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特集・コラム 2018年4月25日(水)19:00

【明田川進の「音物語」】第3回 アニメの効果音の変遷と、「AKIRA」のバイク音収録の思い出

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今回は、アニメの効果音の変遷についてお話ししましょう。「鉄腕アトム」のテレビシリーズをやっている頃は、アニメにどんな音をつけたらいいのかという見本がありませんでした。それまで僕たちが見ていたのは、ディズニーの「バンビ」のような時間をかけて音がつくられたものか、ハンナ・バーバラ・プロダクション(※「チキチキマシン猛レース」などを制作)の作品のようなギャグっぽい音を擬音で表現したもので、最初の頃は後者のような音がアニメーションの効果音に向いているのではないかと考えていたところがあると思います。

アニメにはどんな音がふさわしいのか考えながらつくっているうちに、アニメならではの効果音をつくっていこうとの流れもでてきて、ある時期までは、両極端な音のつけかたが並行してあった気がします。また、「映像にある音だけをつける」のが主流で、次のシーンにまで効果音をまたがせないものも多かったです。そんななか、実際に画面には映っていなくても、次のカットでもその音が持続して鳴っているだろうとの考え方がでてきて、音を積み重ねてつくる方法が多く使用されるようになりました。リアルな効果音を求める監督が多くなり、効果部の人もそうしたつくり方を主にしていくようになっていきました。

僕が音響監督を担当した「幻魔大戦」(※1983年公開)の効果音も、わりとリアルな指向でつくっていました。特定のカットだけでなく、その前後でも持続して音が鳴っているだろうと考えて、いろいろな音を積みかさねてつくる手法がよかったと言ってもらえたのを覚えています。その後、監督もリアルな効果音を求める人が多くなっていき、効果部さんもアニメーション専門の人だけでなく、実写映画をやっていた人が多く入ってきました。当時、僕が感じたのは、実写映画の効果部さんは、生音(なまおと)を使って、すごくいい音をつけてくれるなということでした。例えば、歩く音や、摺(す)れ音なんかを頼むと、非常にいい音になる。それまで歩きの音は、足音をひとつひとつつくって貼りつけることが多かったのですが、リアルな足音を絵にあわせてつけたほうが良いのではと考える人も増えてきました。今では、深夜に放送されているアニメの多くが、そうした考え方で効果音がつけられていますよね。「宇宙戦艦ヤマト」のような子ども向けだけではないアニメも増えてきて、その頃からアニメの効果音はだいぶ変わってきたと思います。

アニメの効果音が面白いのは、実写ほどリアルに引っ張られず、音で世界観自体をつくれることです。「幻魔大戦」でいえば、世界観を象徴するような音をバックにずっと流す、というようなことができる。そうしたつくり方ができるようになると、効果部さんも面白くなってきますよね。「鉄腕アトム」のときにはミキサーをやっていた柏原(満)さんという方がいて、彼は大野(松雄)さんが電子音でつくったアトムの歩き方とかアニメの効果音に魅力を感じてミキサーから効果の仕事に移り、今も「サザエさん」の効果音などを手がけられています。

アメリカで監督をしている友人から、「日本のテレビアニメの音楽や音響効果は、非常に素晴らしい。アメリカでも取り入れてみたい」と言われたことがあります。「ジャングル大帝」や「リボンの騎士」の音楽がアメリカでも認められた頃の話です。それまでは、日本から外国にもっていかれたものは編集し直されて、音楽や効果音もつけ直されるものが多かったのですが、日本ならではの音のつくり方が徐々に認められてきたんですね。押井(守)さんの作品の効果音なども、海外で参考にされているという話をよく聞きます。

先日、「東京アニメアワードフェスティバル2018」(「TAAF2018」)の長編部門の審査員をしたときには、一緒に審査していた海外の監督の方から「AKIRA」の音について質問をしたい友人がアメリカにいるから時間をとってもらえないかと言われたこともありました。そのときはダミーヘッドマイクのことを聞かれて、どういう状況で録音したのかと質問をうけたのですが、あのときはビクターが開発したダミーヘッドマイクを使い、その周りを「らっせーらー、らっせーらー」と歌いながらぐるぐると回ってもらったものを録音すると、ああいう音ができたんです。

前回に続いて「AKIRA」の話になりますが、あの作品は街を疾走するオートバイのシーンからはじまりますよね。あのオートバイの音をつくるとき、普通の音では面白くないからと、陸王(りくおう)というハーレーの日本版みたいなすごい重低音がするバイクを借りました。千駄ヶ谷にあるビクターのスタジオの裏側に駐車場があって、そこは反対側がお墓なので、夜中に音をだしてもそれほど迷惑にならないだろうと、その駐車場で陸王を走らせ、スタジオがあるビルの屋上からマイクをむけて音を録りました。陸王の音は、途中の高速道路を疾走するシーンにも使いました。今振り返ると、ずいぶん大変なことをやっていたなと思います(笑)。

明田川 進

明田川進の「音物語」

[筆者紹介]
明田川 進(アケタガワ ススム)
マジックカプセル代表取締役社長、日本音声製作者連盟理事。日本のアニメ黎明期から音の現場に携わり続け、音響監督を手がけた作品は「リボンの騎士」「AKIRA」「銀河英雄伝説」「カスミン」など多数。

作品情報

鉄腕アトム(1963)

鉄腕アトム(1963) Check-in0

21世紀の未来世界で、十万馬力等7つの威力を持つロボット少年アトムが大活躍する物語。日本初の国産テレビアニメシリーズとして記念すべき作品。

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