2016年9月9日(金)20:00
「目指したのは、イクタとヤトリの物語」マッドハウス・橋本健太郎氏インタビュー (2)
――原作の圧縮が、制作上のご苦労だった?
(C) 2016 宇野朴人/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/天鏡のアルデラミン製作委員会
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橋本:それだけではないですが、シナリオをまとめるのは大変でした。絵コンテ担当の方に伝わりづらいので、あえて脚本上は(オーバーしそうな部分も)残しておくようにしてもらいました。その上で、打ち合わせの時には「尺的に厳しいようなら削っていただいても大丈夫です。」と言うんですが。それでもやっぱり描いて下さる方の方が多いです。特に「アルデラミン」は「説明しなければ伝わらないことの多い」お話でしたので。戦略、戦術といった作戦のセリフを言わないと状況が伝わり難いことも多く。2つの軍勢が攻撃している絵面だけでは、視聴者に伝わり難いのではと思うこともありました。
――原作の説明部分をカットし過ぎてもいけないんですね。
橋本:そうですね、説明過多になりすぎると、今度はキャラクター性に関係する台詞が失われていくので。そこは監督が気をつけてくれていました。キャラのセリフに真実味がなくなってしまう。「そもそもこのキャラはこう思っているから、こう考えた」という流れがないとドラマとしては成立し難いですし、そのドラマ自体も、ちゃんと話数を掛けて描かないといけないですし、その積み上げ方に苦労しました。
■背中合わせ、別々の道
――オミットしないといけない部分がかなりあったと思いますが、その中で一番拾おうとした箇所はどこなのでしょうか。
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橋本:監督が決めた事ですが、イクタとヤトリのドラマだと思います。そこに集中することに決めていました。シャミーユもとても重要なキャラクターなのですが、アニメで描く範囲では大きく関わってこなかったので、彼女の思惑に関わる部分はある程度オミットしました。アニメーションとしてのこの作品はイクタとヤトリの物語に集中して、2人の心情になるべく寄り添うかたちにする。国を守り続けた生粋の軍人として生きることを宿命づけられてきた少女と、国に尽くした結果とし死んでしまった英雄の父親を持つ主人公という対比です。
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4話の最後でヤトリが兵を次々殺していき、その後、慣れない殺人で硬直してしまった彼女を、イクタの言葉が癒していくというシーンがありました。あの場面がまさに象徴していると思うのですが、この2人はいわゆる恋人ではなく、もっと硬い絆で結ばれている。しかし、先ほどお話したとおり、相反している2人でもある。だから背中合わせでしか本音を言えない。お互いを非常に理解しているが交わることがない。原作を読んでいる方が見た時に、がっかりされないよう、原作を読んでいない方も興味を持っていただけるような内容になっていれば良いなと思います。
――続く5話がイクタとヤトリの過去編ですが、これは原作の7巻内のエピソードですよね。
橋本:ヤトリが自分の本音を話すのは原作の6巻くらいなんですよ。それまではやや無機質なキャラクターのように描かれますが、アニメーション内ではもう少しヒロインとして描きたかったので。小説7巻の内容の一部を5話に持ってこようとなりました。5話は2人の出会いと共に狼との戦いが描かれますが、イクタがヤトリに「二人で一つのものになって挑むんだ」と言うじゃないですか。第4話ラストの2人の絆は、ああいう体験を経て生まれたのだと。この構成にすれば、視聴者にも分かりやすくなるし、なにより彼女のヒロイン性を高めることができるだろうということで入れることになりました。
――それでは最後に今後の見どころを教えていただけますか?
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橋本:後半は戦場が更に激化するので、もっとドラマに寄って行くと思います。戦場も描写しますが、戦争と言う特殊な環境では、個人の意思ではどうにもならない状況も多く、そんな状況でイクタ達がどのように前に進んで行くのか、という部分が見所になるかと思います。
戦争という環境では無いにせよ、不本意な中で何かを行うという事は大なり小なり誰でもあることだと思いますので、視聴して頂いた方や原作を読んでいただいた方にも、彼らの考えに少しでも勇気付けられたり、頑張れたりという物語になるといいなと思います。
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精霊が実体として存在し人間のパートナーとして共に生きる世界。「カトヴァーナ帝国」の少年イクタ・ソロークは、昼寝と徒食と女漁りに精を出し、日々を怠けながら過ごしていた。イクタは、軍部の名門イグセム...
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