2020年9月2日(水)19:00
GRANRODEOに聞く、ニューシングル「情熱は覚えている」に込めた思いと、結成15周年目の新たな挑戦
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2020年に結成15周年を迎えるロックユニット「GRANRODEO」。ボーカルのKISHOWが作詞、ギターのe-ZUKAが作曲を手がけるスタイルは変わらぬまま、しかしそのサウンドはアニメソングの枠組みを超え、なお進化しつづけている。
最新シングルアニメ「バキ」大擂台賽編OPテーマ「情熱は覚えている」(9月9日発売)のメイキングをはじめ、初のトリビュートアルバム「GRANRODEO Tribute Album "RODEO FREAK"」、11月4日リリースの15周年記念ベスト盤「GRANRODEO Singles Collection “RODEO BEAT SHAKE”」、さらに7月31日に行われ、彼らにとって初の全世界同時生配信ライブとなった「GRANRODEO 15th ANNIVERSARY Startup Live ~たかが15年~」についてなど、この先の15年への可能性を感じさせる、さまざまな挑戦について聞いた。(取材・文/武井風太)
――ニューシングル「情熱は覚えている」の作曲コンセプトをお聞かせください。
e-ZUKA:「大擂台賽編」の前シリーズにあたる「最凶死刑囚編」のOPテーマだった「BEASTFUL」も、GRANRODEOの曲だったこともあり、今回は制作サイドからまた違った感じにしてくださいとお話がありました。たとえば「あしたのジョー」のようなものはどうだろうと。
――「あしたのジョー」だと、バラードやブルースのイメージがありますね。
e-ZUKA:ええ。そこで、「あしたのジョー」的なシリアスさをもとにして、土着的なリズムを取り入れていったんです。でも、スタッフからはもう少しロック要素やバカっぽい遊びがあるような、“らしい感じ”がいいんじゃないですかと。それをふまえたうえで、あらためてつくっていきました。
――かなりの変遷があったのですね。
e-ZUKA:最初は(ボーカル)メロディ側を変えてみようとしたんですよ。動きのあるメロにしようと試行錯誤していたら、ふとエスニックなフレーズを思いついたんですね。じゃあ、ギターも同じにしたらどうかなと。そうこうしているうちに、いまのエスニックな雰囲気のオケ(オーケストラ)になっていきました。「大擂台賽編」の作品内容を見ても戦いの場は中国ですし、なんとなく辻褄があいました。
――オケの編成で工夫されたことはありますか。
e-ZUKA:インド楽器を使っていることです。シタール、タンブーラ、タブラあたりですね。
――あまりなじみがないのですが、どのようなものでしょうか。
e-ZUKA:シタールとタンブーラは弦楽器ですね。シタールはインドではメジャーなもので、音の余韻や広がりが特徴的です。タンブーラは、「ビヨーン」とおもしろい鳴り方をする楽器で。それらをエスニックな感じで取り入れました。タブラは座って指でたたくんですよ。低い音も高い音も出るのですが、そのリズムも使っています。インド楽器に加えて、ドラムもドンドコドンドコと、土着的なリズムでたたくようにしています。
――インド楽器を使うことで、よりエスニック感を増しているのですね。
e-ZUKA:それと、土着的にすることで、ムエタイ的なリングで戦う感じも出したかった。昨今のショウアップされた格闘技だと、入場シーンですごく長い花道を歩いて出てくるじゃないですか。そのときのバックグラウンドミュージックのイメージもあります。
「情熱は覚えている」初回限定盤ジャケット
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――歌詞についてもお聞きしたいです。どういった点に気をつけられましたか。
KISHOW:「BEASTFUL」は「最凶死刑囚編」にあったセリフ「敗北を知りたい」をリスペクトして、「I want to know the defeat」と曲頭に使ったんですよね。でも、今回は敗北を知ったあと、いかに立ち向かっていけるか。そこがおおまかなテーマでした。
――そのテーマをもとに歌詞を紡いでいったのですね。それにしてもトリッキーな言葉が並びますね。
KISHOW:「BEASTFUL」は、曲調がシリアス寄りだったのですが、今回はある種崩してきたなと感じたんです。ですから、おのずと歌詞もそれにつられています。イントロの入りもおもしろいですから、言葉もトリッキーにしていこうと。でも、サビで飽きちゃって……。
――ええっ?(笑)
