2016年10月2日(日)20:00
「アルデラミン」ならではの“特殊”な脚本制作法とは? シリーズ構成 ヤスカワショウゴ インタビュー (2)
第三皇女シャミーユは第1話でイクタに命を救われる
(C)2016 宇野朴人/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/天鏡のアルデラミン製作委員会
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■カンナの話を任せられる脚本家
――実際に脚本を書き始めるにあたって、第1話はどのようなことを考えられましたか?
ヤスカワ:やはり、この脚本でお客さんを掴めるのかどうかは考えましたね。第1話は、イクタたちが能動的に動く話でもないので。議論は相当した覚えがあります。色々アイデアは出ましたが、最終的に、地味ながらも今回のかたちで収めるのが原作の良さを引き出せるのではと。特にシャミーユとの出会いは時系列で追うべきだろうと思いました。
1話の冒頭は脚本と映像で変わっているんですよ。脚本では、子供時代のイクタとヤトリから始まっているんです。「科学の世界へようこそ!」と子供のイクタが、ヤトリを虹とともに迎え入れるシーンですね。「イクタとヤトリの関係性はここから始まってるんだ」というところから本編に入ろうと考えました。監督は「君をさらいに来たんだ、ヤトリ」っていうのを後々チョイスされていますが、「この2人の話だ」ということを冒頭で示しているという意味では同じです。ただ、幼いキャラよりは本編で活躍した姿でああいうシーンにしたという意図はよく分かりますし、それで正解だと思います。
国境突破のため、イクタが一計を案じる
(C)2016 宇野朴人/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/天鏡のアルデラミン製作委員会
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――他に大変だった話数は?
ヤスカワ:大西(信介)さんが脚本を担当されている部分以外で言うと、2話ですかね。騎士団が形成されてからが本編開始だと思っていたので、なんとかそこまで2話で行きたいと。国境突破なんかは、原作ではさらにイクタの考えが詳細に語られているんです。今回は割ける尺の少ない中、できる限り原作の大事な点を入れていったつもりです。映像ならではの手法で説得力を持たせるのには苦労しました。
――今回はヤスカワさんの他に大西さんも脚本として参加されていますが、その意図というのは?
カンナ(右)はカトヴァーナ北域動乱で…
(C)2016 宇野朴人/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/天鏡のアルデラミン製作委員会
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ヤスカワ:仕事でご一緒した縁もあったのですが、昔、大西さんの担当したエピソードを見て、「この人はドラマが書ける方だ」と強烈に思わされたことがありました。ですから、今回はなんとか参加していただきたいと思ったんです。特にドラマ面で重要なカンナの話を書くには、大西さんしかいないだろうと。本当に期待以上のものになって、大西さんにお願いした自分を褒めてあげたいです(笑)
■どうしても入れたかったシーン
――記憶に新しい後半についても伺いたいと思います。原作3巻部分についてはページ数も多いですが、4話弱でやるのは大変だったのでは?
ヤスカワ:3巻は知略で進める面が大きいので、長々やっても仕方ないという話になりました。ズバッと見せて、すぐに次に行くことを心がけました。つまり、映像で見せるのが前提の脚本だったんです。それでも12話は脚本が長めになってしまって、ある程度コンテに委ねています。12話は実は、もう少し前の方で終わるバージョンも書いていたのですが、13話が詰め込みすぎなのではないかという話になり、そこから12話へ引っこ抜いた経緯があります。
第11話での戦術会議
(C)2016 宇野朴人/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/天鏡のアルデラミン製作委員会
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――11話以降は戦術面が複雑になっていきますよね。原作を読んで部隊の動き方が分からないといったご苦労はありましたか?
ヤスカワ:戦術的な面でどういう動きをしているんだろうというところはありました。最後の火線を緩めてあえて攻めこませるところなども、どういう配置になっているんだろうかと。原作は考えて作られているのですが、絵にすると分かりづらい部分もありましたので、そのあたりは若干キャラの動きを変えています。そういったアニメにするにあたっての工夫もありますね。
――ちなみに、もう少し尺があれば、これは入れたかったという要素はありましたか?
ヤスカワ:5話の過去回想編で、イクタとヤトリが演習をするシーンがあるんですよ。アニメの中では「演習ばかりしてた」という会話だけで終わってしまって、実際の演習のシーンは入れることができなかった。ここは、監督が入れたいと言っていて、僕も入れたかったんです。でも、「やっぱり無理です、監督」となりました(苦笑)。原作ファンの方なら分かっていただけると思うのですが、演習のシーンだけで1話できる密度の濃さなんです。でも、あそこは今からでも「OVAを作ってやりませんか?」というぐらいの気持ちです。
――どうしてそのシーンがヤスカワさんにとって魅力的なのでしょうか。
ヤスカワ:なぜヤトリとイクタが戦場についての知見をこれほど持っているのか。指揮官でありながら、司令官の行動が読めるのか。司令官でありながら指揮官の行動が読めるのか。そういった部分がよく説明されていて、腑に落ちるシーンなんです。あれができていたら、3話から4話にかけての演習でイクタが凄く賢い立ち回りをした理由もよく分かったと思います。
■最終回の見どころとは?
――最終話を迎え、ここまで視聴者の反応などを聞いていかがでしょうか。
ヤスカワ:特に後半は、難解なものを難解なまま……原作の味のまま出しているので「このセリフは分かってもらえているのかな」と映像を見て思うこともあるのですが、結構理解してもらえているという気がします。これまではネットで実況しながらや、倍速で見たりする方が最近多いことに合わせて、そういう方々でも面白く見てくれるように作るのが義務だと思っていたところがあったようにも思います。でも、この作品に関しては、視聴者の方々を信頼して、「ちゃんと作っているからちゃんと見て欲しい」と送り出すかたちでも大丈夫だったんだと思わされました。
「不眠の輝将」ジャン・アルキネクス
(C)2016 宇野朴人/KADOKAWA アスキー・メディアワークス刊/天鏡のアルデラミン製作委員会
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――なるほど。では、最終話の見どころを教えていただけますでしょうか。
ヤスカワ:北域動乱では、新キャラのジャンという、ある種写し鏡的な知略キャラが出てきますが、最終話前までは、互いの姿が見えないままでのやりあいでした。最終話では、ついにこの2人が顔を突き合わせます。そこで交わされる言葉が、見せ場だと思います。それから、やはりラストですかね。監督の要望のもとに書いたシーンで、このシリーズのまとめとして最適なものになっているシーンだと思っているので、そこも見ていただきたいと思います。
――では最後に、最終回までご覧いただいた方に一言いただけますか。
ヤスカワ:本当に、最終回まで見ていただいた方は「お目が高い!」と思います。この作品はイッキ見に向いていると思いますので、もしできるなら、何かの機会にまとめて見ていただけたら、また違ったものも見えてくると思います。この作品のホームページでいくつかポイントとなる部分について、解説が書かれているんです。あれを見ながらぜひもう1回見て下さい。ますます理解が深まっていくと思います。最終話まで放映された今がチャンスですよ(笑)
作品情報
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精霊が実体として存在し人間のパートナーとして共に生きる世界。「カトヴァーナ帝国」の少年イクタ・ソロークは、昼寝と徒食と女漁りに精を出し、日々を怠けながら過ごしていた。イクタは、軍部の名門イグセム...
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