメイト池袋本店、「Hareza池袋」前の通り
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■変わる池袋カルチャーは、乙女だけでない
最近、アニメ・マンガ・ゲームカルチャーの発信地として、池袋の存在感が高まっている。もともと全国有数のカルチャーエリアだが、中心は女性ファンだった。「乙女ロード」を中心に女性向けショップが集まり、”乙女のためのアニメ聖地“とされてきた。
それを象徴するのが2010年から毎年秋に一帯で開催される「アニメイトガールズフェスティバル(AGF)」である。女性向けのアニメ・マンガ・ゲームが出展して年々規模を拡大、19年には2日間でメイン会場約4万人、総来場は約10万人となった。アニメやゲームの総合イベントにも匹敵するが、参加者の大半は女性ファンだ。
女性ファンの存在感の大きい池袋だが、昨今は様子が変わりつつある。男女を問わないイベントが増え、グッズショップには男性ファンも多く見かける。より幅広いファンを惹きつけるのは、男性ファンが多かった秋葉原のパワーダウンと対照的だ。
秋葉原の観光地化、オフィス街化なども理由だが、もうひとつ映画館やイベント会場の充実度の違いもあったのでないか。例えば秋葉原には映画館はないが、池袋にはいくつもの映画館がある。
■成長する池袋の鍵に、映画館とイベント
近年「コト消費」がマーケティング界隈で注目されている。「コト消費」とは体験型消費である。これまでの「モノ消費」では所有することに満足していたが、「コト消費」では商品・サービスの購入で得られる体験に価値を見出す。
いまアニメファンの間でも、「コト消費」が広がっている。DVDやブルーレイ、フイギュア、書籍・雑誌の購入よりも、ライブやイベント、映画鑑賞などにより多くのお金を使う傾向が強まっている。
ファン活動の中心が購買である時代は、グッズや家電、マニアなガジェットまで様々なお店が立ち並ぶ秋葉原に優位があった。新作ゲームやグッズの発売日の長蛇の列は、街の雰囲気も盛り上げる。
しかし消費の中心がライブ経験に向かうと少し変わってくる。池袋には映画館が多く、またサンシャインシティを中心にAGFのようなイベントが開催される。ライブな体験と一緒にグッズ購入や飲食を楽しめる点で、池袋は使い勝手がいい。
昨年19年にはさらに大きな変化があった。7月に大型シネコン「グランドシネマサンシャイン」が完成、11月に旧豊島公会堂と旧豊島区庁舎の跡地に8つの劇場を収容する大型施設「Hareza池袋」が東池袋にオープンした。
「グランドシネマサンシャイン」は、KADOKAWAのEJアニメシアターと協力してアニメ作品に注力する。「Hareza池袋」には、ドワンゴ 「ニコファーレ池袋」やポニーキャニオン運営の未来型ライブ劇場 「harevutai」などがある。少し場所が離れるが、西口のシネ・リーブル池袋も連日テレビアニメを上映する「アニメZONE」を展開する。アニメを見て、体験する場所の充実度が増している。
「Hareza池袋」には今年夏にさらに巨大シネコン「TOHOシネマズ 池袋(仮称)」もオープンする。東池袋は一挙に日本有数の映画館・劇場の集積地となり、これが地域の成長を加速する。
■巨大化するアニメイトの目指すのは?
「Hareza池袋」が区関連施設の跡地であるように、池袋の発展の影に豊島区がある。アニメ・カルチャー関連のイベントも区が先頭に立って招致したものが多い。ただコアファン以外もターゲットにする区の方針は、これまでのファンカルチャーを変化させるのでないかとの懸念も浮かんでくる。
そこで大きな役割を果たすのが、アニメイトの存在だ。アニメ・ゲームのグッズを中心に全国120店舗以上を展開するアニメイトの本店は、まさに東池袋にある。複数のビルを展開する街の象徴だ。
アニメイトは、街づくりでも大きな役割を果たしている。現在注目されるのが、アニメイト本店と「Hareza池袋」の間に位置する旧豊島保健所跡地だ。先日、このビルを利用した「アニメイト池袋テンポラリーストア」の2月オープンが発表された。1階に「弱虫ペダル GLORY LINE」のオンリーショップ、4階では「〈物語〉シリーズ」や「鬼滅の刃」などを展開する。
他のフロアの活用は公式には未発表だが、豊島区の土地活用計画資料から一部が明らかになっている。それによれば当該地はアニメイトグループが36億円で購入、2、3、5、6、7階は今後それぞれ異なった出版社が活用する。変更がなければ出版各社による個性たっぷりの空間が登場するはずだ。
さらに計画では一時利用が終わったあとは、アニメイト本店と連結する10階建てビルに建て替える。300 人収容可能な多目的ホールや5つの劇場を設ける計画は、ショップというよりもエンタテイメントの複合施設にみえる。
アニメイトは「Hareza池袋」正面の中池袋公園で、「アニメイトカフェスタンドHareza池袋」もすでに運営する。計画どおり進めば、アニメイトはまるでひとつの街をプロデュースするかのようになる。
「Mixalive TOKYO」が開業する、「シネマサンシャイン池袋」が入居していたビル
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■出版社、テレビ局 池袋を目指すメジャー企業
出版社関連では、もうひとつ動きがある。「グランドシネマサンシャイン」のオープンに伴い営業終了した「シネマサンシャイン池袋」が入居していたビルと劇場施設を講談社が引継ぐ。LIVEエンターテインメントビル「Mixalive TOKYO(ミクサライブ東京)」として、3月19日から開業する。老舗出版社が本格的にライブイベント事業に乗り出すのも驚きだが、その場所が池袋だ。
プロジェクトには話題の企業が多数参加する。テレビ東京、キングレコード、ムービック、ブシロード、2.5次元ステージのネルケプラニング、YouTuberマネジメントのUUUMなど。コンテンツを保有し、資本力のある企業が多い。「Mixalive TOKYO」は、これまで商業施設とまた違う味わいを街に与える。池袋のエンタテイメントはさらに幅を広げ、2020年代に発展していきそうだ。
数土直志の「月刊アニメビジネス」
[筆者紹介]
数土 直志(スド タダシ) ジャーナリスト。メキシコ生まれ、横浜育ち。国内外のアニメーションに関する取材・報道・執筆、またアニメーションビジネスの調査・研究をする。2004年に情報サイト「アニメ!アニメ!」を設立、16年7月に独立。代表的な仕事は「デジタルコンテンツ白書」アニメーションパート、「アニメ産業レポート」の執筆など。主著に「誰がこれからのアニメをつくるのか? 中国資本とネット配信が起こす静かな革命」(星海社新書)。
作品情報
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炭治郎、禰豆子、善逸、伊之助が無限列車に乗り込むシーンで終了したテレビシリーズ最終話から繋がる劇場版。
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