2016年6月8日(水)20:00
3つのクソゲーは作りたくなかった――「業物語」8bitゲーム制作秘話 「〈物語〉シリーズ」プロモーションチーム座談会(後編)
「業物語」刊行記念特別サイト
(C)西尾維新/講談社
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「〈物語〉シリーズ」プロモーションチームに、宣伝の舞台裏を聞くインタビュー後編。「業物語」刊行記念特別サイトは、スマートフォンのみでプレイできる8bit風ゲームとして公開されて大変な話題を呼んだ。なぜゲームだったのか、8bitのスタイルを選んだ理由は? 今だから話せる赤裸々なエピソードを交えながら語ってもらった。
――「『業物語』刊行記念特別サイト」は、なぜ8bit風のゲームになったのでしょうか。
小島:「業物語」の話がきたのはちょうど、「MADOGATARI展」のときだったと思います。「業物語」は(阿良々木)火憐ちゃんが主人公で、冒険して修行していく物語内容にゲーム的要素を感じたんです。アニメとゲームの親和性は高いですし、映像的にもキャッチーで、プロモーションとして8bitの力はすごくあるんじゃないかなと。本の内容をゲームでみせるという新しい試読のかたちを作れば、アニメファンの方に本の入り口に立ってもらうことができるかもしれない。そんな発想からのスタートでした。
篠田:ちょうど同時期に、たまたま僕の方でも「MADOGATARI展」のオリジナルマナー映像を8bitで作ろうとしていたんです。アニメの中でレトロ漫画風の絵が使われていたりしたので、レトロゲームはどうだろうというぐらいの理由でした。で、展示が始まる前に完成したマナー映像を皆さんに見ていただいたときに、博報堂さんの方でもちょうど8bitを使ったサイトのプレゼンをしようと思っているとうかがって、そのCMも8bitのスタイルで作ろうと。そこから「もしかしたらゲームまで作れちゃうかもしれませんね」と話が盛り上がったんです。
天野:そうして僕のところに、「3つのゲームを1カ月で作ってくれないか」という話がきたんです。その時点で、企画込みで制作期間は1カ月半ぐらいしかなくて、その期間で3つゲームを作ろうとすると、どうしてもクソゲーになってしまうなあと。横スクロールで単純にピョンピョン跳ぶものを作っても、たぶん面白くないですし……クソゲーは作りたくないなと。で、幾つかあった企画のなかで、試読体験の企画が面白かったので、「これを1つのゲームとして作るのであれば面白いものが作れる自信があります」とお話して引き受けました。
矢島:天野さん、お言葉が乱れています……!
一同:(笑)。
天野:失礼しました(笑)。「〈物語〉シリーズ」のファンの方には、きちんと西尾先生の世界観が詰まったものでなければ意味がないと思ったんです。また、どうせ作るのならばブラウザでこんなゲームができるんだというものでないと作りごたえがないので、普通は横にスクロールするだけのところを、縦にもスクロールできるようにして、その中にストーリーを入れていけば面白いのではと提案して、あとで後悔しました(笑)。
(C)西尾維新/講談社
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滝沢:大みそかにもスカイプで打ち合わせをするぐらいのタイトなスケジュールでしたね。期日どおりに公開できないかもしれないと思う瞬間がありました。
篠田:僕は「業物語」のサイトのCMを、8bitで作ることになりました。ドット素材はゲームと共有しているところがあって、その素材はRIKIさんというイラストレーターの方にお願いしています。8bitにすさまじいこだわりをもたれていて、30年ぶりにファミコンのカセットを出した方です。
天野:ゲームの方は、最初にマップの図形をエクセルで作ったんですが、RIKIさんお1人では作りきれないぐらい壮大なものになってしまいました。RIKIさんにご無理を言って分割したパーツを作っていただき、そのパーツをこちらで組んで実装していたんですが、このままだと絶対に間に合わないとなって……。そこで博報堂のスーパーアートディレクターの谷川瑛一さんに手伝っていただいて。
小島:谷川は、全てにおいて最強なうえにマルチという素晴らしいアートディレクターなんです。1週間ぐらいでパーツを描いてきてくれたと思います。
篠田:広告のアートディレクターの方がやったとは思えないような、オタク心のわかった8bitのパーツを作られてきて、すごい! と思いました。
天野:お願いしたパーツがきっとあがると信じながら作業をしていました。どんなデータがきても対応できるように、あらかじめ幅をもたせた実装のプログラムを組んでいて。かなり切迫した状態でした。
篠田:そんなに大変な状態だったのに、よくあんなに隠しコマンドを入れましたよね。
天野:プレイしていて、落下してゲームオーバーになるだけじゃ面白くない。落下したときに、何かイベントがあったらいいかなと思って「落下シェア」を入れたんです。普通にシェアボタンがあるよりは、はるかに押してみたくなるんじゃないかなと。他にも、コインボックスを入れたり、暗がりに入るとキャラクターが目だけになったりとか、ファミコン感を出す演出はブラウザでやると実装が面倒くさくて普通は抜いちゃうところなんですが頑張って入れました。
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