KISHOW:もう「絶頂シャウト」でいいかと(笑)。だからここで急にノリがおバカになるんですよ。自分で言うのもなんだけど、おもしろい構成にできたかなと思いますね。
――「帯ニハ短シ襷ニハ長シ」をあえてカタカナにするところに、KISHOWさんらしさを感じたのですが。
KISHOW:(笑)。ありがとうございます。遊びたくなっちゃうんですよ。あそこはメロディラインそのものも不思議な抑揚がついて変じゃないですか。それもあって、カタカナにしたかったんです。視覚的にもおもしろくしようと思って。
――タイトルの「情熱は覚えている」はどういう意味あいだったのでしょう。
KISHOW:敗北をしたとしても、かつて情熱を燃やして勝利を勝ち取ったときの、そのたぎる思いや熱量……つまり、情熱そのものは覚えているだろ? という意味なんです。君の心はくじけかけているかもしれない。でも、君の情熱そのものは、あのときの熱量を覚えているはずだと。
――なるほど。主体が敗北を経験した人自身ではなくて……。
KISHOW:そう。「僕は」情熱を覚えているではなくて、「情熱そのものが」覚えている。情熱が主語になっているんです。
――では「BEASTFUL」で敗北を知った誰かのその後を歌っているのですね。
KISHOW:そういう解釈もできると思います。「大擂台賽編」も、「最凶死刑囚編」を経たうえでの物語です。主人公の刃牙が「最凶死刑囚編」で毒にやられてしまい、その状態のまま大擂台賽という格闘トーナメントに臨む。であれば、はいあがっていくノリだろうと。
――大胆な歌詞からは「バキ」という作品の破天荒なイメージも感じられますね。
KISHOW:強い言葉を使ったつもりです。頭のフレーズ「血も涙もない人生なんて 我が目指す道に上等」も、「バキ」っぽくていいかなって。血も涙もないキャラがけっこういますからね(笑)。作中キャラクターの鎬昂昇が使う「紐切り(視神経などを引きちぎる技)」なんて怖すぎますよ。
――「バキ」シリーズのどんなところに魅力を感じられますか。
KISHOW:あの作品は本当に「強い」ですから、そこが魅力だと思います。
――少しロックに通ずるところもあるのではないですか。
KISHOW:たしかにそうかもしれないですね。「バキ」って、日本よりも海外での反応が大きい印象があります。YouTubeでノンクレジットオープニングがあげられたのですが、それを耳コピしてくれたようで、さっそくアップしている人がいて。それがブラジルの方だったんですよ。ワールドワイドですよね。驚きました。
――ちなみに今回の楽曲について、2人でディスカッションなどはされたのでしょうか。
KISHOW:いや、いつも阿吽(あうん)の呼吸ですよ。完全分業性なんです。そこは美しい言い方だと“信頼”ですよね。六分(ろくぶ)の付き合いと関係。それくらいが長く続くのかなと。……でも、一度だけお金を借りたことがあるんですよね。
e-ZUKA:えっ、全然覚えてない……(笑)。
KISHOW:ふだん自分はいつもニコニコ現金払いなんですよ。たまたまお金がない瞬間があって。カードはそもそももたない主義だったので、コンビニでもおろせない。「次会ったときに返すから1万円貸して!」って。13年ほど前の話です。
――(笑)。カップリングである「Scorn」についてもお聞きします。非常に力強い楽曲ですが、こちらはどういうコンセプトで制作されたのでしょうか。
e-ZUKA:LAメタル(編注:1980年代、アメリカのロサンゼルスを中心としたヘビーメタルムーブメントの総称。長髪、レザー、メイクなどそのファッションにも特徴がある)を録りたいなと思ったんです。
世のなか少し暗めの情勢ですから、メッセージ性がある曲もいいなと思うんですけど、それは僕ら“らしく”ないかもなと。だったら、いっそのことLAメタルですべてをぶっ飛ばすというバカバカしさが求められているのではと思ったんです……っていうのはただのこじつけで、本当は俺がLAメタルをやりたかかっただけなんですけど(笑)。ボーカルもずっとシャウトしているような感じで。
――シャウトしつづける感じが新鮮で格好よかったです。
e-ZUKA:こんな感じの曲を大真面目にやる人が、現代にいるのかなって。あとはカップリングとして、「バキ」のテイストともあうと思ったんですよ。カップリングをつくるときは、曲の傾向が真逆であることが多いんです。「俺たちこんなのもできるんだ」と、めちゃくちゃかわいい曲やバラードを入れることもあるのが、いつものGRANRODEOなんですね。でも、今回は骨太の王道的な曲をやってもいいかなと。もちろんテンポは違うのですが、同じバンド感がするといいますか。
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