2018年10月2日(火)19:00
「薄墨桜」桂正和が明かす平安“和”デザインへのこだわりと“牙狼・陣”誕生秘話
(C) 2018「薄墨桜」雨宮慶太/東北新社
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10月6日に全国公開をひかえる劇場アニメ「薄墨桜 -GARO-」(以下「薄墨桜」)。雨宮慶太原作の特撮ヒーロー作品「牙狼〈GARO〉」シリーズのテレビアニメ版第2弾として、2016年に放送された「牙狼 -紅蓮ノ月-」(以下「紅蓮ノ月」)の劇場版にあたり、“牙狼”の称号を受け継ぐ“魔戒騎士”の青年・雷吼が、平安時代の都“京”を跋扈(ばっこ)する怪物“火羅(ホラー)”と、再びし烈な戦いを繰り広げる物語だ。漫画「電影少女」「I's」、アニメ「TIGER & BUNNY」でも知られる漫画家で、「紅蓮ノ月」から引き続きメインキャラクターデザインを担当した桂正和氏に、「薄墨桜」のデザインにまつわる舞台裏と、同作の魅力について聞いた。
――桂さんは、テレビシリーズ「紅蓮ノ月」から引き続き、メインキャラクターデザインとしての参加です。「紅蓮ノ月」には、どのような経緯で関わることになったのでしょうか。
桂:専門学校の先輩にあたる雨宮慶太さんの「牙狼」シリーズは、1作目からずっと好きだったんです。「ゼイラム」も「未来忍者 慶雲機忍外伝」もマニアックな作品でしたから、こんなに王道の、誰が見てもおもしろい物語を撮れる人なんだという驚きもあって。雨宮さんとは常々一緒に仕事をしたいと思っていたものの、実写畑の人でなかなか機会に恵まれなかったので、「紅蓮ノ月」に携われることになったときは、うれしかったですね。オファーがあったとき、雨宮さんも同席していたのですが「やっていい?」と直接聞いたら、「もちろん!!」と快諾してくださいました。
――続編にあたる「薄墨桜」は、いつ頃オファーがあったのでしょうか。
桂:テレビシリーズの収録が終盤にさしかかった頃にはもう、「劇場版をやりたい」という話はうかがっていたのですが、その時はまだ何も決まっておらず、実際に話が動き出したのは2年くらい前です。キャラクターデザインもその前後でやったので、実は結構昔の仕事なんですよ。
桂正和氏が描いた「時丸」デザイン
(C) 2018「薄墨桜」雨宮慶太/東北新社
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――桂さんは今回、キーキャラクターの明羅(あきら)と時丸をデザインされています。制作サイドからのオーダーはどのようなものだったのでしょうか。
桂:ひとりは“敵の魔戒法師(陰陽師)”、もうひとりは“盗賊”であるといった大まかな指定でした。オリジナルアニメの場合は、最初にキャラクターデザインがないと企画が動かないことが多いんです。企画書に掲載するために、キャラクターデザインが必要になる。そこから物語や世界観が形づくられていくので、かなり早い段階で声がかかります。「薄墨桜」の場合は、「紅蓮ノ月」からの継続ということで、すでに世界観は確立されていましたが、まだ脚本が固まっていませんでした。
――2人のデザインコンセプトについても聞かせてください。
桂:敵キャラクターですから、主人公である雷吼たちと反対のイメージにしようと考えました。特に明羅については魔戒法師ということで、星明とは真逆にしています。黒っぽい衣装で男勝りな星明とは反対で、白っぽい衣装の妖艶な女性。星明の衣装がちょっと変わったデザインなので、明羅の衣装はストレートに“平安”を感じさせるものにしています。せっかくの劇場版なので、アンシンメトリーな柄にも挑戦させていただきました。作画スタッフのみなさんには、ご苦労をかけたかもしれません。
桂正和氏が描いた「星明」デザイン
(C) 2018「薄墨桜」雨宮慶太/東北新社
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――明羅と星明は、髪の分け方も対照的ですよね。
桂:平安時代という背景を考えると、あまりハデな髪型にはできないので、そういったところで変化をつけていかないと、キャラが立たないんです。ゆるふわパーマにもできませんし(笑)。たてがみのように見える雷吼の髪型も、セットしてああなっているわけではなく、縛っているものがほどけた“ほつれ毛”なんです。星明の髪飾りも、神社にある紙垂(しで)です。金時は“金太郎”のイメージが必要だったので、おかっぱがベース。前髪はカッコよく尖らせていますが、後ろ側は刈り上げです。時代背景にそぐわないものはできるだけ避け、なおかつ現代っぽさも取り入れていく。そういうところには、こだわっていきたいんです。
――平安時代について、詳しく調べたりもされたのですか。
桂:「紅蓮ノ月」のときに。平安時代の現存する資料は貴族のものがほとんどで、雷吼たちのような平民の服装や文化について書いてあるものが少なくて、非常に難儀しましたね。ネットで調べるのはもちろん、専門的な本を持っている方を訪ねても同じで、想像力を働かせるしかない部分があって。貴族である星明については、資料も潤沢にあったのですが、それだけでなくアニメらしいケレン味がほしいと考えて、装飾品を付けていきました。
桂正和氏が描いた「明羅」デザイン
(C) 2018「薄墨桜」雨宮慶太/東北新社
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――明羅も星明同様、装飾がアクセントになっていますね。
桂:星明の上半身に銀色の飾りがついているので、それとの対比で金色の飾りを下半身に、ということです。一方、魔戒法師らしさという意味では、飾りのデザインで、あえて星明との共通点をもたせています。星明の逆ということで黒髪にせず、同じ白系にしたのも、その表れです。平安時代は髪型のバリエーションが少ないというのは先ほどお話したとおりですが、黒髪ストレートにすると、番犬所の稲荷や「紅蓮ノ月」の赫夜(かぐや)とかぶってしまうという理由もありました。
一方、時丸については、さまざまなビジュアルを試行錯誤しました。髪型は天然パーマの画稿もあるのですが、目指したところは“歌舞伎”で、たてがみを振り乱す連獅子(白獅子)をイメージしています。こちらは、同じく歌舞伎の化粧をイメージしてデザインした雷吼との対比ですね。
作品情報
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貴方に出逢わなければー平安の世、栄華を誇る美しき都「京」。守りし者たち、雷吼、星明、金時は人知れず火羅と呼ばれる異形の者から人々を守る使命を遂行していた。或る日、彼らの前に現れる美しい女・明羅。...
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