2019年11月27日(水)19:00
「耐え子の日常」そろそろ谷川監督 「一般人が主役」「全編ミュージカル調」、そして「監督の心の支え」の秘密
(C) ABCテレビ・DLE
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24歳のOL・辛抱耐え子。会社の同僚や後輩にとことん気をつかい、どんな不幸な目にあっても「平気平気!」とひたすら耐えてニッコリ笑う。そんな“耐える”エピソードを、タイトルコールからエンディングまで全編ミュージカル調で描くショートアニメ「耐え子の日常」。
耐え子を演じる一般女性の「田中さん」が棒読みギリギリの絶妙なトーンで歌う「うぉうぉ~、○○に耐える~」が耳から離れなくなる、秋アニメのダークホースと言いたくなるぐらいクセになる面白さのある作品だ。原作者でもある、DLE所属のそろそろ谷川監督にアニメ化の経緯と、なぜミュージカル調にしたのかを聞いた。(取材・構成:五所光太郎/アニメハック編集部)
――アニメ化の発表がかなり直前(https://anime.eiga.com/news/109499/ )でしたよね。
谷川:ギリギリでしたよね。オンエアの2、3週前だったと思います。
――正直なところを言いますと、オンエア前は仕事柄1話だけ見ておこうかぐらいの気持ちでしたが、あのミュージカル調のクセになる感じに感銘をうけまして、今は毎週楽しみに拝見しています。
谷川:ありがとうございます。
――「耐え子の日常」は、谷川監督ご自身が描いている漫画がウェブで連載されていて単行本も2冊でています。アニメ化の経緯から聞かせてください。
谷川:「耐え子の日常」は、約4年前にTwitterではじめました(アカウント@OLtaekoが、2015年10月28日登録)。当時はADとして働いていて、いつかは自分のオリジナル作品のアニメ監督をやりたいと思っていたんです。「耐え子」は最初、アニメの企画として会社にだしたのですが、そのときは没になって。でも「面白いのになあ」と諦めきれず、自分で漫画で描いてTwitterにあげはじめたんです。なので、最初からアニメにしたいと思っていたんですよ。その後、おかげさまでインスタやTwitterで人気になり、フォロワー数も増えて、コミックも出すことができて念願のアニメ化となりました。
――アニメ化にあたって全編ミュージカル調にしているのが、すごくいいなと思いました。最初のタイトルコールから流れるように本編に入り、最後の歌までの正味4分の流れがほんとに素晴らしくて、どうやってこの仕掛けを思いついたのかを、今日はいちばんお聞きしたかったです。
谷川:最初は普通に歌なしでつくっていたんです。ネタを見せてオチがあって、またタイトルがでてネタをやってみたいなのを一回つくってみたら、なんだか物足りないなと。これだと見ていて少し退屈かなと感じて、だったら「もう歌っちゃったらいいんじゃないかな」と思いついたんです。
漫画を見ていただくと分かりますが、漫画のタイトルにネタの説明を書いていることが多いんです。アニメでは、そこも言っちゃったほうが一瞬でネタが分かるし、テンポよくいくためにも、そのほうがいいかなと思いまして。でも、あまりに説明的だと、聞いていて「うわ、説明くさいな」「ボケの説明してるな」とちょっと寒い気もして、それなら歌に乗せると意外と寒くないんじゃないか……そんなふうに考えて1話まるまる1曲の歌にしちゃおうと。なので、結果そうなったという感じなのですけれど。
アニメ第2話で使用されたエピソードの漫画版
「耐え子の日常&そろそろ谷川の漫画」(http://sorosoro-tani.blog.jp/)より
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――ミュージカル調の流れは、芸人さんの「リズムネタ」のような中毒性もあると思います。
谷川:そうかもしれませんね。視聴者の方のTwitterでのコメントを見ると、「エンタの神様」っぽいみたいなコメントを多くいただいていますので。
――ひとつのエピソードの終わりぎわで、耐え子が「うぉうぉ~、○○に耐える~」と歌って次に繋がるじゃないですか。あの自動的に次を見ざるをえないつくりが画期的だと思いました。
谷川:ありがとうございます(笑)。確かに止めさせないといいますか、どんどん次を見せるようなつくりになっているかなと思います。アンガールズさんがネタの間に入れられている「はい! ジャンガジャンガ、ジャンガジャンガ~」ってメチャクチャ中毒性があって、あんなふうになればいいなと思いながら、「うぉうぉ~」を入れたところはあるかもしれません。
――ミュージカル調のつくりは、耐え子役の「田中さん」の声質あっての魅力だと思います。田中さんは「ただのド素人」だそうですが、なぜ一般の女性の方をキャスティングされたのでしょうか。
谷川:だいぶ前に、Twitterでアニメを少しだけやったことがあるんですよ(※17年6月26日、「試しにアニメ作ってみました~/耐え子アニメ『少年と犬』」)。いつかアニメ化したいと思っていたので、自分でつくって公開して、リアクションがよかったら「どうっすか、アニメ化」とプレゼンしようと。そのとき、声優さんにお願いできる感じでもなかったので、近場にいる一般の女性のなかから「誰か、耐え子にハマる人はいないかな」と何人かにやってもらったんですよ。そのなかで、演技はいちばん下手だったんですけど、「田中さん」の素朴な感じがなんだか「耐え子っぽいな」と思いまして。
――人のよさがにじみでる優しい声色だと思いました。
谷川:もうそのときから彼女の声がいちばんいいなと思っていたので、テレビでのアニメ化となっても変える必要はなく、そのままでいこうとなりました。その代わり周りの役は、愛美さんをはじめとする、ちゃんとしたプロの声優にお願いしました。
――当初ミュージカル調は想定されていなかったとのことですが、歌うことになって田中さんのハードルはすごくあがったのではないですか。
谷川:まさか歌うことになるとは思ってなかったでしょうから、最初に「ちょっと歌にしてみたから」と話したときは、「歌うんですか?」と相当とまどっていました(笑)。
――ミュージカル調の曲と歌詞は、どなたがつくられたんでしょう。
谷川:僕が鼻歌みたいな感じでつくって、収録のときに田中さんに伝授しました(笑)。アニメのBGMは、鼻歌をもとにして音楽制作のすどうゆうきにつくってもらっています。
――決められたメロディのなかで、どう言葉をおさめて歌うかが大事だと思うのですが、そのあたりはどうやって決めていったのでしょうか。
谷川:田中さんの声を収録するときは、ふたりで録音ブースにこもって歌ってもらい、何回もやり直しながら録っていきました。素人なのに歌もあるし、セリフ量もアニメの中ではいちばん多いですから、ほんとに大変だったと思います。
――リズムネタでもよくありますが、2話からもうメロディに絶対収まらない分量のセリフを歌うエピソードがあったのも面白かったです。
谷川:もう詰め込みですね(笑)。「ケツだけあわせておけばOK」みたいな感じで、歌詞のなかに入れこんでいます。
――ネタの選別は、どのようにされているのでしょうか。単行本を読むと、アニメでは重すぎないポップなエピソードを選ばれているように感じました。
谷川:漫画のなかからは、アニメでやっても面白そうなものを選んでいる感じです。あとはアニメ用に新しく脚本を考えていて、新作と旧作が半々ぐらいですかね。第2話の耐え子が蛇にのまれちゃうエピソードとか、アニメ用にちょっと改変しているものもあります。アニメだとわりと音で分かるものもありますから。
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