2018年4月4日(水)20:30
「メガロボクス」主演・細谷佳正が明かす“偽物が本物になる物語”の舞台裏 (2)
(C) 高森朝雄・ちばてつや/講談社/メガロボクスプロジェクト
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――格闘技をテーマとした「メガロボクス」はアクションも注目の作品です。アクションシーンを演じるにあたって心がけたことはありますか。
細谷:今作ではリアリティが求められていると感じたので、大げさな叫び声を入れたりはせず、実際のボクサーの方がサンドバッグにパンチを放つときに出す「シッ」という息づかいを入れるようにしました。「メガロボクス」で描かれるアクションは、時としてスローになったり登場人物のモノローグが入ったりもしますが、実際にはコンマ数秒という一瞬の世界です。特別に脚色した派手なお芝居は人の注目を集めることができるかも知れませんが、僕だけが目立っても意味がない。監督や映像の意図をくみ、「メガロボクス」の世界観を表現することに専念しました。
――収録現場の雰囲気はいかがですか。
細谷:それぞれがお芝居に集中している空間です。吹き替えの現場でご一緒させていただくことが多いベテランの先輩方が、ゲストとしていらっしゃることもあるので、それもあるのかと思います。また、今作では、テスト終了から本番までの間に、綿密な打ち合わせが行わるため、収録時間が長めです。なので、待機時間には一度ロビーに出て、気分をリセットするようにしていました。スタジオの中にいると、本番で感覚の鮮度が落ちると思ったので。三好音響監督はハリウッド映画の吹き替えを数多く担当していらっしゃる方なので、劇場版に近い収録方式なんです。ひとつひとつの音にとてもこだわっているので、かけあいのシーンでも単独で抜き録りをすることが少なくありませんでした。
――“メガロボクス”のチャンピオンでジャンクドッグの宿命のライバルとなる勇利役の安元洋貴さんとは、「天才軍師」で一緒にラジオ出演もされています。お芝居について相談されたりすることはあるのでしょうか。
細谷:お芝居も、自分が用意してきた、とっておきの一発を打ち合う瞬間が楽しいんです。なので、お芝居について、事前に何かを話し合うことはないですね。ただ、安元さんとは「週刊少年○○」を待ち焦がれる子どものように「次回の展開が気になるね」「どうしてこういう展開になっているんだろう」と、物語について話すことはあります。
(C) 高森朝雄・ちばてつや/講談社/メガロボクスプロジェクト
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――序盤で印象に残っているシーンはありますか。
細谷:やはり、先ほども述べた、ジャンクドッグと勇利が、雨の中で初めて対峙するシーンでしょうか。「何が本物のメガロボクスだ。調子にのるんじゃねえぞ」という、一種の妬みのような……荒れた感じになってしまう、ヒリヒリした感じが現れていると思います。恵まれた環境で育ったメガロボクスの主催者である白都ゆき子、“キング・オブ・キングス”として常に100パーセントの力で戦うことができる勇利。なのに自分は、南部贋作の一声で八百長試合をしなければならない。そのイライラが爆発した場面です。その時のジャンクドッグは勇利の力を理解しておらず、ただ鬱憤を晴らしたいだけ。「メガロボクス」に、格闘競技を魅せるエンターテイメントの側面と、ジャンクドッグのメンタル面を描く側面との二面性があるのなら、後者がクローズアップされた瞬間ですね。
また、第1話の冒頭、ジャンクドッグがバイクを飛ばす中でのモノローグも、作品を象徴するシーンだと思います。個人的に思ったことなのですが、森山監督が伝えたいことはコレなんじゃないかなと思いました。「とどまるか、抗うか」「今、この状況を変える勇気はありますか?」という問いかけです。偽物だったジャンクドッグが、本物になっていく、はたから見ると無謀な挑戦の過程で幾度となく打ちのめされ、それでも必死に這い上がっていく姿が“矢吹丈”と重なって感じられます。
――最後に、これから作品を見るファンの方にメッセージをお願いします。
細谷:「あしたのジョー」ファンにお伝えしたいことは、「メガロボクス」は現代版「あしたのジョー」ではないということです。「あしたのジョー」を見て、その美学や哲学に影響を受けた森山監督がつくりあげた新しい物語です。でも、そこには「あしたのジョー」からもらった感動や衝撃……心の震えが確かに反映されています。「あしたのジョー」ファンの皆さんも、そうでない方々にも、先入観なく見ていただけると、とても嬉しいです。第1話を見ると第2話が、第2話を見ると第3話が見たくなると思います。個人的には、2018年を代表するような、クオリティの高い作品になると思っていますので、ぜひごらんください。
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