2018年10月5日(金)20:00
「ゴブリンスレイヤー」で尾崎隆晴監督が描くバイオレンスの先にあるもの 狩られるゴブリンにも注目
(C)蝸牛くも・SBクリエイティブ/ゴブリンスレイヤー製作委員会
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10月6日から放送を開始するテレビアニメ「ゴブリンスレイヤー」は、中世西洋風の王道ファンタジー世界を舞台に、過去の悲劇から、最弱として侮られるも狡猾な魔物“ゴブリン”を狩ることだけに執念を燃やし、その生命をかける男“ゴブリンスレイヤー”の生きざまを描く物語だ。尾崎隆晴監督に、強烈な存在感を放つ同作の魅力や、制作の舞台裏を聞いた。
――まずは、尾崎監督が「ゴブリンスレイヤー」に参加することになった経緯を教えていただけますか。
尾崎:「少女終末旅行」で一緒にお仕事させていただいた、アニメーション制作担当のWHITE FOXさんから、お声がけいただきました。
――原作のご感想はいかがでしたか。
尾崎:ファンのみなさんと同じだと思います。“ファンタジー”と聞いて連想されるイメージを裏切る、ハードな内容に衝撃を受けました。とにかくインパクトが強くて「すごいことやってるなあ……」と。最初、お話をいただいた時はファンタジーと聞いて、夢のある物語を想像していたので、「自分にはミスマッチなんじゃないのかな?」と思っていたのですが、原作を読んでみるとバイオレンス色が強い作品で、読み進めていくごとに各キャラクターの内面が明らかになっていって、“本当の格好よさ”が見えてくる。今までのファンタジーものとはひと味違う、おもしろいことができそうだと、がぜんやる気が湧きました。実際、制作に取り組んでいくほど、原作の物語に対する印象も変化していきました。そうした作品に対しての認識が変わっていく過程も、映像に落とし込めたらいいなと考えてプランニングしています。
僕自身は「ゴブリンスレイヤー」を、あまり“ファンタジー”としてとらえておらず、むしろ“ハードボイルドアクション”で、「バットマン」のようなダークヒーローをファンタジー世界で表現したような作品だと思っているんです。原作者の蝸牛くも先生も、熱烈なアメコミファンなので、お好きでしょうしね。
――原作者の蝸牛くもさんとは、どのようなやり取りをされたのでしょうか。
尾崎:「ゴブリンスレイヤー」は、さまざまな見方ができるおもしろい作品だと思うのですが、くもさん自身は「TRPG(テーブルトーク・ロールプレイング・ゲーム)が大好きなので、その世界を表現した作品を作りたかっただけなんです」とはにかんでいました。僕はファンタジーやTRPGには詳しくないのですが、シナリオ会議では、いつもくもさんがTRPG的な解釈やギミック、おもしろさを教えてくださるので、とても助けられました。
――原作者の方も、毎回のシナリオ会議に同席されているのですね。
尾崎:はい。原作者という立場ではありますが、もはやアニメスタッフ、チームの一員ですね。こちらから1つ質問すると、20、30の答えが返ってくるような、すさまじい熱意をもって取り組んでくださっています。たとえば、ゴブスレ(主人公のゴブリンスレイヤー)が使う7つ道具的な装備とか――7つどころではない数がありますが――をはじめとした小物を描く際にも、ゲーム、アニメ、映画などさまざまな分野から、参考となる資料や作品を紹介してくださるんです。スマホ片手に熱弁する、くもさんの姿が印象的でした。脚本の倉田(英之)さんもオタク気質の方なので、話がとても盛り上がっていましたね。おかげさまで、TRPGファンの方にも納得していただける作品に仕上がったと思います。
(C)蝸牛くも・SBクリエイティブ/ゴブリンスレイヤー製作委員会
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――監督のお言葉をお借りすると“ファンタジー”でありながらも“ハードボイルドアクション”であるという本作ですが、演出面でのポイントはありますか。
尾崎:“痛み”を感じられるように心がけています。殴られれば痛いし、状況によっては人も死ぬ。見たくないものも、時には見せていく。「ゴブリンスレイヤー」では、あまり隠しごとをしたくないんです。とはいえ、それ自体をメインとして押し出していく、というわけではありません。ダークな雰囲気をかもし出しながら、最終的にはキャラクターの心情や、仲間たちとの冒険の“その先にあるもの”を表現したいと思っています。現実世界でも、嫌なもの、醜いものは多いと思うのですが、そのなかにあってこそ、ひときわ貴重な美しいものを、対比として見せたいんです。闇が深いほど、小さな光も強烈に輝いて見える。この“闇の中の小さな光”は、くもさんも強く意識されていたようでした。
――アニメならではの表現も盛り込まれているのでしょうか。
尾崎:「ゴブリンスレイヤー」に限らない一般論なのですが、漫画や小説だと、それぞれの読み手が読み進める速度で“間”がつくれます。アニメの場合はそうではなく、こちらが設定したスピードで進行していくので、極力ストレスが溜まらないように努力しています。そのために、音楽やSEによってトータルバランスをとっていく。たとえば、小説や漫画だと、読んでいる方が心の中で効果音を付けていると思いますが、アニメではそれを具体的な音として表現します。文字や絵だけのものを、映像作品として表現するというのは、さまざまな制約を受けるということでもあるのですが、そこがおもしろいところでもありますね。
また、今作の心理描写では、生の音ではないイメージ音を要所要所で使っていきたいと考えています。モノローグに入った時は、セリフが少なくなりがちなので、キャラクターの心境が視聴者に伝わりにくくなってしまいます。そこで、たとえば不安なシーンでは心臓の鼓動のような音や、低く響く音などをさりげなく入れて補うようにしています。
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