2018年3月29日(木)20:30
ブシロード木谷高明氏のエンタメ仕事術(前編) マーケティングから大ヒットは生まれない
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コンテンツ開発の陣頭指揮をとるため、ブシロードの社長を退任した木谷高明氏。トレーディングカードゲーム「カードファイト!! ヴァンガード」(※以下「ヴァンガード」)、メディアミックスプロジェクト「BanG Dream!(バンドリ!)」、今夏にテレビアニメを控えている「少女☆歌劇 レヴュースタァライト」(※以下「レヴュースタァライト」)など、多くのプロジェクトを推進する木谷氏に、エンタテインメントビジネスに関するさまざまな話を聞いた。
取材・構成/五所光太郎(アニメハック編集部)
――昨年に社長を退任され、4月からは拠点をシンガポールから完全に日本に移されるそうですね。なぜ仕事のスタイルを変えたのでしょうか。
木谷:会社のこれからのことを考えたとき、スマートフォン向けのゲームアプリ、音楽、宣伝、この3つを直接担当したいと思ったんです。役職でいうと、コンテンツ本部長、ブシロードミュージック社長、広報宣伝部長になりますが、そうするとブシロードの社長が邪魔だなと。ならばそこを取ってしまおうかというのが、きっかけですかね。消去法で考えたら、社長がなくなったという。
――社長の仕事がなくなってみて、いかがですか。
木谷:すごくやりやすくなりましたね。社長をおりたのは、会社がプロデュースしている作品が増えているのも大きいんですよ。「ヴァンガード」、「バディ」(※「フューチャーカード バディファイト」)、「BanG Dream!」、「レヴュースタァライト」の4つはオリジナルコンテンツですし、そのほかにもプロレス(※新日本プロレスリング)やキックボクシング(※キックボクシングイベント 「KNOCK OUT」)もありますので。
今挙げたものは宣伝に関しては全部見ていて、「BanG Dream!」は現場まで見ています。「BanG Dream!」は、とても手間がかかっているのですが、そのぶん売り上げもあがるし、幅広くいろいろな部署でビジネスができている。今の自分の状況を、「前線から最前線へ」と言っていますが、「BanG Dream!」に関しては、ずっと最前線でやってきています。「最前線の部分を増やした」というのが正確な言い方かもしれません。
――現場まで見ることのできる範囲が広がったということですね。ほかに、どんなところが大きく変わったのでしょうか。
木谷:銀行や証券会社のような背広組の方とは基本会わなくてよくなりました。「社長と話してください」と言えるようになりましたから。管理部門なんかも、あまり見なくてよくなってお任せするようになりましたね。と言いながらも、今朝はちょっとしかったのですけれど。
――それは引き締まりますね。
木谷:会社というのは収益をあげるためにありますから、基本的には戦闘組織なんです。とはいえ、何を競いあっているかといったら、人に喜んでもらうことを競いあっているので、非常に健康的な競いあいではあるんですけどね。
数字で分析ばかりしていても、マーケティングからでてくるのは“ヒット”だけで、それって過去の分析からの最適化にすぎないんですよね。本当の大ヒットというのは、潜在的な需要があるのに世の中に事例がなく、誰もが無理だと思っていることをやることで生まれる。みんな“ヒット”をつくろうとするんですよね。
――木谷さんのような立場の方が、マーケティングを否定するのは面白いなと思いました。普通だったら、現場からあがってきたものを上の人が数字をもとに「これはヒットするの?」と聞くイメージがあります。
木谷:そんなことをやっていたら、奇麗に角のとれた“ヒット”しか生まれません。「とんでもない版権をとってきました」と言われたら話は別ですけどね。ほとんどの会社が、人気のある版権を一生懸命とりにいったり、昔からの版権で利益を得たりしていて、なかなか新しいものがでてこない。そんななか、アニメの放送本数はクールごとに40本以上あるわけですよ。酷い話だと思いませんか。
エンタメ会社の社長だったら――役員もそうですが、ひとつぐらい現場をもつべきだと思います。内容はなんでもよくて、作品でもラジオの収録現場でもいいのですが、そういう場をもっておかないと、(感覚が)ずれるんですよ。なのに、「役員になったら現場をもっちゃいかん」という指導をしている会社が多いんですよね。ひとつもっているだけで、全然違うと思いますよ。
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